人とシステム

季刊誌
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No.75 | 社長インタビュー
社内ベンチャーから上場企業へ、
お客様の業務を最適化するシステム基盤を提供
株式会社 NTTデータ イントラマート・株式会社 NTTデータ ビズインテグラル 代表取締役社長 中山 義人 様 株式会社 NTTデータ イントラマート
株式会社 NTTデータ ビズインテグラル
代表取締役社長 中山 義人 様

株式会社 NTTデータ イントラマート(以下、イントラマート社)は、1998年に株式会社 NTTデータ(以下、NTTデータ)の社内ベンチャーより創業し、2007年には東証マザーズに上場を果たした会社です。

その成功を基に、イントラマート社で培ったビジネスモデルを、国産ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージを開発する、株式会社 NTTデータ ビズインテグラル(以下、ビズインテグラル社)に展開し、現在、順調に売り上げを伸ばしておられます。

今回は、両社の創業者で社長を兼務する中山義人社長に両社の創業の経緯や、新しいビジネスモデルを生み出す秘訣等について、お話をお伺いしました。

ビジネスモデルを変換し、創業1年で黒字に

NDES 代表取締役社長 木下 篤
NDES
代表取締役社長
木下 篤

木下 中山社長はNTTデータの社内ベンチャーとしてイントラマート社を立ち上げられました。今でこそ社内ベンチャーは増えていますが、当時としては、珍しいことでしたし、ご苦労も多かったと思います。まずは創業までの経緯について、お聞かせください。

中山 私が1992年に入社した当時のNTTデータは、システムインテグレーターとして、お客様の要望をお聞きし、一つひとつ注文住宅を建てるようなビジネスモデルが中心の会社でした。一方で、世の中に少しずつですが建売住宅のようなパッケージビジネスが出始めた頃であり、NTTデータも新規ビジネスとしてSCAWというERPパッケージビジネスを立ち上げた初年度で、入社後すぐに、その部署に配属されたのです。6年ほどその部署に在籍しましたが、パッケージの作り方や営業の仕方など、その他いろいろと携わることができ大変勉強になりました。ただ、5年、6年と経験を重ねると、何か違和感を感じ始めました。

木下 それは、どのような違和感だったのでしょうか。

中山 今だから言えますが、残念ながらSCAWは黒字化できないビジネスモデルだったようです。当時は分かりませんでしたが、後になって、勝間和代氏の「利益の方程式」という著書を読んで、黒字化できない理由に気が付いたのです。その著書には、当たり前のことなのですが、【 利益=(「1社当たりの販売価格」-「1社当たりの原価」-「1社当たりの販売コスト」)× 社数 】とありました。その方程式に照らし合わせると、利益が出ない構造だったのです。

木下 SCAWビジネスは、勝間氏が指摘する利益の方程式に当てはまっていなかったのですね。それをどのように変えていったのでしょうか。

中山 結果的に、ビジネスモデルを変えることにしました。オープンソースのプログラムを使い原価を下げたり、販売方法をパートナーモデルの間接販売に切り換えたりし、そのビジネスに関わるビジネスモデルを変えたことで、利益を生み出せるようにしたのです。それにより、intra-martは初年度から黒字を達成できました。ただ、全ては後々に気づいたことで、当事者として組織の中にいるときは意外とそれに気が付かないものなのです。

木下 さまざまなことを、後々になって気が付いたとのことですが、そもそもどうしてベンチャーで会社を立ち上げようと思ったのでしょうか。

中山 SCAWビジネスを続けている中で、せっかく覚えたパッケージビジネスで、今までと違う何かをやりたいという気持ちが次第に強くなり、実は自ら会社を立ち上げようと資金を貯めており、会社をつくる準備をしていました。それが、たまたま同じ時期にNTTデータで社内ベンチャーを募集しますという案内が出たので、申し込んだところ、審査に通過してしまったのです。ただ、それからが大変でした。元々パッケージビジネスをすることは決めていたのですが、今まで黒字化できなかったパッケージビジネスを黒字化するには、どうすればいいのかということを、それから約2カ月間、これまでの人生にないくらい考えに考え抜いたのです。

熟考の末、全体最適の基盤を構築

全社システムの最適化
全社システムの最適化
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木下 その結果、たどり着いた答えは何だったのでしょうか。

