人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.49 | システム紹介
金型構想設計を表現する3Dコラボレーションツール
製品設計と生産現場を近づけるDarwin Vue
システムソリューション統括部 システム開発グループ
グループマネージャ 広崎 貴

はじめに

3DビューワDarwin Vueは、キヤノン株式会社 映像事務機事業部様の協力により、「型設計コラボレーション」向け機能を拡充してきました。基本機能は、2007年5月にリリースしたVer.1.7に搭載し、2008年4月中旬出荷予定のVer.1.8では、更に機能を拡充しています。本稿では、生産技術者と金型メーカ間の型打合せを3D化した事例と追加された機能をご紹介します。

部品立上げ時の問題点

製品設計業務に携わる部品設計技術者と、量産部品立上げの現場である金型メーカの型設計技術者との間には長い距離が存在します。(図1)

  • 設計者が想定したモノを生産技術者と製造担当企業が頑張って実現する、という一方通行の分担では効率化の限界があります。
  • マーケットからくる製品への機能・性能要望と、製造時のコストを両立させなければなりません。しかも時間の制約は、より厳しくなっています。
  • 製品設計時に、生産技術現場の要望を取り入れることは、それほどできていないのが実情です。

※ 日経ものづくり2006年12月号「設計者の知らない生産技術」(日経BP社発行)参考。

説明図
製品設計
製品機能優先での設計。
生産設備、加工方法など
には詳しくない。
生産技術/金型設計・製造
生産要件を織り込んでほしい。
変更できる箇所、できない箇所
がわかるようにしてほしい。
図1

これらの問題点を改善し、全体効果を向上する施策の1つとして、Darwin Vue 3Dコラボレーションツールを活用して「技術者コミュニケーションの向上」を図ることができます。Darwin Vueは、金型構想を相互に伝達するための実戦的な機能を搭載しています。「設計者と生産現場の距離を近くする」ことが目的です。一般に設計・製造の国内回帰という題目と並行して、特別なノウハウの入ってない部品生産の現場の中心はますます中国、アジアに移行しているのが現実であり、インド、東欧、アフリカも活況を呈しています。グローバルな生産体制を効率よく運用することは避けられないテーマといえます。

型打合せの効率化

Darwin Vueコラボレーションツールによる型打合せ3D化は、「設計・製造技術者間のコミュニケーション向上」の重要な一例です。(図2、3)

説明図
図2 部品立上げ時の典型的な情報の流れ
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
説明図
図3 Darwin Vueの利用例
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

設計CADにおけるモデリング機能の向上、操作性の改善や、金型モデリングの形状変形機能、3D型設計機能やテンプレート、マクロによる半自動設計、流用設計などは「設計技術者がCADを使っている時間」を短縮する効果が期待できますが、それ以外の工程の効率化はまた別の問題です。部品の仕様起こしから量産開始までの全体工数を見ると、3DCAD使用範囲での工数削減は限定的になります。型打合せを中心に、コラボレーションツールの導入によって、部品設計から生産現場までを3D打合せデータで結べば、より大きな効果が得られ、ツールへの投資はCAD/CAMと比較すると相対的に少なくなります。(図4)

説明図
図5 管理するデータ
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

また、コラボレーションツールを導入し運用するということは、ある面で見れば管理しなければならないデータが増えることになります。(図5)

説明図
図6 データの一括管理
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

このデメリットを補うために、Darwin Vueではファイル添付を行い、ビューワデータに埋め込んで一括管理できるようにしました。(図6)

これにより、1つの部品に関する最新資料群をビューワデータファイルとして、1つにまとめて取り扱うことができます。運用対象が国内外の協力メーカを含むため、LAN等で接続された強い管理システム下での厳密な運用は前提にしていません。電子メールでExcel資料などを送付するのと同レベルの手軽さも重要な性質の1つです。

おわりに

金型調達の初期段階で型構造の構想を練り、金型メーカ・成形メーカ・製品メーカそれぞれの技術者が、試作モデルの部品形状データしか存在しない初期段階から金型要件を洗い出します。正式出図時には、型構想が大部分でき上がっている、という状態を実現するのが目的です。設計変更についてどれだけスピーディーに対応できるかは、3Dコラボレーションツールとしての操作性が直接的な効果に結びついています。

これらの要件を満たすために、MOLD部品金型、プレス部品金型のそれぞれに対して、型打合せ時に必要な情報をすばやく書き込み、また修正できる機能を追加しました。

キヤノン株式会社 映像事務機事業部様とお取引先金型メーカ様にて、DarwinVueによる金型コラボレーションを新部品の立上げ時に適用いただき、型打合せ時間削減や打合せ項目の対応漏れ防止などの成果を出されています。

このように、3D形状をベースとした「製品設計と生産技術とのやりとり」を記録したデータは、生産技術を製品設計に活かすという目標に近づく第一歩です。

Ver.1.8では、型締め力、剪断力を算出する機能や、型打合せ向け単語帳機能(よく使用する用語を4ヶ国語表記し、コメントへの入力に利用する機能)などを追加しています。

フリービューワ

Darwin Vueで作り込んだ3D型構想図としてのビューワデータを、Darwin Vue製品版未導入の端末においても閲覧できる軽量版・無料ビューワの配布を開始しました。NDESホームページのDarwin Vue製品紹介ページから最新版を入手できます。

このビューワの利用により、「3D化された金型仕様書・型打合せ議事録」が手軽に閲覧できるようになります。Darwin Vueで近くなった生産現場と製品メーカが、フリービューワの配布でより一段近くなると考えています。もちろん、後工程への3Dデータの浸透も重要な役割です。

関連するソリューション

関連するソリューションの記事