人とシステム

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No.51 | お客様事例
CATIA V5を活用して世界の自動車開発会社へ

株式会社HIVEC様は、「広島をアジアの自動車開発拠点に」を合言葉に、広島市と地場の自動車関連企業がタッグを組んで2003年に設立されました。現在は、自動車や電車など輸送用機械やその部品のデザインから生産準備まで一貫して受託できる体制と環境の中で、世界の多様なニーズに対応できるグローバルカンパニーの実現に取り組まれています。今回は、会社のさまざまな特長やCATIA V5のお話を中心に、専務取締役 清水隆司様、第1開発部 兼 経営企画室 東真一様にお伺いしました。

事業概要

人物の写真
専務取締役
営業部・第1開発部・
第2開発部担当
清水 隆司 様

当社は、自動車開発のアウトソーシングを受託し、商品のデザインから量産準備まで一貫して行っています。アメリカやヨーロッパには1万人の規模を超える開発会社もありますが、日本では当社が自動車メーカに属さない初めての本格的な量産車の開発会社だと思っています。

現在、海外にはアウトソーシングが当然という流れがあり、日本もそうなりつつあります。日本の自動車メーカでは、安全や環境が社内で取り組むべき重要なポイントで、それ以外の部分はなるべくアウトソーシングしたいという意向もあるようです。そういうメーカのお手伝いをするのが私達の業務です。

広島に本社と本社デザインセンター、大阪に関西事務所、そして今年7月、関東地区からの受注強化を目的として、神奈川県厚木市に東京デザインセンターをオープンしました。

【新しいコンセプトをもつ自動車開発会社】

2000年頃から広島市は広島地区産業の活性化を考え、その結果、自動車の受託開発を行う会社の必要性が認識されました。広島市の呼びかけにより地元自動車関連企業16社による研究会が発足し、新会社の設立準備が整った後、当社が設立されました。

現在は、広島の企業15社に協賛していただき、これらのアライアンス企業と協業することで、高品質で短納期な開発を可能にしています。

【ユニークな事業形態】

個々の仕事は協賛企業様が受託されますが、お客様からの一括の仕事の場合は当社が受託し、その一部を協賛企業(以降アライアンス企業)に依頼します。例えば、ある自動車メーカから仕事全体の受注は当社が行い、設計は当社が担当し、詳細部品設計や型設計、実験、試作などはアライアンス企業に依頼します。

このアライアンス企業のおかげで、設立当初からすぐにさまざまな仕事を受注することができました。

また、当社とアライアンス企業の両方が仕事を受注できるという相乗効果もあります。アライアンス企業に仕事の一部をお願いすることにより、当社でさまざまな設備を持たなくていいのでコストも削減でき、また、委託されるお客様も当社と調整するだけでよく、お互いより効果的で効率的な業務が行えます。

当社は今年6年目を迎え、まだまだ狙い通りには進んでいませんが、10年後には効果がもっと出てくるのではないかと思います。

広島市は、ユニークなこの事業形態が成功すれば、他の業種にも適用できるのではないかと考えているそうです。

説明図
アライアンス企業との協業

【国際エンジニアリング協力体制】

もちろん国内だけではなく、海外のいろいろな依頼にも対応しています。海外からの受注は昨年実績の1.3倍の状態で、現在も中国の大手自動車メーカからアッパー部分のスタイリング、板金部分、内外装デザインの仕事を受注しています。

また、中国では今までは既存の車をベースにものづくりをしていましたが、これからは自分達の手で開発しなくてはいけない時期にきており、自主開発を始めています。それがすぐに立ち上がればいいのですがなかなか進まないこともあり、そのサポートも当社で行っていきたいと考えています。