中山 まず考えたのはターゲット市場です。成長市場を狙うのは当然ですが、後戻りのない成長市場で、10年、20年と一貫して成長が見込める市場にしようと決めました。1998年当時はインターネット技術が出始めの頃で、一般企業もインターネット技術を使おうという流れはありましたが、まだ、クライアントサーバー型のシステムが主流の時代で、ウェブブラウザで業務システムを扱う会社はほとんど存在しませんでした。それで、ウェブブラウザベースのアプリケーション市場をターゲットにしようと決めたのです。次に考えたのは製品づくりのターゲットです。SCAWで携わっていた国産ERPパッケージの市場は、「グローバル会計」、「グローバルスタンダード」のトレンドが加速し、大手外資系ERPの台頭により、ERPパッケージビジネスは、難しいと判断しました。一方で、その当時SCAWを導入するため、お客様を訪問しているときによく耳にした悩みが、ERPの基幹系システムの周辺に存在する情報系システムのことだったのです。

木下 それは、どのような悩みだったのでしょうか。

中山 基幹系システムは標準化しているのに、情報系システムで使用しているシステムが、あるものはLotus Notesを使ったり、別のものではMicrosoft社製のソフトを使っていたり、技術アーキテクチャが統一されていませんでした。また、情報系システムごとにサーバーが乱立しており、維持管理コストが大きくなっているのも悩みで、しかも、基幹系システムであるERPと比べると、お客様固有の業務が多く、パッケージ化しづらい領域なのです。それで、この領域のパッケージ化ができるいい方法がないかと考えた結果、そこで思いついたのがプレハブ工法のモジュール化です。ちょうどその頃、技術的にもJavaという言語が出始めた頃で、パッケージをJavaでモジュール化しておいて、お客様に合わせてプレハブ的にモジュールを組み合わせていくと、安く開発することができ、お客様固有のシステムにも対応することができると考えたのです。それを、全体最適な基盤を用意して、その上で多くのモジュールを組み合わせることが、できるようにしようと考えたのです。

競争の軸をずらし、差別化を図る

Biz∫の目指す姿
Biz∫の目指す姿
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木下 とはいえ、ライバルとなる企業もあり、差別化が必要だったのではないでしょうか。

中山 確かに、投資できる資金にも限りがあるので、できることにも限りがあります。そこで、自分たちがやらなければならないことを絞る必要がありました。それで、競合となりそうな、システム基盤を開発している外資系企業を調査しました。そうすると、そのような外資系企業は、同じターゲット領域ではあるのですが、システム基盤を頑丈にし、「像が踏んでも大丈夫ですよ」と、いうようなアプローチの仕方で、アプリケーションに注力していなかったのです。逆に自分たちは、システム基盤よりもアプリケーションに注力することにし、システム基盤の部分はコストのかからないオープンソースのプログラムを使うことにしました。他社に比べると信頼性は落ちますが、ERPのような基幹系システムの領域ではないため、信頼性はいずれ高まると判断し、信頼性は犠牲にしようと決めました。その分、モジュールやアプリケーションに集中的に投資し、他社と競争の軸をずらし、差別化の領域を明確にしました。

しかし、それでもまだ、絞り足りなかったので、最初は人気のありそうなものだけを、開発することにしました。それがワークフローの領域だったのです。当時はライバルの外資系企業も、ワークフローには手を出していない領域でしたし、困っているお客様も多い分野だったので、ワークフローを前面に出したパッケージでバージョン1を開発したのです。

木下 確か当社はその当時のユーザーですよね。

中山 そうです。そのときからお付き合いが始まりました。NDESも含めた大手企業の数社に、そのバージョン1を採用してもらいました。そのとき学んだのは、不完全なものではあっても、将来の全体像を提示でき、タイミングさえ合えば採用してくださるお客様はいるということです。そこからはすごい勢いで、初年度だけで200社ぐらい受注ができました。当時FAXで注文書を受け付けていましたので、段ボール一杯になるほど盛況でした。パッケージビジネスは、スモールでもいいので市場に認められ、通用することが証明できれば、爆発的に売れるという面白さがあるのです。

まずは70点の製品開発でスピードを重視

木下 それ以外に、ビジネスモデルとして心がけていたことはありますか。

中山 ビジネスモデルに組み込んだのは、発売前に顧客を確保するなど赤字にならない仕組みです。例えばあるモジュールで、開発費2,000万円、1ライセンス500万円で販売するとします。単純計算ですが4社に販売できれば元は取れるわけです。発売前に4社のお客様を確保できていれば、販売を始める段階で採算が合うのです。

それともうひとつ重視したのは、法人向けのビジネスというのは、他社の参入等により、いずれ市場は飽和するということです。その前に次の山を作ることが必要で、どういうタイミングでどんな山を作るかが持続的な成長には重要となります。

木下 なるほど、その山はどういう視点で作るのでしょうか。

中山 個人向けより法人向けのほうが読みやすいと思います。個人向けは故スティーブ・ジョブズ氏のように天才的に市場を読む力が必要だったりしますが、法人向けは新聞や雑誌を読んでいれば流れは意外と読めるのです。最近だと「内部統制」とか、「IFRS」だとか、そうしたキーワードがあったのですが、それらをターゲットとした製品を開発していくということです。

