STLの活用例
営業本部 地域営業統括部 東日本営業部 部長 北田 幸雄 |
はじめに
現在の日本の製造業の現状は、メーカーの海外進出が加速し続け、事業所、従業員の減少を招いており、日本国内の事業所においてもグローバル競争に巻き込まれ、高品質、短納期、低価格を迫られています。また、高年齢世代へ移行し経験を積んだ従業員が退職となり、ノウハウが企業に残らない状況となっています。このような状況を打破するため、各企業はシステム化が急務となり、私たちもこれまでの商品単体でのご提案から、お客様のニーズに併せた業務の効率化・改革が行える商品群でのご提案を行っています。
近年、低価格化が進み、導入しやすくなった測定機に対するニーズが高まり、測定機の販売台数が急激に伸びてきています。しかし、単に測定機を導入しただけでは、本当に期待していた効果は得られません。
そこで、今回は、第25回設計製造ソリューション展で展示したトータルソリューションのご提案として、測定から得られる点群データ(STL)の活用例をピックアップしてご紹介いたします。
プレス金型におけるスプリングバック見込み変形
プレス成形時に発生するスプリングバックに対応するため、スプリングバック解析を導入されている企業が多い反面、高い効果が得られない現状があると思います。その理由としては、解析結果を上手く製品モデルに反映できないことが上げられます。それは、解析結果を元に一面ごとにモデル修正を行うため、終日作業となる場合が多いからです(図1)。
そこで、ご提案する解決策は、試作回数を減らし、製品の品質向上を短時間で行えるソリューションです。これを実現するソリューションとしては、測定機とSpace-Eのレ・フィット機能の組み合わせをご提案します。まず、レ・フィット機能※使えば、解析システムから出力される解析結果(STL)をSpace-Eに取込み、CADデータとSTLを重ね合わせ、CADデータとSTLの誤差を反対側に自動変形できます。この機能により、これまで終日かかっていた作業は、約30分で終わります。さらに、精度を高めるため、試作した製品形状を測定してSTL出力を行い、レ・フィット機能で再度見込み変形を行うと、より正確なモデルを作成でき、試作回数を大幅に削減できます。そして、測定データを解析と比較することで、解析精度の向上にもつながります(図2、3)。
※レ・フィット機能は、Space-EオプションのGlobal Deformation PLUSの機能です。 |
リバースエンジニアリング
過去の保守部品や、手修正が入った金型の更新型の製作時などCADデータが無い製品を再度製作する場合、非常に多くの時間が取られます。特に過去部品の鋳造品の場合、石膏で反転型を作り、砂型を作成し鋳造する工程を踏むことになります。ここで問題なのが、支給された製品のキズや凹みが反転型にそのまま反映されてしまうこと、また石膏型自体にもバラツキが生じるため品質が安定しないことです(図4)。
そこで、ご提案する解決策は、これまで人の手に頼っていた工程を全てデジタル化し、時間短縮と品質向上ができるソリューションです。これを実現するソリューションとしては、測定機とCATIA V5の組み合わせをご提案します。
測定機で製品形状を計測し、STLをCATIA V5に取り込みます。CATIA V5には、自動面張り機能でSTLに自動でサーフェイスを作成する方法と、測定結果の状態を見ながらマニュアルでサーフェイスを作成する方法の2つがあります。キズや凹みがある部分はマニュアルで作成し、製品をそのまま反映してよい部分は自動作成するという使い分けができます。このように、CADデータ化することで、法規変更によりフィレットRを大きくする箇所なども簡単に設計変更ができます(図5)。
さらに、新しく肉抜きを行うなど製品自体の性能を向上できます。また、全工程をデジタル化することにより、これまで熟練者しかできなかったプロセスが、誰でも簡単に行えるプロセスとして構築できます。
おわりに
今回は、測定を中心としたご提案でしたが、これに留まらず、お客様が置かれている環境や課題を私たちも一緒に考え、価値あるソリューションを展開してご提案しますのでご期待ください。
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