現在は、「国際エンジニアリング協力体制」をとり、2004年から韓国の開発会社SES社、中国・上海のTJInnova社、イタリア・トリノのBLUE Engineering社との協業による連係体制、また、モスクワにある日本の企業に業務委託をして、マーケティング・コンサルタントを含めた協力体制をとっています。目的は、それぞれの会社が世界中を回って仕事を探すのではなく、タイアップした会社が中国は中国、ロシアはロシアというようにそれぞれの国の仕事を探し、協力体制にある開発会社と連携することです。そうすれば、仕事の量も拡大し、安定して仕事が確保できる流れができます。将来的には、東南アジアにも、合弁で開発会社を起こしたいと考えています。

説明図
国際エンジニアリング協力体制

システムへ期待すること

【CATIA V5の運用について】

自動車会社の多くが利用しているCATIA V5はメインシステムのひとつであり、派遣業務に関してもCATIA V5の操作ができることが必要なので、トレーニングなども含めて台数を持っておく必要があります。現在当社では、ハイブリッド・デザイン2など12モジュールが稼動しています。

人物の写真
第1開発部 兼
経営企画室
東 真一 様

CATIA V5にはたくさんの機能があり、さまざまなモジュールがあるという良さはありますが、高価なので負担が大きいことが当社の悩みです。これはどんな企業でも同じように抱えている問題ではないかと思います。お客様によって利用するCATIA V5のモジュール構成が違うこともありますし、自動車メーカに特化したモジュールを利用しなければいけないこともありますので、当社でどこまでモジュールを揃えるかが難しい課題のひとつです。

例えば、基本料金が決まっていて、それにプラス従量制というような運用システムがあれば、当社のような業務には利用しやすいと思います。短期的な利用やスポット的な利用であれば、年間使用契約の利用も選択肢のひとつとして検討することも考えています。

【システム活用について】

お客様からの仕事の依頼にあわせて、他のシステムを利用する場合もあります。現在はCATIA V5と他システムを組み合わせて利用し、効率化を図っていますが、今後もさまざまなシステムの検討が必要です。

最終的に納品するデータがCATIA V5のフォーマットでいいのであれば、その過程では CATIA V5の利用だけでなく、例えばミッドレンシステムやロウエンドシステムを組み合わせて運用することも考えており、それぞれのシステムの互換性を考えながら、NDESと一緒に検討していきたいと思います。

今後の取り組みについて

【セキュリティの課題】

現在当社では、デザインセンター入館から用紙出力まで、社員証を使用した個人識別管理を実施するなど、業界でもトップクラスのセキュリティを採用し、情報の秘匿管理を行っています。

自動車メーカからの仕事では、その会社の中に入らないと情報が取れませんが、自動車メーカからその情報をこちらに持ちこみ、拠点はこの本社デザインセンターで仕事をするという方法をとりたいと考えています。海外での仕事の場合でも、主要メンバーだけが海外に赴き、後は日本で業務を行いたいと思います。

そうすると、その情報のセキュリティと通信設備をどうするかが大きな課題となります。

業種によっては、図面を見る必要がなくシステムだけを利用することや、テレビ会議やビューワを活用すれば十分という場合もありますが、自動車はそうはいきません。大きなデータをやりとりしなくてはいけませんし、データそのものに秘匿がある場合がほとんどです。この問題にどう対応していくかをクリアしないと、お客様は仕事を依頼してくれません。ひとことにセキュリティを厳重にするといっても、厳重にすればするほど情報が扱いにくくなる面もあり、どう管理・運用していくかがカギとなります。

【経営企画室の設立】

今回新たに、「経営企画室」という情報整備なども含め会社戦略をどう立てるかを考える部署を設置し、現在は通信インフラの整備を課題として取り組んでいます。当社の仕事は多種多様で、お客様も多岐に渡ります。そしてさまざまなデータを扱いますから、その処理・管理、収益管理まで含めてどうするか、受託や派遣などさまざまな勤務体系で働く職員ひとりひとりのデータ管理をどうするか、マネージメントの部分が大きな課題です。

