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季刊誌
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No.85 | システム紹介
金属積層造形シミュレーションシステム
「Simufact.additive」のご紹介
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
技術開発本部 エンジニアリングシステム統括部
第二技術サービス部
第一CAEサービス課 出木野 敦

はじめに

近年、"3Dプリンター"として積層造形システムが急速に普及しており、樹脂材の積層造形システムは実用用途だけでなく、個人が趣味の目的で活用できるまでになってきました。

図1 金属材の造形サンプル
図1 金属材の造形サンプル

金属材の積層造形システムも、これまでは試作品やワンオフ部品といった一品生産に用いられていたものが、小ロット品の製造や、他の製造プロセスからの移行という量産用途としても活用されるようになってきました(図1)。

3D形状データを入力するだけで製品ができる積層造形システムですが、実際に製造を行った場合には、「造形中に造形不良で機械がエラー停止する」「入力データどおりの製品ができない」「寸法精度が出ない」といった問題が少なからず生じます。これは量産品の製造プロセスとしては大きな問題です。

こういった問題を解決するソリューションとして2016年11月にSimufact社からSimufact.forming、Simufact.weldingに次ぐ製造プロセスシミュレーションシステムとして金属積層造形専用のSimufact.additiveがリリースされました。

今回はこのSimufact.additiveをご紹介いたします。

Simufact.additiveでできること

Simufact.additiveは以下のプロセスについてのシミュレーションが行えます。

・積層造形プロセス
・ベースプレートからのカッティングプロセス
・サポート除去プロセス
・熱処理プロセス
・HIP(熱間等方圧加圧)処理プロセス

これにより、実際の造形プロセスに忠実なシミュレーションが可能となり、造形中や最終製品の変形、残留応力などを高い精度で予測できます。

シミュレーションのコアとなるソルバーには他のSimufactプロダクトと同様に非線形解析では定評のあるMSC Marcをベースとしたソルバーを搭載し、解法として固有ひずみ法を採用することで精度と計算速度を両立させています。

また、サポート構造の自動生成機能や結果形状のCAD出力機能が搭載されているため、設計へのフィードバックも容易です。

Simufact.additiveの特長

アプリケーションGUI

アイコンとシンボルで構成されたシンプルで洗練された専用のGUIを採用することで、シミュレーションソフトでありながら、誰でも簡単にモデルの作成から条件設定、計算実行、結果の評価を行えます(図2)。

図2 Simufact.additive専用のGUI
図2 Simufact.additive専用のGUI

シミュレーションモデルの作成

図3の作成フローのようにStep by Stepでモデルを作成します。では、フローを簡単に説明します。

図3 シミュレーションモデルの作成フロー
図3 シミュレーションモデルの作成フロー

・Projectの作成

造形機(造形領域)の設定とシミュレーション対象とする造形プロセスを選択します(図4)。

図4 Projectの作成画面
図4 Projectの作成画面

・Componentsの作成

製品形状とサポート形状のCADデータを読み込みベースプレート上に配置します。STLデータに対応しているため造形機に入力したデータをそのまま読み込ませることができます。

また、サポートの自動生成機能を活用すると、サポート設計前の製品についてサポートの検討を行えます。

造形品の材料は付属のSimufact Material Libraryに主要な造形材料が収録されています。

・Processの条件作成

ここではシミュレーションの条件を作成します。レーザー照射パラメーターや積層厚といった造形パラメーターをそのまま入力することでシミュレーションの条件を作成できます。

・VoxelMeshの作成

シミュレーションに不可欠なメッシュ作成は、メッシュサイズを入力するだけで自動的に最適なメッシュが作成できます。

計算

非線形構造解析で定評のあるMSC Marcソルバーをベースとした専用ソルバーを用い、Domain Decomposition MethodsとShared Memory Parallelizationの二つの並列計算テクノロジーで高速かつ安定したシミュレーションが行えます。

結果表示

モデル作成からGUIを切り替えることなくシームレスに結果を表示できます。

また、計算中もリアルタイムで結果が更新されるため、計算完了を待つことなく不具合の要因がないかを確認できます(図5)。

図5 結果を表示したGUI
図5 結果を表示したGUI

シミュレーション条件決定の支援機能を搭載

図6 キャリブレーション機能
図6 キャリブレーション機能

Simufact.additiveにはシミュレーション条件決定の支援機能として、シミュレーション条件のキャリブレーション機能を搭載しています(図6)。これはSimufact.additiveに収録されているテンプレートモデルを使って実際に造形と計測を行い、その計測データからシミュレーション条件を算出する機能です。

このキャリブレーション機能を活用することで、ソフト導入後すぐにシミュレーションを行うことができます。

おわりに

私たちは20年以上にわたりEOS社のパートナーとして積層造形システムを活用いただくためのご提案とサポートを行ってきました。今回Simufact.additiveが加わったことにより、積層造形システムでさらに高品質の製品を製造するためのご提案とサポートができる環境が整いました。

すでに積層造形システムを活用されている方も、導入を検討されている方も、ぜひ一度下記または担当営業までご連絡ください。

お問い合わせ先

株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
ビジネスインテグレーション事業本部
ソリューション企画室 CAEソリューション部 営業課
電話 03-5711-5358

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