

広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶしまなみ海道は、瀬戸内海の島々を7つの橋でつなぐ、風光明媚なハイウェイです。そのしまなみ海道で結ばれた生口島と因島に工場を構える内海造船株式会社様は、新造船事業と改修船事業の二本柱で、造船業界のオールラウンダーとして確固たる地位を築き、国内外で幅広く活躍しています。同社では、造船ソリューションである「GRADE/HULL」をはじめ、「管ナビ」や「Beagle View」をご活用いただいています。現在、業務の効率化に3Dデータを活用した取り組みを進めています。
| ■POINT |
|---|
| 1. 造船設計を支える造船ソリューション GRADE/HULL、管ナビ、Beagle View |
| 2. 効率化とコストカットにつながる 最適な自動ネスティングを目指して |
■導入ソリューション GRADE/HULL、管ナビ、Beagle View
●内海造船様のご紹介
1隻1隻の船をオーダーメイドで建造
取締役 常務執行役員
新造船事業本部長
岡野 行孝 様
1944年11月、前身の瀬戸田造船様の設立をもってスタートした内海造船様は、フェリー、コンテナ船、バルクキャリア、RORO船などの新造船事業に加え、官公庁船や特殊船など各種船舶の修繕船事業を長年にわたり推進してきました。最大の特徴は、さまざまな仕様の船種をオーダーメイドで建造してきたことです。現在、造船業界ではバルクキャリアなどの同型船が多く建造される中、同社ではフェリーやRORO船をはじめとする内航船の受注が多いといいます。取締役常務執行役員で新造船事業本部長の岡野行孝様は、同社が建造する船を「一品料理」と表現します。「当社は、さまざまな船を造れることを強みにしてきました。一隻一隻が新しい設計となり同じ船が少ないことで、いわば『最初で最後の船』を造っていると言えます」と岡野様は語ります。
中・小型フェリーおよびRORO船の建造において業界トップクラスの実績を誇る同社ですが、近年はこれまで建造してこなかった船種も増えてきています。その船種について岡野様は「防衛省向けの輸送艦の建造では、我々の経験のない特殊要件も多々あり難しい建造船であったが、引き渡すことができました。さらに、LNGと重油のDFフェリーの建造では、これまで扱ったことのない燃料に対応する取り組みでした。いずれも初めての建造だったので苦労することが多くありましたが、特に船主様の知識と経験に助けられ数々の課題を克服しながら新しい経験、知識を得ることができました。このように苦労を乗り越えて成長を続けていることが当社の強みとなっています」と話します。
●導入システムについて
長年にわたり内海造船を支える造船ソリューション
内海造船様では、豊富な経験に基づく高い技術力と充実した生産設備が、さまざまな船種の建造を支えてきました。その中でも非常に重要な役割を担う設計部門では、長年にわたり私たちの造船ソリューションをご利用いただいています。船殻の機能設計から生産設計までをカバーする3次元CAD/CAM システム「GRADE/HULL」、現場に必要な管一品図を3次元モデルから生成する造船向け3次元艤装設計システム「管ナビ」、船殻、艤装の3次元データを活用する3Dビュワー「Beagle View」の3つが同社の設計部門を支えています。
新造船 事業本部
設計本部 詳細設計部
詳細生産課 船殻(瀬)係
箱崎 恭介 様
・GRADE/HULL
GRADE/HULLを選ばれた理由について岡野様は「当社は30年前の販売開始以来、GRADE/HULLを使用しています。改めて当時を振り返ると、御社の開発担当者は設計および建造を深く経験し、鍛えられた職人気質の方々でした。彼らが尽力して開発したGRADE/HULLは、硬派でありながら気配りのあるシステムだと評価し、選定の決め手となりました。また、当社が建造する船は構造が複雑なことが多いため、細部まで丁寧に対応していただけることが重要です。他の海外メーカーのシステムを試したこともありますが、日本の造船業を深く理解し、日本語で円滑にやり取りできることなど、メイド・イン・ジャパンならではのメリットは非常に大きいと感じています。もしかすると、この価値を理解しているのは当社ぐらいかもしれませんが、間違いなく御社は常に素晴らしい仕事をしてくれていると感謝しています」と話します。
新造船 事業本部
設計本部 詳細設計部
詳細生産課 船殻(瀬)係
箱崎 恭介 様
現在は、GRADE/HULL の従来版と次世代版の両方の環境をご活用いただいています。次世代版では、従来はコマンド入力だった操作をGUIパネルで行えるようになり、操作手順の短縮による作業効率の向上が期待できます。 GRADE/HULL を使って船殻の設計を行っている、詳細生産課船殻(瀬)係の箱崎恭介様は、設計現場での従来版と次世代版の併用について次のように説明します。「次世代版は操作がシンプルになり、初心者でも使いやすくなりました。従来版では、1つのデータを作成するために十数回の操作を繰り返す必要がありましたが、次世代版ではそれが2~3回で完了し、手数が大幅に減ったことが大きな利点です。そのため、若手社員への教育も容易になりました。さらに、次世代版は同じ構造が連続する場合に特に有効です。一方で、より細かな定義が求められる場合は従来版が適しているため、当社では両方を使い分けています」
新造船事業本部
設計本部 詳細設計部 船体管装課
船体管装係長 黒田 晃平 様
・管ナビ
