人とシステム

季刊誌
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No.43 | お客様事例
生産管理システム「電脳工場」とCATIA V5 で業務の効率化を目指す

株式会社エイム様では、自動車用部品のデザイン・設計開発から製造~信頼性試験および品質保証~納入まで一貫した生産体制を確立しています。工場の敷地内には、自社製部品を新車に装着するための工程をライン化し、その責任ある最終工程にも積極的に取り組んでいます。また、小ロット生産でも高品質を維持する技術を駆使しながらコストの最適化をするために、いろいろな工法を検討しています。今回は、生産管理システム「電脳工場」の導入背景やその効果について、そしてCATIA V5、Space-Eを利用した設計についてのお話を、取締役 江田雄二様、生産部 製造技術グループ グループリーダー 山中康雄様にお伺いしました。

事業概要

人物の写真
取締役
江田 雄二 様

当社は、自動車の内外装部品を一貫して生産できる体制を整えて、お客様のご要望にお応えしています。量産、試作、特注品にかかわらず、商品企画・デザインから設計、そして樹脂成形、金属加工、塗装などの袈飾、組み立てまでを社内で行っています。品質面でも常に、お客様が満足していただける製品をご提供できるように、平成17年1月にISO9001を取得しました。また、業務内容の拡大に伴い、鈴鹿工場を平成17年11月に開設し、平成18年1月には、資本金を8,000万円に増額しています。

今までは、開発関係に力を入れていましたが、製造関係にも投資していこうと、隣の敷地に成形工場を建設し、1300トンと850トンの射出成形機を導入して、プラスチックバイザー、フロントグリル、コンソール、カバー類などの製品を成形加工しています。それからライン品は、外に出すと部品どうしが合わないことがあるので、全て内製化するために、組立工場やラインの新設に伴う投資もしています。

3年前にNDESの取材を受けていますが、そのときから比べると、資本金は2倍になり、生産する商品も外装部品に加え、内装部品のコンソール、内張り関係など新しい分野へ参入しています。今後、内装部品には、かなりの生産量が見込めるため、4,000坪の土地建物を取得し、組立工場として運営を開始する予定です。

生産管理システム「電脳工場」

【導入の背景】

既存の生産管理システムは、パッケージソフトを当社に合うように改良してもらって、10年ぐらい使用してきましたが、いろいろな問題がでてきました。

まず、もともとプレス屋だったので、現在の製品、製造工程と全く違ってきたということです。そのため、システムの使い勝手も悪くなり、独自で表計算を作って処理するようになりました。そうなると、各自の頭の中にしか情報が残らず、横のつながりがなくなってしまいました。また、当社の購買資材は、お客様1社に1人の担当者を付ける形態で、受注があればメーカに発注していました。すると、Aというお客様とBというお客様から同じメーカのものを依頼された場合でも、各担当者が処理をするため、同じものを別々に発注することもありました。

このように既存の生産管理システムでは、単に伝票出力のために利用する状態で、納期を追いかけることも難しく効率も悪くなり、生産管理をするという従来の役割を果たせなくなっていました。

そこで、新たな生産管理システムを導入する検討に入りました。いろいろなメーカの生産管理システムを比較して、最終的にはNDESから提案された電脳工場を導入することにしました。

【導入の効果】】

プレゼンから立ち上がるまでには2年ぐらいかかりました。去年の6月頃に開発をスタートさせ、今年の1月には、既存のシステムと並行稼動させて、3月頃には本稼動の予定でしたが、担当者からの意見などあり、8月になってやっと本稼動を始めました。

まず、電脳工場を導入して、各自の頭の中のものを出してもらい、システム化することで、購買資材の各担当者の横のつながりができました。そして、次のような効果が得られました。

  • 受注、発注、在庫がタイムリーに確認できます。
  • 部品構成、外注情報、生産日程・工程、納期などが確認できます。
  • 製造・販売のデータを一元化することで社内の標準化が実現できます。

