人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.35 | お客様事例
CATIA V5、ICEM Surf、 Darwin Revueで
業務の拡大と効率化を図る

株式会社デオック様は、プラスチック部品のデザインや製品設計、金型設計・製作までのあらゆる面で3次元データに関するご提案をされています。常にさなざまな技術力を蓄積され、お客様にアドバイスできる体制を積極的に整えられています。

今回は、Space-E、Space-E CAA V5 Based(以下Space-E V5)、CATIA V5を導入された効果やDarwin RevueやICEM Surfの今後の展開についてのお話を中心に、代表取締役社長 池田秀雄様、チーフオペレーター 軽海英明様、中川陽司様、金子峻介様にお伺いしました。

事業概要

人物の写真
代表取締役社長
池田 秀雄 様

当社は、デザインから設計データまでを3次元として取りまとめることを業務の中心にしています。特にプラスチック関係に分野を絞り、金型製作から成形までのアドバイスまでを含めて、デザインからお客様にご提案しています。特定の分野に的を絞ることで、より付加価値の高いご提案ができます。すでに3次元CAD/CAMは、どの会社でも導入されていますが、なかなかかゆい所まで手が届いていないというのが現状です。例えば、金型メーカ様であれば、製品設計やデザインはなかなか対応できないとか。デザイン会社様では、作成した3次元データをそのまま金型で使用すると不都合が起こるとか聞きます。そこでデザイン、製品設計、金型設計・製作、成形までをフォローする提案ができる会社を目指しています。金型メーカ様や成形メーカ様の製品設計に加わって、車のエアロパーツや純正の部品の開発に携わることが多いです。また車の他にはOA関係、プラモデルなど各分野に幅広く係わっています。

【他社と異なる業務】

現在も多くは、自動車のバンパーに付属の部品をつけるとき、クレイを盛って造形して、それを測定してから面データを作成していますが、クレイを作ると費用と時間がかかります。当社は、例えばバンパーのデータを2Dで出力してテープドロウを作成し、それを簡略的に測定してから意匠データを作成しています。もっと極端な例では、デザイナーさんの絵と厚みと幅の寸法を教えていただいて作成するということもしています。作成したモデルデータは、実際の製品になる前にデザイナーさんの検討用モデルになったり、風力評価のモデルに使用されています。中にはそのまま製品化される場合もあります。このような業務をやっている会社は少ないと思います。当社の場合、絵をいただくだけで、3次元データを作れるというのが売りです。

自動車メーカ様から新車が出ると、その車に付属する用品は、新車を使ってクレイモデルを作り、測定、データ化を経て金型を作るので、新車がでてからしばらくかかりました。ところが今は、新車と同時に付属用品も揃えたいというご意向があり、新車になる前の状態から設計に入らなければ間に合いません。そういうことから当社のような他社と違った業務をしている会社が必要とされているのです。当社は、どのシステムでも同じような提案ができるようにノウハウを構築してきています。

システム導入の経歴

以前勤務していた会社のメインシステムがGRADEでしたので、最初にGRADE/CUBEを導入しました。その当時NCを持っていなかったので、CAM機能を外してモデラーだけにしてもらいました。

それから世の中がソリッドになってきたため、Space-Eを導入しましたが、他にもいろいろと検証して、よりNURBSデータの精度が良かったRhinoceros(ライノセラス)も導入しました。その後もお客様の基幹システムに合わせてシステムを導入しています。当社の製品はデータです。納品したデータが、お客様の所でトラブルが起きないように、お客様と同じシステムのデータで納品できる体制にすることが信用につながります。そのため、Space-E V5やCATIA V5も導入しています。

設計の風景

今は、1人のオペレータが2システムを担当していますが、Rhinocerosだけはネットワークライセンスで全員が使えるようにしています。設備への投資が大変ですが、お客様より少しだけシステムだけでも前に進んでいないと、お仕事が頂けないので仕方ないです。

システムの利用状況

【Space-E V4とRhinoceros】

人物の写真
オペレーター
中川 陽司 様

同じモデルをSpace-EとRhinocerosで作業するとスピードの差がかなりあります。そのため今はRhinocerosを主流に使っています。Space-Eは変換や2次元図面に使っていますが、お客様の要望がある場合は、Space-Eでデータを作成しています。Space-E V4はGRADEの後継なので、便利なコマンドがたくさんあります。できるだけRhinocerosをカスタマイズしてSpace-Eのコマンド体系に近づけています。

画面例
トランクスポイラー
製品の写真
トランクスポイラー(製品)
画面例
フロントリップ
画面例
フロントリップ

【Space-E V5とCATIA V5】

人物の写真
オペレーター
金子 峻介 様

CATIA V5を導入した当初は金型関係が多く、キャビコア、PL、入れ子を作成していました。この半年くらいは、CATIA V5で意匠面作成の検証を行って、簡単な修正から入り、今は車のバンパーの意匠を作成しています。CATIA V5はサーフェスに経歴を持たせられるので使いやすいです。サーフェスで一枚一枚張っていくより、ソリッドで変形させていくと有利な部分がたくさんあります。それでCATIAのソリッドで足りない部分を補うため、Space-E V5のサーフェスやヒーリングアシスタントと組合わせて使っています。

意匠面作成では、HD2の既存のコマンドでは足りないという問題があります。導入したCATIA V5にモジュールを追加したかったのですが、非常に高価で導入することは難しいです。そのため、カスタマイズをして機能を代用できるコマンドを作成したいと考えています。マクロなどでコマンドを組み合わせるだけでは不十分なので、自分たちでコマンドを作成することも含めて検討しています。

画面例
フロントバンパー
説明図
車の付属用品のデザイン画
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

