人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.100 | お客様事例
ミスゼロを目指す船舶建造に活用する3次元データ

ケミカルタンカーを中心に各種船舶の設計から建造までを手掛ける株式会社臼杵造船所様は、3次元船殻CAD/CAMシステム“GRADE/HULL” 、3次元艤装設計システム“管ナビ(kan navi®)”、 3Dデータ活用ソリューション“Beagle”をご利用されています。本誌No.90(2018年7月1日発行)に同社の活用事例として、管ナビの導入1年目における艤装設計の3次元化の取り組みと今後についてご紹介しました。今回は、それからの3年間の取り組みと成果について3次元データの活用という視点からお話をお伺いしました。

POINT
1. 管ナビの習熟により設計精度を高め工場からの問い合わせを削減
2. GRADE/HULL、管ナビ、Beagleにより塗装および発注部材のコストを削減

3次元データを活用して
設計精度を高めコスト削減を実現

株式会社 臼杵造船所 取締役 設計本部長 堺田 和昌 様
株式会社 臼杵造船所
取締役 設計本部長
堺田 和昌 様
株式会社 臼杵造船所 設計本部 機電設計部 配管設計課 主任 篠田 壮則 様
株式会社 臼杵造船所
設計本部 機電設計部
配管設計課 主任
篠田 壮則 様

本誌No.90の取材時は、熟練者でなくても構造物と配管の干渉確認が容易に行える管ナビの利点を生かし、配管設計で誤作を削減するという成果を達成されていました。その当時を振り返りながら、取締役設計本部長の堺田和昌様と設計本部機電設計部の配管設計課主任の篠田壮則様は、3年間の取り組みと成果を次のように話します。

・管ナビの習熟度の向上

この数年の間に、建造する船の案件に管ナビの活用を増やしていく中で、設計スタッフの仕事に対するスキルと管ナビの習熟度を高めることができました。No.90の取材当時、管ナビでの配管設計は同型船ばかりでそれも一隻おきでした。ところが現在では、同型船以外に新造船のケミカルタンカーや小型フェリーの配管設計まで管ナビで行うようになり、全ての構造物と配管の干渉確認が容易になりました。管ナビによる配管の見える化や技術的な平準化で、設計精度が上がり間違いは確実に減っています。また、工場からの問い合わせがほとんど無くなり、誤作、不具合の削減もできています。

・正確な塗装面積の算出

次に取り組んだ3次元データの活用は、塗装面積を集計するBeagle PAINTを導入してコスト面や環境面のメリットを図ったことです。これまでは、手計算で表面積を算出していたため低い精度だったのですが、GRADE/HULLで設計した3次元データをBeagle PAINTに取り込むことで、正確な塗装面積を容易に算出できるようになりました。これで塗装にかかるコストを2~3割削減できています。発注する塗料の量は、塗装用スプレーガンによる飛散量の係数を塗装面積に掛けて算出します。また、正確な塗装面積が算出できるようになると環境負荷の対策として無駄な塗料の廃棄を防止することができます。このように、いろいろな工程に3次元データを派生させることでコストダウンにつなげていく取り組みを進めています。

・組立要領の作成にも活用

ブロックの組立要領の作成にも、GRADE/HULLと溶接作業物量を集計するBeagle WELDを活用する取り組みを行っています。各部材の親子関係の作成など、試行錯誤しながら進めている段階です。また、これまで作った3次元データを多方面で活用できる体制を作りたいと考えています。

究極の目指すべきゴールはミスゼロ

設計から建造まで3次元データを活用する一番の目的は、不具合を出さないことだと堺田様は話します。

「設計部門では設計でミスを出さないことです。工場では取り付けミスなど出さないことです。ミスゼロを目指すのが私たちの最大の目標です。その目標を見据えて3次元データをうまく活用できるツールを選び、組み合わせて成果を出していきたいと考えています。単に3次元化を目標にしているわけではありません。いろいろなことにチャレンジして課題を克服しながら、ミスゼロに近づけるように取り組んでいる最中です」

管ナビによる上甲板の配管設計
管ナビによる上甲板の配管設計

福岡造船グループとしての連携

2018年4月、臼杵造船所様は福岡造船グループの一員となり、共にGRADE/HULLを導入している福岡造船様との連携を強化する上で、堺田様はNDESに期待していると言います。

「グループ全体の設計強化のためには、GRADE/HULLのデータの共有が必要となってきます。これから相乗効果を図るためにも、GRADE/HULLのクラウドサーバーとクラウドライセンスという環境で作業ができるようにNDESにはお願いしたいと思っています。また、福岡造船グループ全体の事業変革の中で、設計受託も大きな役割を占めることになります。引き続き、NDESの造船生産設計サービスでの協力をお願いします。これからも、さらにお願いすることが増えていくと思います。GRADE/HULLをはじめとするNDESのソリューションに期待しています」

建造中のケミカルタンカーの船尾
建造中のケミカルタンカーの船尾
建造中のケミカルタンカーの全景
建造中のケミカルタンカーの全景
ケミカルタンカー部材組立の工場内
ケミカルタンカー部材組立の工場内

GRADE/HULLや管ナビなどの3次元ソリューションを臼杵造船所様はいち早く導入し活用されています。究極のミスゼロを目指す企業姿勢に応えるべく、私たちNDESは引き続きお役に立てるよう尽力いたします。

会社プロフィール

株式会社 臼杵造船所

所在地 大分県臼杵市大字板知屋1番地12
創立 1988年8月16日
資本金 5,000万円
株主 福岡造船株式会社
従業員数 503名(2020年7月1日 現在)
事業内容 各種船舶・艦艇の建造修理、鉄構造物および機械器具設置業(特定建設業、大分県知事許可)、土木・建設および鉄骨の製作、クレーンなど荷役運搬機械の製作、高圧容器の設計・製作、コンピューターによる情報処理

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