しかし、その投資に対する効果は、例えば建物のセキュリティなどではわかりやすいのですが、マネージメントの部分はわかりにくいところが問題です。投資の必要性はあるが、それに対する効果が数字として見えにくいことは、当社だけに限らず日本の企業全体が抱えている問題だと思います。投資して収益が上がるとは限りませんが、将来的に会社全体の効率化につながると思います。

【世界一を目指して】

今、自動車に関しては日本が世界一です。中国やロシアのいろいろなメーカは、今まではヨーロッパに仕事を依頼していたのですが、やはり"自動車は日本に"という動きがあります。当社も"世界一の日本"の開発会社ですから、ゆくゆくは"世界一の開発会社"を目指そうという気持ちで業務を行っています。

人材育成についても、設計の基本となる製図教育からCAD教育・設計技術教育までをこれからもさらに充実させていきたいと思っています。

また、自動車の関連技術を他方面に活かし、拡大していきたいと考えています。現在は電車などにも着手していますが、将来は動くものに関しては何にでもチャレンジしていきたいと思います。

●人材育成のためのさまざまな教育プログラム

挿絵
製図教育
挿絵
設計技術教育
挿絵
CAD教育
挿絵
設計技術教育(現物確認)

NDESについて

【NDESを選んだ理由】

NDESとのつき合いは、ある自動車メーカからの仕事を受注した際にシステムが何台も必要になり、CATIA V5を導入した時からです。システムの購入には価格が重要ですが、その後のシステム運用はサポートにかかっています。当時、CATIA V5を販売している会社は何社もありましたが、サポート体制や営業の人柄などもあって、NDESを選びました。それから本格的にサポートが始まりました。

当社の業務はいつ何があるかわかりませんし、自分達だけでは解決できない部分もありますから、専門家と一緒に仕事せざるをえません。そうなるとサポートの良さが重要になります。NDESは、いろいろな相談にのってくれますし、フットワーク良く動いてくれます。

【トータル的なサポートを】

さまざまな機器やシステムを導入し運用するためには、その検討段階から課題の解決まで一緒に行ってもらえることが重要だと思います。これからも、NDESには他社での実績や事例を活かしていろいろな提案をしてほしいと思います。NDESはまさに通信の会社であるNTTデータの関連会社ですから、将来の展望も含め、システムだけでなく通信系のシステムやインフラの面に関しても情報をいただきながら、今後もお付き合いしていきたいと考えています。

おわりに

今回お話をお伺いした本社デザインセンターは昨年、日経ニューオフィス賞「中国ニューオフィス激励賞」を受賞されました。"快適かつ機能的""感性を刺激し、創造性を高める場"、"ITを活用した新しいマネジメントとワークスタイルを積極的に推進する知的生産の場"などが審査のポイントで、受賞を実感することができる快適な空間でした。大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

会社の写真
会社の写真
本社デザインセンター

株式会社HIVEC
(ハイベック=Hiroshima Vehicle Engineering Company)

本社 〒731-3168 広島市安佐南区伴南1丁目3番16号
本社
デザインセンター
〒739-0037 東広島市西大沢2丁目1番21号
東京
デザインセンター
〒243-0018 神奈川県厚木市中町4丁目16番18号
設立 2003年5月20日
資本金 2億6,250万円
従業員 104名
事業内容
  • 自動車、その他の輸送用機械器具等およびこれらの部品のデザイン・設計・実験・試作および製造
  • 工業および商業デザインの企画と製作
  • 自動車、その他の輸送用機械器具の部品用型、 治具および検査工具の設計と製作
  • 労働者派遣事業

■協業企業(現在15社)

㈱今西製作所 ㈱オーエイプロト ㈱音戸工作所 桜井機械㈱ 住友商事㈱
ダイキョーニシカワ㈱ 中国技工㈱ ㈱GKデザイン総研広島 ㈱ヒロタニ ㈱ヒロテック
富士機械工業㈱ 双葉工業㈱ プレス工業㈱ ㈱真末鉄工所 ㈱ワイテック

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