【コールセンター】

CATIAの基本講習だけ受けているので、カスタマイズをするにしても分からないことがたくさんあり、講習が終わってからは毎日コールセンターに電話とmailで問い合わせをしました。毎日1~2件ほど問い合わせをしていたので、コールセンターに問い合わせる件数が非常に多く、ナンバーワンになったそうです。多いときは1日に30件の質問事項をmailで送ったこともあります。HELPで調べればいいのかもしれませんが、聞いたほうが早い場合もあり、コールセンターがあって良かったと思います。

【CATIAのHELP】

HELPを詳しく見ていけば全部の機能が分かるようになっているとは思いますが、直訳しているような部分もあり、説明が不親切です。無理やりカタカナにしている部分もあり、その意味が分かりづらくなっています。

それもリリースが上がるごとに改善されているようですので、見やすくなってきています。

今後の展開

Darwin RevueとICEM Surfを導入して、よりユーザ拡大と効率化を図ります。

【Darwin Revueの効果】

Darwin Revueは、あるお客様とテストを行っている段階です。まだ実績はありませんが、テストで使用した感じでは、打合せに特化したシステムなので、動作的にも軽快で、効果が期待できそうです。お客様には当社に打合せに来ていただいていますが、始発で来て最終で帰られる遠方のお客様もいらっしゃいます。そこで、遠方のお客様との打合せがDarwin Revueでできれば、無駄な移動時間をなくすことができます。

まだDarwin Revueで実際の打合せをするには、いくつかの問題はあります。お客様と打合せをするためのデータを管理する拠点をどちらにするかというサーバ管理の問題です。サーバに入ったデータをどのように管理するかというキュリティの問題もあります。その他には、お互いのオペレータの操作のスキルの問題もあります。

人物の写真
チーフオペレーター
軽海 英明 様

Darwin Revueは、リアルタイムでなくてもメモを取ったりすることで履歴として残せるので、かなり便利です。また、こちらの要望に対してもHZS側の対応が早いので、かなり今後に期待しています。それからDarwin Revueの測定や干渉チェック機能にも注目しています。バンパーなどの下に付けるスポイラーに、よく起こる問題は干渉です。3次元データでは気づかなかった干渉があり、スポイラーを取り付けることができなかったり、振動で別の箇所に当たる場合があります。その干渉をDarwin Revueで見つけることができます。

今の開発の状況を見ているとDarwin RevueはCADの機能を多く追加されつつあるようです。個人的な意見ですが、面が作成できなくてもいいので、打合せがスムーズにできて、測定や干渉チェックができるという機能だけに特化したシステムとして、今後は進んで欲しいと思います。

【ICEM Surfの効果】

ICEM Surfは意匠としての完成度の高さがあり、時間をかければ非常に綺麗なモデルを作成できます。お客様のデザイナーさんと打合せをするとき、一緒になって触っていけるシステムだと思います。

カスタマイズですが、GALのように簡単にコマンドが作れる機能が、ICEM Surfにもあればいいと思います。お客様がICEM Surfであれば、同じデータでやりとりする必要がありますので、今後はICEM Surfも戦力に加えていきたいと考えています。

HZSについて

【GRADEの資産】

当社でRhinocerosの既存コマンドとカスタマイズしたGRADEライクなコマンドとの工数を比較しましたが、GRADEライクなコマンドの方が短時間で同じデータを作ることができます。当社は、車両のデザイナーさんと仕事をすることが多くなっています。そうするとデザイナーさんが思いつきで述べられていることを画面上でリアルタイムに表現する必要があります。それには必ずオペレーションのスピードの問題があり、ボタンをクリックするより、GRADEのようにコマンドを打つことで、瞬時に希望する面データを表現できることが重要になっています。CATIAのユーザインターフェースは、誰でも使いやすくボタンやメニューをクリックして実行できますが、そのため工数を大幅に削減することはできないわけです。

HZSのお客様にはGRADEを使われていたプロがたくさんいると思います。その中には、その資産をCATIAでも使おうと思っている方もいると思います。そこでGRADEの良かった部分をCATIAでも実現できるようにHZSにお願いしたいです。GRADEの資産をCATIAに移行しないのはもったいないと思います。

当社では、CAD室で自己満足するのではなく、見せられるオペレータとして、お客様の満足を引き出せるようになってほしいという話をよくします。GRADEではまさにそれができましたので、ICEM Surf、CATIAにも期待しています。

【ユーザの情報交換】

HZSホームページ上で、システムのQ&Aがリアルタイムに更新されたり、ユーザ同士が情報交換できる場があればいいと思います。ユーザ会がホームページ上にあれば、そこでユーザは技術情報を交換できるし、HZSはユーザがどういう情報を求めているのかが分かると思います。分からないことを調べたいとき、公開している情報がないと、他のシステムで代用するしかなくなります。某システムのホームページには、ユーザ会というのが別にあります。そこでの問題が、そのシステムの次期バージョンに反映されることが多くあり、そういうところはHZSも見習ってほしいと思います。

今後ともHZSと共に歩んで行こうと思っていますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

おわりに

株式会社 デオック様の会社名は、デザイン(design)、エンジニアリング(engineering)を提案(offering)して伝達(communication)するという意味があるそうです。金型や意匠データを作成されるだけでなく、既存のシステムを使いやすいようにカスタマイズされる技術力も持たれて、いろいろな考え方をお話いただきました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

会社の写真
社屋

株式会社 デオック

所在地 埼玉県川口市戸塚東1-17-19
設立 平成9年12月24日
資本金 10,000千円
事業内容 プラスチック部品3次元設計、プラスチック金型設計、プラスチック部品製造販売、プラスチック金型製造販売。

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