「型設計効率50%UPを実現させるために」
システムソリューション統括部 PLM技術グループ 橋口 淳一 / 伊藤 順 |
はじめに
このコーナーでは、型設計の効率UPを図るための手法を4回にわたり、ご紹介しています。最終回となる第4回目は、システムによる効果算出を中心に、
1)テンプレートモデリングの効果算出
2)テンプレートモデリングの拡張
3)業務分析やシステム構築の手法例
4)システム構築の発展
という流れでご紹介します。
テンプレートモデリングの効果算出
テンプレートモデリングによる金型設計の効率化の効果を算出するには、現在行っている金型設計手法と、テンプレートを用いた金型設計手法を、比較・分析することが重要となります。まずは、現状のモデリング・設計時間を把握します。そして、テンプレートの構築時間を見積もり、テンプレートを使用した場合の設計時間と、現状の設計時間を比較することで、テンプレート化による効果を算出できます。テンプレートを流用して設計する回数が多ければ多いほど、テンプレートを用いて設計をしたときの効果は大きくなります。テンプレートモデルは一度作成すると、それ以降、効果を出し続けることが大きな魅力です。(図1)
また、システム化(設計のノウハウやルールをテンプレートに盛り込むこと)をした場合は、ただ単に時間短縮だけを考慮して効果を算出するのではありません。
システム化には、品質の向上やミス削減など、データでは表しにくい効果を実現する項目が多々あります。例えば、ミスが起こると大きな損失がでてしまいます。ミスを削減するためのシステム化を行うことにより、損失を少なくし、効率をあげることができます。このようなことを加味して効果算出をすることも重要です。
テンプレートモデリングの拡張
テンプレートとなるモデルは、作成するには多くの時間がかかりますが、メンテナンス性を考慮して構築しておくことで、その効果を最大限に発揮することができます。ただし、CATIA®のナレッジ機能は、ノウハウを後からでも簡単に追加できます。プログラムでいうならば、それをサブプログラムのように追加する機能を持っているので、容易にできます。そのため設計者は、絶えず新しいアイデアを設計に盛り込んでいくことができます。
また、類似のテンプレートモデルを作成する場合でも、元のモデルをコピーして流用することにより、テンプレートを短期間で構築することができます。そして、テンプレート構築のノウハウも蓄積されることでその効果がより大きくなります。(図2)
業務分析やシステム構築の手法例
業務分析をするために、IDEF法などの機能モデリング手法を用いる方法があります。IDEF法とは、複雑な対象を簡明かつ正確に分析・理解・合意できるように、米国空軍で開発された構造化分析/設計技法です。
コンピュータソフトウェアの設計・構築・運用のほか、ビジネスプロセスを図示して企業活動の分析にも利用されています。2004年のJCF(Japan CATIA Forum2004)では、このIDEF法を用いた、設計における機能分析法が紹介されました。
IDEF法の表現形式は下記に示すように、動詞で表された「業務」をボックス化し、その業務間を繋ぐ「役割」を矢印で表します。業務を機能モデリング化することで設計業務の現状把握やプロセス改善の検討に役立てることができます。(図3)
システム構築の発展
設計効率を上げていくには、ただ単にシステムを導入するだけでは、効果がでません。それをステップ式により理想の形へと実現していくのもシステム構築の1つの方法です。
これまで説明してきたように3次元設計で大きな効果が得られるのは、テンプレート設計です。それを軸として取り組む場合、その発展性まで考慮することで、効果を発揮することができます。
その例として、「操作の簡略化」、「テンプレート手法の適用範囲の拡大」、「複雑なテンプレート設計の確立」への取り組みがあげられます。
その他に、システムの拡張によっても設計効率のさらなる向上が期待できます。その例として「マクロによる自動化」や「解析の取り組み」、「機構シミュレーション」などがあげられます。(図5)
このような長期的な展望を見据えておくことで、設計やモデリングだけに留まらない、さらなる設計効率の向上を実現する仕組みを構築していくことが可能となります。
これまでに述べてきましたように、テンプレート設計は、様々な技術を適用させることで発展させることができます。「設計ノウハウ」や「設計手順」をテンプレートモデルに組み込むことで、設計効率は大幅に向上します。テンプレート設計では、設計を支援するために「部品属性」を利用したり、テンプレートモデルに「加工情報」を盛り込むことで設計者の業務を軽減できます。
設計パラメータを3Dモデルと連携させる「モデリング技術」のスキルアップも必要です。
また、設計に必要な技術を向上させスパイラルアップ的に効果を出していくことで、その生産性は大きく向上します。(図6)
最後に
4回にわたり、金型設計におけるシステム構築について、ご説明させていただきました。
今後も、CATIA V5とSpace-E V5で、ものづくりを支援できるシステム化への取り組みを行っていきたいと思います。
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