木下 法人向けは読みやすい分、競争も厳しくなりますよね。

中山 だからこそ、タイミングが重要になると思います。社内には最初に出すバージョンの製品は、70点でいいから早く出せと言っています。その代り、その時点で購入してくださった3、4社のお客様の要望を徹底的に聞いて、70点の製品を他社よりも早く100点に持っていくのです。そうすれば、他社よりも早く良い製品を市場に出すことができる、その繰り返しですね。

木下 製品の販売のやり方もSCAWのときとは違う販売方法を取っていると思いますが、どうでしょうか。

中山 そうですね、パートナービジネスモデルで販売をしています。創業時は私も含めて3人で始め、その内の2人は技術で営業は私しかいませんでしたので、選択したというより、パートナービジネスモデルでやるしかなかったのです。

木下 パートナーの確保はどのようにされたのですか。

中山 募集はNTTデータの事業部の時代でしたから、そこはNTTデータの名前が有利でした。「NTTデータが、インターネットの新しい世界に向けてパートナーを募集します。」という文字だけの広告を出したのですが、凄い反応があったのです。何度も説明会をしましたが、毎回立ち見がでるほどに盛況となりました。

特に、オフコンモデルからの変革が必要だった地方のディーラー企業に多く賛同をいただきました。

基幹系システムもモジュール化で対応

木下 もう1社のビズインテグラル社の創業についても、お聞かせください。

中山 SCAWは、その後も販売を継続していましたが、このSCAWの後継に位置付けた、ERPパッケージを開発・販売するビズインテグラル社を設立することになったのです。この会社は、intra-mart上の基盤を中核とし、柔軟性を持ったこれまでにないERPパッケージの提供を目的としました。

木下 イントラマート社の創業時のようにビズインテグラル社のビジネスモデルも徹底して考えられたのでしょうか。

中山 そうですね。SCAWの時代から私もERPには携わっていましたし、初期のSCAWの開発メンバーもいましたから、一緒に徹底して考えました。外資系ERPの二番煎じでは意味がないので、既存のERPとは対照的なものにしました。そして、イントラマート社のときと同じく、基幹系システムの領域にもモジュール化構造を持ち込むことにしたのです。外資系ERPは1枚岩のイメージで、ビックバン方式により、システムに業務を合わせていくという考え方を取っていましたが、我々は全く逆の発想で、全てをモジュールにし、必要なモジュールだけを使用していただくことができるようにしたのです。しかも、必要なモジュールだけを購入できれば、安くシステムを導入することができます。とはいえ、当初3年間は赤字続きで苦しかったのですが、2012年に黒字化することができ、その後モジュールが増えていったこともあり、2013年も黒字幅を拡大することができました。

木下 Biz∫はSCAWの後継のERPパッケージですが、他社のERPパッケージがたくさんある中でのポジショニングや他社との差別化について、もう少し詳しく教えてください。

中山 Biz∫はSCAWの後継ですから、狙いはミドルマーケットです。また、SCAWは、当時のERPパッケージの中でも「グループ会計」の評価が高かったので、そこはBiz∫に継承していこうと決めました。それに、時代の流れもよく、ちょうどクラウドが注目されてきた時期でもありました。例えば、本社は大手外資系のERPを導入していても、子会社はバラバラの会計で困っているということがあるわけです。それで、本社は大手外資系のERPをそのまま使用して、子会社はBiz∫をプライベートクラウドにして導入し、各社がシェアして使うことができると、グループ会計の特長が生きてくるのです。それでありながら、子会社ごとのちょっとした仕様の違いにもカスタマイズで対応することが可能になる柔軟性も持ち合わせています。そこがBiz∫が差別化できる部分と考えています。

メリハリをつけたカスタマイズ方針

株式会社 NTTデータ ビズインテグラル パートナーサポート副本部長 寺内 茂喜 様
株式会社 NTTデータ
ビズインテグラル 
パートナーサポート
副本部長
寺内 茂喜 様

木下 パッケージソフトでもカスタマイズを求めるお客様も少なくないと思いますが、どれぐらいカスタマイズの要望がありますか。

寺内 導入していただくモジュールにもよりますが、会計の場合でしたら8割ぐらいのお客様は、パッケージをそのままでお使いいただいています。特にBiz∫バージョン1.3を出してからは、様々なモジュールを用意したので、大半のお客様がパッケージに業務を合わせるという形が多いですね。バージョンアップ時にコストや手間をかけたくないという声も多いです。

