CATIA V5を使用した設計業務におけるカスタマイズ事例
PLM事業本部 開発統括部 PLMソリューション開発部 第一開発グループ グループマネージャ 田中 信治 |
はじめに
設計業務内でのQCD(納期の短縮、品質の向上、コストの削減)の取り組みのひとつとして、CATIA V5のカスタマイズを実施しました。
今回は、どのお客様にも必須と思われる「試作回数の削減」、「情報入力の一元化」をテーマにしたカスタマイズ事例をご紹介します。
■試作回数の削減

一般的な業務フロー(図1)では、詳細設計の後に、実際に形状を作成して、さまざまな観点から妥当性を検証します。そこで問題点を発見し、再度、設計を行います。そして、試作、検証を行うフローを繰り返して、量産に向けてのテストを行います。品質の確保が必須ですが、その上で、試作の回数を減らすことは、納期、コストの面で非常に有効です。
■情報入力の一元化
構想設計/詳細設計では、さまざまな情報を決定し、その情報を後工程に伝達する必要があります。それらの情報が正確に伝わることが、品質、納期、コストの面で重要です。
※ 以降の図中にある赤色(矢印)部分がカスタマイズを実施した部分です。
試作回数の削減

試作を行う目的はさまざまですが、その中でも特に重要なことは、干渉チェック、応力解析、組立性チェックなどです。また、場合により、流動性解析、熱変形解析などがあり、一般的なCADでは対応することが困難な内容です。
CATIA V5では、これらの機能はオプションパッケージに含まれています。機能も必要ですが、より重要なことは、結果を正確にフィードバックし、ノウハウとして蓄積して活用できる形式にすることです。(図2)
例えば、CATIA V5の干渉チェックでは、結果をXML形式で保存したり(図3)、断面形状をVRML形式で保存することができます。(図4)
この結果を蓄積すればいいのですが、検証箇所が大量になると、結果の判定も含めて整理するには時間がかかり、大変な作業です。そこで、カスタマイズを行うことで、より効率よく整理し、正確に判定する仕組みを構築しました。(図5)これにより、試作回数の削減につながり、工数の短縮が実施できました。
![]() (上図をクリックすると拡大図が表示されます) |
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情報の一元入力化

今まで設計業務では、図面や仕様書などに情報を付加し、後工程に伝達してきました。その例として、下記のような情報があります。(図6)
- 材質
- 表面仕上げ
- 加工方法
- 購入品/内製品
- 環境対策情報(RoHS指令/REACH規制/グリーン調達など)
CATIA V5の標準機能として備えている「プロパティ」を活用し、下記のカスタマイズを実施しました。
- 選択方式など、入力の簡易化と入力項目の一元化
パネルによるプロパティの簡易入力(図7①) - 転記ミスの撲滅と効率化
図面化の際に、プロパティを表題欄に自動出力(図7②)また、登録した属性を活用するために、CATIA V5の機能である部品表の出力(EXCEL形式)を利用し(図7③)、PDMとの連携(EOVIA SmarTeam)も実施しました。

そして、図面化の後工程として、CATIA V5を使用していない部署/協力会社への情報伝達のために、図面の一括変換(TIFF形式、DXF形式、PDF形式)をCATIA V5のマクロによるカスタマイズとして実施しました。(図8)

マクロの操作としては、マクロを起動して、図面ファイルのフォルダ指定と、変換後ファイルのフォルダ指定をするだけです。(図9)

変換対象は、図面フォルダ内にある全ての図面ファイルが自動で選択されます。また、必要な図面のみ選択することも可能です。(図10)
このように、上流工程で入力した情報を下流工程で活用できるようにすれば、効率が向上し、また、入力ミスを回避することができ、結果的にコスト削減に貢献できます。
おわりに
今回は、設計業務でCATIA V5をより活用するためのカスタマイズ事例をご紹介しました。
カスタマイズの適用には、業務フローの把握、課題の抽出、解決方法の策定、そして、効果の想定と実施後の効果の測定が重要になります。また、カスタマイズを一度行っても、製品の進化に伴い、業務フローの修正があると、それにより新しい課題が発生します。そこで、定期的にカスタマイズの効果を測定し、修正していくことが重要になります。
次回も、引き続きCATIAによるカスタマイズ事例をご紹介します。
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