今は、本稼動を始めたばかりで、いろいろな問題を調整する必要はありますが、電脳工場を導入して、効率良く情報管理ができるようになりました。

開発・技術グループのCAD/CAE

【CATIA V5とSpace-E】

人物の写真
生産部 製造技術グループ
グループリーダー
山中 康雄 様

現在CADは、Space-E V5(CATIA V5)、Space-E、ICEM Surf、I-DEASを導入しています。

Space-Eを導入してからもしばらくの間は、当社でCADといえばGRADEがスタンダードでした。その後、担当者が変わりSpace-Eを積極的に使い始めて、1台だったSpace-Eは8台になっています。

また、Space-Eで設計を始めるようになってからDarwinを導入しました。営業でも設計したデータの確認を行うためです。開発と営業の間でのタイムラグを無くすのが一番のメリットです。

Space-Eは、自分が使いやすいツールとしては最高なのですが、対お客様になるとCATIA V5は無いと困るツールです。お客様からしてみれば、CATIA V5の生データを出すのが一番手間がかかりません。当社がSpace-Eだけしか持っていなければ、IGESに変換する手間がでてきます。それを無くすために当社は、CATIA V5とSpace-Eを併用しています。

まず最初にデータがくるとSpace-Eに落として、作業した後にCATIA V5に持っていきデータをチェックしています。当社のような中小企業では時間が命で、今はSpace-Eの台数が多いこともあり処理能力は速いと思います。そのため、特に大きい作業になるとSpace-Eで行っています。

CATIA V5ではモデリングもしています。CATIA V5で作業すると履歴が残るので、その履歴をお客様がチェックされることもあります。また、CATIA V5を導入したことで、営業もCATIA V5のデータを扱えることをアピールして、取引先を増やすことができました。新しい取組みとしては、今まで開発グループだけがCADを使っていましたが、技術グループでも、Space-E/CAMを初めて導入して加工に挑戦します。これで、開発グループが設計をしながら技術グループで並行して作業を行うことが可能になり、納期短縮が実現できます。

【チーム設計】

製品をそれぞれのパーツに分解して、Space-Eでチーム設計を行っています。1人で直列に設計するよりも、複数のメンバーで手分けをして並列に設計するほうが、設計時間を短縮できるので納期を早くすることができます。Space-Eにはチーム設計の機能がないので、やはり1人で設計するほうがいいのですが、去年、金型の依頼が集中したため、その数を今のメンバーでこなしていくにはチーム設計しかありませんでした。Space-Eでチーム設計をするために、モニタを横並びにして、皆の画面を見ながら作業をします。各メンバーが分担されたモデルを同じフォルダに同時に保存して、組み付けたモデルを表示させて、メンバーどうしが調整しながら仕上げていきます。干渉や影響する部分など関係する箇所が少なければいいのですが、何十箇所ともなると複雑になるため、かなりの能力とチームワークが必要です。

設計の風景
設計開発室(モニタを横並び)

仕事は、納期が決まってからくるので、たとえば、1人で作業すると1ヶ月かかるものが、チーム設計で作業すると1週間~10日でできてしまいます。去年は同じ人数で2.5倍の仕事をこなしました。Space-Eでチーム設計をされているところは、非常に少ないと思います。これがCATIA V5であれば、チーム設計の機能を備えているので、もっと簡単にできると思います。

開発グループが本来の設計だけに専念するには、メンバー全員のCATIA V5が必要になるため、今後の増設も検討しています。

Space-E V5画面
Space-E V5画面

【射出成形CAEシステム「CAPLAS」】

当社は、CAEシステムとしてCAPLASを導入しています。これは、キャビティ内に樹脂が流れ込んで充填するまでの動作を解析できるシステムです。金型の仕様を決めてから解析をすると、ある程度の不具合を予測できるので、金型を改修する時間が短縮できます。

投資効果は、導入してからすぐにありました。あるお客様から依頼があり、解析された樹脂流動のデータも一緒にいただきました。その解析データでは、ゲートが3点必要だという結果でした。すぐにCAPLASで解析すると1点のゲートでOKという違う結果になったので、こちらの解析結果をあまり信用していませんでした。ところが、3点ゲートで立ち上がりがうまくいっていないようでしたので、当社は1点ゲートにすることをVA(Value Analysis)提案させていただきました。結果的には、ゲートを1点にするほうが作業工数が減らせるので、当社のほうが先行して量産に入れました。このことで、会社としてのレベルを上げることができました。これだけのことができた裏には、NDESユーザで成形メーカさんのご協力があったからです。その協力がなければ、できなかったと思います。

