人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.95 | システム紹介
メタルフォーミングプロセスシミュレーションシステム
Simufact Forming 16.0 のご紹介
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
製造ソリューション事業本部
ソリューションビジネス事業部
CAEソリューション部 第一サービス課 廣川 啓

はじめに

本項では、メタルフォーミングプロセスシミュレーションシステムSimufact Formingの最新動向をご紹介いたします。

Simufact Formingの新機能

Simufact Formingは現在、最新バージョンとして16.0を提供しています。主な新機能を以下に示します。

  • 新しいプロセスタイプの追加(誘導加熱、浸炭)
  • モデル形状のチェック機能
  • 結果評価機能の追加と改良
  • 境界条件設定機能の見直し

新しいプロセスタイプの追加(誘導加熱、浸炭)

図1 誘導加熱の計算事例
図1 誘導加熱の計算事例
(クリックすると拡大画像が表示されます)

誘導加熱

既存の「加熱」においては、ニアコンタクト機能を使った熱伝達による昇温を計算できましたが、新たに加わった「誘導加熱」では、電磁誘導による高周波加熱を再現できます(図1)。すべてのアプリケーションモジュール(基本機能:HUB)で使用可能です。

図2 浸炭の計算事例
図2 浸炭の計算事例
(クリックすると拡大画像が表示されます)

浸炭

「浸炭」がアプリケーションモジュール「熱処理」に加わりました。炭素雰囲気中における熱処理で炭素濃度が変化する様子、およびそれに伴う材料プロパティの変化が確認できます(図2)。浸炭させたくない領域(ペースト塗布など)も設定できます。「浸炭」を使用するには、別途ライセンスが必要です。

モデル形状のチェック機能

図3 モデル形状のチェック機能
図3 モデル形状のチェック機能
(クリックすると拡大画像が表示されます)

インポートしたモデル形状データをチェックする機能が搭載されました。これまではモデル形状にエラーがある場合でも、GUI上での確認が極めて難しいケースがありました。16.0からは、メッシングあるいは計算中に不具合を引き起こす可能性がある形状エラー部位をハイライトできるようになりました(図3)。

結果評価機能の追加と改良

結果評価のための各種機能の追加および改良が行われました。ここではその代表として「"形状の比較"機能」、「3Dセクターの展開」、「ポストパーティクル」をご紹介いたします。

図4 「形状の比較」機能
図4 「形状の比較」機能
(クリックすると拡大画像が表示されます)

「形状の比較」機能

計算結果の形状と成形後のCAD形状(あるいは、ほかの参照形状)を簡単に比較できる「形状の比較」機能が搭載されました(図4)。

図5 3Dセクターの展開
図5 3Dセクターの展開
(クリックすると拡大画像が表示されます)

3Dセクターの展開

対称性を考慮してn分の1モデルとした3次元モデルについて、その計算結果をフルモデル表示にして評価できるようになりました(図5)。また、n分の1モデルの計算結果をフルモデルに拡張して、次工程の計算に利用することもできます。

ポストパーティクル

2次元モデル・3次元モデル双方において、計算後、素材およびデフォーマブルダイに対してパーティクルを作成できるようになりました。

境界条件設定機能の見直し

図6 設定できる境界条件
図6 設定できる境界条件
(クリックすると拡大画像が表示されます)

これまで実装されていた境界条件の設定機能が見直されました。15.0までのオーバーラップを除く境界条件機能は、「ボリュームメッシュの直接作成」で作成したデフォーマブルダイにしか使用できませんでしたが、16.0よりユーザーが作成したすべてのメッシュを構成するノードに対して使用できるようになりました。16.0にて設定できる境界条件は、「固定変位 (Fix displacement)」「ノードを保持 (Hold nodes)」「荷重を適用 (Apply force)」「オーバーラップ (Overlap)」の4つです(図6)。

この中で、特に型締めの計算において有効な「ノードを保持」機能の使用例をご紹介いたします。型締めの計算を行うと、インナーの外径面が締め付けられることで、インナーの内径面の寸法が当初の寸法(設計寸法)よりも小さくなり(図7)、その後続けて成形計算に使用する場合は、計算結果に影響を及ぼします。これを避けるために、型締めの計算時にインナーの内径面を構成するノードに対して「ノードを保持」を使用すると(図8)、型締めの影響で発生する応力分布に影響を及ぼすことなく、内径面の寸法を維持できます(図9)。

図7 型応力計算結果(「ノードを保持」使用せず)
図7 型応力計算結果(「ノードを保持」使用せず)
(クリックすると拡大画像が表示されます)
図8 内径面への「ノードを保持」の設定
図8 内径面への「ノードを保持」の設定
(クリックすると拡大画像が表示されます)
図9 型応力計算結果(「ノードを保持」使用)
図9 型応力計算結果(「ノードを保持」使用)
(クリックすると拡大画像が表示されます)

おわりに

新バージョン16.0は、本項でご紹介した以外にもさまざまな新機能が追加されています。また、従来の機能の安定性などの改善も図られています。ご興味がございましたら、ぜひとも担当営業までご連絡ください。

関連するソリューション

関連するソリューションの記事

2021年07月10日
メタルフォーミングプロセスシミュレーションシステム
Simufact Forming 2021のご紹介
2021年07月10日
4事業部のご紹介(2)
製造ソリューション事業部
2020年01月01日
Simufact RoundTable Japan 2019のご報告
2019年01月01日
Simufact RoundTable Japan 2018
開催のご報告
2019年01月01日
CAD/CAMシステムオンラインサポートサイト
e-support リニューアル公開のお知らせ
2018年01月01日
Simufact RoundTable 2017開催のご報告
2017年04月01日
金属積層造形シミュレーションシステム
「Simufact.additive」のご紹介
2017年01月01日
スロッシング予測に対するCAEの適用
2016年10月01日
Simufactプロダクトにおける
新機能のご紹介
2016年07月01日
第1回 名古屋 設計・製造ソリューション展
出展報告
2015年07月01日
トータルソリューションのご提案(4)
PDMを活用した鍛造解析向けトータルソリューション
2014年05月14日
Simufact日本駐在事務所の開設について
2014年01月01日
メタルフォーミングプロセスシミュレーションシステム
Simufact.forming
溶接シミュレーションシステム Simufact.welding
のご紹介
2013年04月01日
岩手大学における金型技術の研究教育 
金型技術研究センターと産学官連携[その2]
2013年01月01日
岩手大学における金型技術の研究教育 
金型技術研究センターと産学官連携[その1]
2012年10月01日
メタルフォーミングプロセスシミュレーションシステム
Simufact.forming 今後の方向と新バージョンのご紹介
2009年10月01日
メタルフォーミングプロセスシミュレーションシステム
Simufact.forming v9.0と事例のご紹介
2008年10月01日
メタルフォーミングプロセスシミュレーションシステム
Simufact.formingのご紹介
2007年10月01日
メタルフォーミングプロセスシミュレーションシステム
Simufact.forming 8.0のご紹介