Simufact.forming 今後の方向と新バージョンのご紹介
SI事業本部 技術統括部 第五技術部 高木 麻由美 |
Simufact.formingについて


私たちが販売をしているSimufact.formingは、メタルフォーミングプロセスシミュレーション、すなわち金属加工のシミュレーションを行うことができるシステムです。成形種類としては、鍛造、厚板成形、回転成形、自由鍛造、複雑な工具の動作に対応しています。
また、素材の材料としては、低炭素鋼からSUSのような鉄鋼材料、ステンレス、アルミ、チタンなどの非鉄材料に対応しており、広範囲にわたるメタルフォーミングプロセスシミュレーションが可能です。
今回は、Simufact.formingが近年、目指すものと、その中心となる新バージョンSimufact.forming11.0をご紹介します。
プロセスチェーンシミュレーション
Simufact.formingは、単なるメタルフォーミングのシミュレーションだけでなく、幅広く製造プロセス全体をシミュレーションする「プロセスチェーンシミュレーション」を目指しています。
成形工程全体のシミュレーションとは、例えば、鋳造により作成したインゴットの物性状態を用いて、Simufact.formingで成形や熱処理のシミュレーションを行うことです。素材から最終製造物までのプロセスチェーンシミュレーションにより、

実現象により近い結果
工程設計・検討時間の短縮
材料状態の予測
など、より品質の高いソリューションの実現を目指しています。
Design-orientedからProperty-orientedへ
現在、ほとんどの設計は、製造物を装着するスペースのかたちやサイズを基に検討されています。これを私たちは「Design-oriented manufacturing(デザインを基にした製造)」と呼んでいます。
これに対して、使用する材料を基に設計を検討する「Property-oriented manufacturing(材料を基にした製造)」が、近い将来やってくると考えています。
材料による製品の軽量化、コストを削減できる材料や高強度材料の利用など、材料から設計を考える「Property-oriented-manufacturing」では、先に述べた、「プロセスチェーンシミュレーション」が非常に重要な役割を果たします。
新バージョン Simufact.forming11.0
昨年リリースされたSimufact.forming10.0では、厚板成形や回転成形の機能が強化され、これまで以上に広い分野でSimufact.formingをご利用いただけるようになりました。
Simufact.forming11.0では、これらの機能のさらなる強化の他に、以下をはじめとする新機能の追加や機能強化が図られています。
マテリアルインターフェースの改良
新しい熱処理モジュール(オプション)
プリ・ポストプロセッサの改良・強化
FEソルバーでのDDM機能の改良(オプション)
マテリアルインターフェースの改良

新しいマテリアルインターフェースは、Simufact.formingだけでなく、他の材料データベースからのデータ読み込みを目的として作成されました。フローストレスカーブの作成は、テーブル入力またはanalyticalアプローチで行うことができます。analyticalアプローチを使用すると、異なる温度範囲に対して複数の材料モデルを組み合わせて利用することができます。
また、イメージファイルからフローストレスカーブを数値化することや、異方性材料(HillまたはBarlatモデルがベース)も扱えるようになりました。これにより、板状の製品から塊状のもの(SheetからBulk)まで、幅広い領域の計算を弾塑性(Elastic-Plastic)で扱うことができます。
新しい熱処理モジュール(オプション)
Simufact.forming11.0で新しく追加された熱処理モジュールでは、加熱から冷却までの熱処理工程に対して、より詳細な設定が行えるようになりました。鉄鋼材料(SUSを除く)では、熱処理工程で発生する相変態現象を取り扱うことができ、最終的な焼入れの状態、硬度や残留応力の正確な計算が可能です。熱処理計算は、材料物性計算ソフトウェア"JMatPro"で作成した材料データを用いることで比較的容易に行うことができます。
Simufact.forming11.0では、新たに"JMatPro"とのインターフェースが取られており、ここから取得した各フェーズ(相)の特性データを基に熱処理計算を行うことができます。
プリ・ポストプロセッサの改良・強化


プリ・プロセッサでは、プロセスメニューの改良や新しいプロセスのサポート、型や工具の位置決め機能の改良やCADインターフェースCADfix8.1 SP2 のサポートなどを行っています。またポストプロセッサでは、新しい計算結果として、表面変化率、フェーズ(相)分布(オプション)を表示できるようになりました。平面ひずみ結果の3D表示、カット表示の改良、別々のプロセス結果を同一ウィンドウ上に表示できるようなTHSプロットの改良なども行われています。

FEソルバーでのDDM機能の改良(オプション)

DDM分割例

DDM分割例
DDM(Domain Decomposition Method、領域分割法)は、FEソルバーで使用されている並列処理の方法で、計算対象をいくつかの領域に分割し、各領域を別々のコアで計算させる機能です。これまで3Dの場合、ボディごとに限られていたDDMの利用制限がなくなりました。
また、パーティクルやフローライン、スプリングなどもサポートできるようになりました。近年、複数コアを搭載したハードウェアが身近になり、DDMの利用で、より短時間で計算結果が得られるようになっています。お客様がお手持ちのハードウェアの性能を最大限に生かすことができるように、NDESではDDMオプションを積極的に活用いただける環境をご提案いたします。
おわりに
「鍛造成形シミュレーション」から、「メタルフォーミングシミュレーション」へ、そして「プロセスチェーンシミュレーション」を目指してSimufact.formingは日々進化を遂げています。国内外を問わず、幅広い分野で利用されているSimufact.forminおよび新機能について、お気軽にお問い合わせください。
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