管ナビは船体配管の3次元艤装設計に欠かせない存在となっています。管装の設計を担当されている船体管装課船体管装係長の黒田晃平様からは「管ナビの導入当初は思うような成果がなかなか上がらなかったのですが、課題を一つずつ解決しながら、使い勝手の良い配管CADとして利用できるようになりました。今は人手が不足しているため、管ナビをGRADE/HULLのように使えていないことが残念なところです。一方で、業務の運用とは別に若手社員の教育に活用するようになりました。以前は、図面を見て現場と比べて実際にはこうなっているという現場教育でしたが、それを管ナビの画面と図面を見ながら学ぶことができます。いまだに2次元CADを使う方が便利な場合も残っていますが、管ナビで設計する範囲を広げていく方針なので、今後は3次元設計の機会が増えていきます」と利用状況の説明がありました。今後、関連する3Dソフトウェアのアップデートに伴い、その機能に追随するため、管ナビにさらなる機能強化やカスタマイズを期待する声が寄せられています。
新造船事業本部
設計本部 詳細設計部 船体管装課
船体管装係長 黒田 晃平 様
●今後の取り組み
歩留まりの向上と設計の効率化
今後の課題として自動ネスティングの機能強化についてもお話しいただきました。鋼板や鋼管などからできるだけ多くの部材を取り出すネスティングは、環境対策やコストカットのためにも重要な工程であり、鋼材の発注に際しては、限られた時間の中で効率的にネスティングを行う必要があります。このことについて岡野様は「最近、材料費の高騰が続いております。そのため、鋼材発注前の限られた期間で歩留まりを改善しようとすると、最初に行う自動ネスティングの精度に大きく依存することになります。そのため、GRADE/HULLにおける自動ネスティング機能の一層の向上をお願いしたいと考えています。また、配管のネスティングにおいても、管ナビの3Dデータを活用した自動化機能の開発を依頼する予定です。これにより、短時間で歩留まり改善に取り組むことが可能となります」と話します。
将来的な方向性としては、GRADE/HULLと管ナビのより強力な連携について黒田様にご意見いただきました。「配管設計や艤装設計の工程には背景モデルが必要になります。管ナビの背景モデルはGRADE/HULLで作成した船殻モデルを使用しますが、課題は配管の検討段階でその背景モデルをどのように用意するかという点です。この検討段階より、GRADE/HULLの背景モデルが作成される工程が後ろにあるため、タイミングが合いません。例えば、GRADE/HULL で作り込んだ状況がリアルタイムに背景に反映されていく仕組みができれば、かなりの効率化を図れると思います」
その他、Beagle Viewについても、リアルタイムに背景が入れ替わる仕組みがあれば、タブレット端末でも有効に使用することができるとのご指摘をいただきました。
●会社の課題と今後
モノづくりの楽しさを示す6つのキーワード
今後の取り組みについて伺うと、岡野様は「いま抱えている課題としては、やはり人材不足ですね。これからもっと大きな仕事をしよう、もっと難しい船を建造しようと目標にしても、それを実現する人材がいなければ不可能です。まずは、若手社員にモノづくりの楽しさをもっと知ってもらいたい」と話します。
岡野様は、このことをどう伝えていけば良いのかと模索を続けていたときに、出会った言葉があったといいます。それは、カップヌードルミュージアム横浜で見た安藤百福氏の創造的思考(クリエイティブシンキング)を実現するための心構えでした。「まだ無いものを見つける」 「なんでもヒントにする」「アイデアを育てる」「タテ・ヨコ・ナナメから見る」「常識にとらわれない」「あきらめない」これこそモノづくりの楽しさの原点です。最初で最後の船を造ることは、辛さもいっぱいあるけれど楽しさもいっぱいあります。若い人にはそれを理解して、経験してほしいと思ったそうで、これから社内浸透に向けアプローチされる計画があるとのことです。
また、船を建造し続ける中にも楽しさを感じることがあると言います。黒田様は「フェリーであれば自分が造った船に再会することができます。趣味のバイクツーリングを兼ねて四国や北海道のフェリーに乗船することがありましたが、感慨深いものがありますよ」と話します。モノづくりの苦労の先の楽しさが伝わる言葉です。
●NTTデータエンジニアリングシステムズへ
今後も両社に達成感のある取り組みを
最後にNTTデータエンジニアリングシステムズとの取り組みについて岡野様にお伺いしました。
「システムで解決できる課題やより便利になる仕組みは、ぜひ御社に頑張ってもらいたいと思います。機能の要望を聞くだけでなく、こんな機能があったらどうですか、といった積極的な提案やアイデアをいただけるとうれしいですね。そこから当社は必要に応じて調整しながら、使いやすい機能やシステムを一緒に作り上げて、成果だけでなく両社でモノづくりの達成感を得られるようにしていきたいと思っています」
私たちへのご期待のお言葉ありがとうございます。長年お付き合いのある内海造船様が「最初で最後の船」の建造に当たり新しい分野へ挑戦される中、私たちもこれまで以上に、ご要望に応えられるよう、最適なご提案と開発を続けていきます。
会社プロフィール
内海造船株式会社
| 設立 | 1944年11月22日 |
|---|---|
| 資本金 | 12億17万円 |
| 本社所在地 | 広島県尾道市瀬戸田町沢226-6 |
| 従業員数 | 571名 ※2025年4月1日現在 |
| 営業品目 |
各種船舶の建造と修繕 新造船事業:フェリー、コンテナ船、プロダクトタンカー、バルクキャリア、一般貨物船、自動車運搬船、冷蔵運搬船、RORO船、調査船等の建造 修繕船事業:官公庁船(保安庁、自衛隊、学校の練習船)の修理、改造 |
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