今後の取組み

【WebDAVサーバの設置】

最近、CATIA V5のデータでいただくことが多くなってきました。金型図面、製品図面まで全部CATIAのデータで紙は全くありません。今は、見積りをするときは、データをCD-ROMに入れて送っていただいていますが、届くのが4日後になることもあります。またメールでのやり取りは、時間的には早いのですが誤送信などがあり、危険が伴います。そのため、WebDAVサーバで行うことにしました。WebDAVサーバを設置すれば、インターネット(Webブラウザ)を使って、サーバ上にファイルを転送できます。これにより、すぐにデータを受け取れるので見積りも早くできます。

これまで当社のネットワークは、社内だけで社外とは一切つないでいませんでした。そのため、これから社外と接続したときに、不正アクセスやデータの改竄などを防止するためのセキュリティを強化していく必要があります。また、お客様からも社内のセキュリティの話がでてきていました。そこで、WebDAVサーバによる通信の暗号化、サーバにアクセスできるユーザの限定、インターネット経由によるアクセスをすることで、より安全なファイルのやり取りが実現できました。

また、今後もデータのやり取りが多くなるため、開発グループにはCATIA V5を増設する予定です。このWebDAVサーバとCATIA V5の増設を同時に行うことで、導入効果の拡大が期待できます。

【グループウェア、文書管理】

社内のLANを利用したグループウェアを導入して、情報の共有や文書管理を効率的に行うことも考えています。今は、いろいろな文書データがどこにあるのか分からない状態なので、それを整理して文書管理することで、ほしい資料をすぐに見つけることができます。

【3次元デジタイザ「VIVID」】

当社には、5年前に導入した定盤のレイアウトマシンがあります。導入した当時は、車1台をまるごと測定できるので頻繁に使っていましたが、今では付帯効果が少なくなっています。手軽に使えるという点で、VIVIDは場所を問わずに、高精度な3次元データを取ることができます。そのため、今後はVIVIDの導入を検討しています。

レイアウトマシンをお譲りします!


エイムで使用しているレイアウトマシンをお譲りいたします。
詳細、金額などはお問合せください。
・サイズ:7m×4m
・ベースサイズの大型機
(自動車を1台載せて利用可能)
・お問合せ先:総務部 関口
TEL 0285-49-3611(代表)

挿絵
レイアウトマシン

【人とシステム】

これからも設備投資は積極的に行います。社員はそれを使いこなして、オペレータとしてではなく考える力を伸ばし、いかに効率を上げていくかということです。当社の社員は、幅広い技術を要求されます。また、社員に期待するだけではなく、夢を与えてあげることも大切なことだと思います。夢、目標を持つことができれば、やりがいを感じながら、仕事に取り組むことができます。やはり、この冊子のタイトルと同じように「人とシステム」ということが大切です。これからも設備投資をしながら、人材を育成していきます。

NDESへ

NDESの営業は、当社のことを隅々まで見て、当社に合った提案をしてくれます。開発、技術、営業、資材、事務などいろいろな部署の問題を理解して、効率アップにつながるような提案をしてもらえていると思っています。また、NDESとは、これからもお互い協力しながら、情報交換していきたいと思います。

おわりに

Space-Eでグループ設計されているお話を聞き、システムの機能以上のことをされている設計者の方々のレベルの高さを感じました。また、弊社冊子の「人とシステム」の言葉にも共感していただき、ありがたく思いました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

会社の写真
本社工場

株式会社 エイム

本社工場 〒323-0158 栃木県小山市梁2333 東部工業団地内
鈴鹿工場 〒513-0825 三重県鈴鹿市住吉町5-9-13
創業 大正14年8月
資本金 8,000万円(平成18年現在)
従業員 48人(平成18年現在)
事業内容 自動車の内外装部品、メーカの純正用品などの企画、開発、製造、組立
製品の写真
フロントグリル
製品の写真
フロントグリル
製品の写真
オーバーフェンダー

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