中山 会計のやり方に、よほどこだわりがあったり、特殊な要件があれば別ですが、カスタマイズはあまりやっていませんね。また、カスタマイズが必要な場合でも、Biz∫はカスタマイズしやすい機構になっており、各モジュールにはホットポイントという差し込み口が多数用意されています。そのホットポイントに独自で作成したモジュールを差し込むことにより、ブロックのように機能を追加できるようになっています。そこがまた、評価されている部分だと思います。

木下 お客様も柔軟になってきているのですね。

寺内 例えば、あるお客様は、業務の要望は聞くのですが、まずは3カ月間パッケージをそのまま使ってくださいと、指示するそうです。その後、そこで再度要望が出ても、また、もう3カ月間そのまま使ってくださいと、お願いをするそうです。それでも上がってきた要望については、カスタマイズ内容とするという方針で対応をされたそうです。そうすると、当初数百件上がっていたカスタマイズの要望が、半年後には1~2件しか残らなかったそうです。

中山 要はカスタマイズしなくていいところは、徹底してカスタマイズしない。逆に会社の競争力につながるようなところは、徹底してカスタマイズする。そういうメリハリをつけた方針が大事ですね。

クラウド化とセルフサービス化

クラウド化のイメージ
クラウド化のイメージ
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木下 既にintra-martは約3,300社、Biz∫は約350社の導入実績がありますが、今後のビジネス戦略は、どのようにお考えですか。

中山 クラウド化がひとつのカギだと思っています。「intra-mart Accel Platform2.0」に載せると、intra-martもBiz∫もクラウド上で提供できるようになります。これを早いうちに実現できるようにしたいと考えています。そのときのキーワードは、お客様が、自らできることは、お客様でやっていただくという「セルフサービス化」だと思っています。最近、販売されているパブリッククラウドの製品を見ていると、お客様自身で画面を使って設定をするということが増えており、セルフサービス化は流れだと思います。主要な部分のカスタマイズはシステムインテグレーションベンダー(以下、SIベンダー)に頼むけれど、使用頻度が高くないような業務は自分たちで解決をするようになっていくと思います。

木下 確かにお客様自身ができることを、我々SIベンダーがやりますというのは、本来のビジネスではないと思いますね。お客様ができないことをサービスとして提供する必要があると思います。

魅力あるプラットフォームを作るために

中山 そういう意味で、SIベンダーの役割は変わってくるのでしょうね。中規模のSIベンダーが自分たちの得意技を鍛えてソリューションの提供サイドに立つことになるでしょうから、そうなるとサービスを提供する基盤のプラットフォームは、何がいいかという選択が発生するわけです。そこで、我々のプラットフォームを選択してもらえるように、常に魅力的なものにしておく必要があるわけです。

木下 確かに、その辺の戦略が肝になるのでしょうね。

中山 そうですね。そのひとつとしてintra-martでは「Accelコンソーシアム」というものを作り、現在、35社のパートナーが参加して「intra-mart Accel Platform」上の規約を作成しながら、製品を増やす活動をしています。

木下 私たちは、今秋に「Project-Space」という、intra-martとBiz∫をプラットフォームにした、製造業向けのERPを発売しますが、製造業では、このようなビジネス系のシステムだけでなくPDM(Product Data Management)という、3次元のデータ等を管理する設計、製造系のシステムも必要となります。御社のラインナップはどちらかというと、ビジネス系のシステムが中心なので、当社のノウハウと御社のノウハウを上手く絡めて、強みを生かすことができれば、もっと可能性が広がると思いますね。

中山 NDESは製造業系に強い会社なのでお互いに協業できればいいですね。intra-martやBiz∫をプラットフォームにしたアプリケーションが増えるのはいいことですし、1+1が3にも4にもなるように、お互いが有機的に連携していければいいです。今後はどれだけお客様の問題解決に協力できるか、お客様の立場に立った提案ができるかということが必要ですから、今まで以上に協業をしていきたいですね。

木下 同じNTTデータグループとして、お客様の課題を解決していくために、今後も、より一層、協業を強化していければと思います。本日は長い時間、どうもありがとうございました。

会社プロフィール

NTTデータ イントラマート
NTTデータ イントラマート

株式会社 NTTデータ イントラマート

URL http://www.intra-mart.jp/(外部サイトへ移動します)

本社 〒107-0052
東京都港区赤坂四丁目15番1号
赤坂ガーデンシティ 5階
設立 平成12年2月22日
資本金 7億3,875万円
NTTデータ ビズインテグラル
NTTデータ ビズインテグラル

株式会社 NTTデータ ビズインテグラル

URL http://www.biz-integral.com/(外部サイトへ移動します)

本社 〒106-0032
東京都港区六本木三丁目5番27号
六本木山田ビル 2階
設立 平成21年5月27
資本金 4億5,000万円

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