人とシステム

季刊誌
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No.36 | システム紹介
Space-E CAA V5 Based R14 のご紹介
システム開発部 CAMグループマネージャ 小日向 章
CADグループリーダー 田丸 昭洋
型設計グループリーダー 澤田 和弥

はじめに

Space-E CAA V5 Based(以下Space-E V5)の新バージョンであるR14のモールド設計機能、コア&キャビティ設計機能、3次元CAM機能の各商品の新機能および改善された機能についてご紹介します。

Space-E V5 Mold Design R14

Mold Design R14では、設計者の視点から再度システムの見直しを行い、設計の流れをスムーズにするための機能を追加しました。新機能である「成形品位置合せ機能」「エジェクタピン作成機能」「UDFカスタマイズ機能」についてご紹介します。

【成形品位置合せ機能】

取引先から来る3D製品モデルは、たいてい金型設計に適していない位置・方向にあるため、設計者はまず最初に、製品形状を回転・移動するという作業が必要です。成形品位置合せ機能は、製品形状の位置合せを容易に行い設計者の手間を軽減します。

【エジェクタピン作成機能】

金型設計においては、エジェクタピンの位置や径が先に決まり、そのずっと後に具体的な長さが決まる場合がほとんどです。その流れに合うように、エジェクタピンの機能を「エジェクタピンの位置と径を決めるための機能」と「エジェクタピンの具体的な形状を作る機能」の2つの構成としました。

画面例 画面例
図1 エジェクタピンの作成
(左上図をクリックすると拡大図が表示されます)

【UDFカスタマイズ機能】

アンダーカット処理部品やキャビ・コア関連部品などは、各社ごとにノウハウがあり仕様もそれぞれ異なっています。そのため、一般的な機能では各社のノウハウを取り入れることが困難です。つまり、カスタマイズがどうしても必要になります。そこで、お客様ごとに自社のノウハウをユーザフィーチャ(UDF)の形で登録し、そのUDFを配置するためのVB(ビジュアル・ベーシック)やVBAのコマンドを簡単に作成することができる仕組み(API)を準備しました。このことによりお客様ご自身のノウハウを埋め込んだコマンドを作成することが可能になります。

画面例 画面例
図2 UDFカスタマイズの一例(段差面)

Space-E V5 Core & Cavity Design R14

Core & Cavity Design R14では、R12以来、独自に改良を加えてきた「複合面オフセット機能」に"干渉除去"オプションを加え、より実用的な性能を実現しました。ここでは、新機能の中から特に2機能についてご紹介します。

【モデル差分検索機能】

2つの3次元モデル(CATPart)を比較して、その差分を高速に抽出し、色分けすることによって判りやすく設計者に知らせます。

画面例
図3 モデル差分抽出の適用例
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

金型設計の過程で、製品(成型品)に仕様変更が発生した場合でも、変更箇所が的確に把握できることによって、すでに先行している設計プロセスへのダメージは最小限に抑えることができます。

また、流用設計を検討する場合でも、過去の実績モデルとの差分は、重要なインプットとなります。

図3は、2つのエンジンカバーモデルを使って差分を抽出した例です。差分箇所の色を変えて表示されています。モデルの比較は、設計の仕様ツリー(フィーチャ)を比較して行われるのではなく、3次元形状をダイレクトに比較しますので、例えば、IGESファイルを経由して取り込まれたサーフェイスモデルでも正確かつ簡単に差分を抽出することができます。

【複合面オフセット機能】

Space-E V5は、金型設計の初期段階における複合面オフセット機能の重要性を認識しており、R12以降、段階的に同機能の改良を行っています。

画面例
図4 複合面オフセット(フィレット自動内挿)

例えば、R12では、サーフェイス・ソリッド混在モデルをソリッド化することなく、簡単に肉厚付けすることを可能にし、更にR13では、折れたエッジをオフセットした場合に生じる隙間をフィレット面で埋めることによって、同機能の適用範囲を広げました。(図4)

画面例
図5 複合面オフセット(自己干渉の自動除去)

これに対して、R14では、"自己干渉除去"オプションを追加しました。このオプションは、同じく折れたエッジのオフセットによって、複合面に自己干渉が生じた場合でも、余分な箇所を自動的にトリムして取り除くことができます。これにより、複合面オフセット機能が凹凸モデルに対する±双方向へのオフセットに対応することが可能になりました。(図5)

この他、オフセットの安定化にも取り組んでいます。例えば、従来、サーフェイス表面の不連続や、トリム境界の不具合といった内部データの不整合に起因してオフセットに失敗していたケースでも、Space-E V5独自の近似アルゴリズムで補完することによって、安定したオフセットフィーチャを生成することができます。

Space-E V5 CAM R14

CAM R14では、従来機能の改善を中心に機能の強化を行っています。

【等高線荒取り経路機能】

Space-E V5 CAM専用の経路計算機能のロジックを強化しました。より高速加工を意識した経路が作成できます。また、CATIA CAM標準のフィーチャに対応したことでCATIAコマンド同様の「領域指向の機械加工」が可能になりました。

【等高線仕上げ経路機能】

画面例
図6 Zピッチ設定画面
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

ガイドカーブによるZピッチ指定機能を追加しました。

加工対象の形状に沿ったZピッチで加工する経路を作成することが可能になるので、適応できる形状での加工品位の向上が期待できます。

【工具ホルダー定義機能】

画面例
図7 工具ホルダー設定画面
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

定義できるホルダーの段数を拡張しました。また、設定値通りのガイド図が表示されることにより、入力ミスの低減が期待できます。

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