オンプレミス型とクラウド型を有効活用
福岡県南部の八女地方は、八女古墳群の遺跡や歴史、自然があふれる土地であり、日本茶トップブランドの八女茶の栽培が盛んな気候風土に恵まれた地域でもあります。この八女郡広川町に本社を置く株式会社中島田鉄工所様は、ねじ・ボルトを製造するヘッダーやフォーマーという圧造機の業界屈指のメーカーです。ねじの工程設計に欠かせない解析ツールとしてSimufact Formingを活用しています。また現在、Simufact Formingのオンプレミス型の他に、繁忙期の対応としてクラウド型のSimulation-Spaceを利用しています。
POINT |
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1. オンプレミス型とクラウド型の2つの解析ソリューションを併用 |
2. 繁忙期の対応と人材育成で活躍するクラウド型の解析ソリューション |
ねじ・ボルトを高速生産するヘッダー・パーツフォーマーを製造
あらゆる分野の製品に組み込まれている、ねじやボルトを高速生産するためのヘッダーやフォーマーの専門メーカーである中島田鉄工所様は、1911年(明治44年)の創業から113年にわたり、ものづくり産業における進歩発展の一翼を担い続けています。ねじやボルトといった締結部品は、携帯電話やパソコンなどの精密機器から、自動車や航空機、さらには時計のムーブメントやデニムのリベットなどに使われています。これらの金属パーツは超小型化が進み、材料は鉄以外のチタンなどの新素材が用いられるようになり、さまざまな要求に応えた圧造機を開発することが同社の強みとなっています。主力製品であるヘッダー・パーツフォーマーの出荷は、2024年4月には累計10,000台を達成しています。また、直径2.5ミリ以下のヘッダーは、国内シェア80%、世界シェア50%を占めており、長年培ってきた優れた技術と確かな信頼の証です。一般的に1ダイ2ブローがヘッダーで、それ以上の数で2ダイ3ブローになるとフォーマーと呼ばれています。
海外にも活躍の場を広げる同社は、1970年代から海外輸出をスタートさせ、2000年に独自の販売網を築くとともに、2003年にドイツ、2005年にロサンゼルス、2011年に中国へ拠点を開設。現在では、タイ、韓国、オーストラリア、イタリアなど17カ国に販売代理店を置いています。
同社のヘッダー・パーツフォーマーの特徴について、技術本部部長の案納隆様に伺うと「材料の直径が大型機であれば16ミリ、小型機であれば1ミリ弱といった幅広い製品を作っています。今、力を入れているのが、お客さまからの引き合いが増えているマイクロフォーマーの頭文字をとったMFシリーズです。当社が一番得意とするフィンガーレストランスファーという機構を採用している機械で、頭が四角や小判状のものだとか、パンチ側とダイ側で芯がずれているような異形や短少などの特殊なパーツに対応できます。フィンガーレストランスファーは、部材の搬送を爪状のフィンガーを使わずに、金型の角度を合わせておいて金型同士で部材の受け渡しを行います。フィンガーの開閉のタイミングを合わせたり、パーツの短い部分をつかんだりする必要がなく、フィンガー搬送よりも加工しやすいことから、問い合わせの件数は増えています」と話します。
Simufact Formingが活躍するヘッダー・フォーマーの機種選定
機械の設計・製造から据え付け、アフターサービスまでトータルでサポートする同社が重視するのが、ニーズに合わせた機種やオプションの提案です。解析を担当している技術本部金型設計課の松井健治様は、適切なヘッダー・フォーマーの機種選定を行う場合にSimufact Formingが活躍すると言います。「既にヘッダー・フォーマーを導入されているお客さまは、自社で金型の設計・製作を行われ、適している機種に目星をつけられることもありますが、新規でご検討されるとき製品図面をご提供いただき機種選定を依頼されます。その製品図面を元に何段で成形できるのかSimufact Formingを使って検証して、適切な機械をご提案しています。Simufact Formingの導入以前は金型を実際に作ってテストを繰り返していましたが、導入後はその工程をシミュレーションで再現することで、工期の短縮とコストの削減が実現できました。機種選定では、どれぐらいの圧造力が必要なのかが重要です。例えば、小さな機械でキャパシティを超える大きな力が必要となり機械が壊れる恐れがあるとか、材料がつぶせないとか、解析によってさまざまな成形の要素を算出、合算し、機械のスペックに合っているのかを確認しています。また、製造可否の検討依頼にも対応しています。このようにSimufact Formingで得られた解析結果を元にご提案しています」
最近では、お客さまにオンラインで解析結果の画像を見せながら打ち合わせを行うこともあるそうです。
オンプレミス型とクラウド型の併用で解析の効率化と人材育成を
同社には、従来のオンプレミス型のSimufact Formingに加えて、Simufact Formingをクラウド環境で利用できるSimulation-Spaceという従量課金制のクラウド型解析ソリューションサービスがあります。
松井様によると、Simufact Formingのオンプレミス型とクラウド型を併用するメリットは大きいと言います。
「本社のSimufact Formingは常にフル稼働状態が続いているため、繁忙期で追加案件の解析を行いたい場合に、クラウド型のSimulation-Spaceで対応しています。一時的に2台のSimufact Formingを利用できるので、追加案件の対応もスムーズに行えます。一方で、退社する前に複数の解析を直列でつなげて、最初の計算が終わったら次の計算に入るという段取りにして翌朝に結果を確認しています。計算時間が長くなる複雑な形状の場合や検討するパターン数が多い場合は、クラウド型を用いて並列に計算させることで解析結果が早く得られるようになります。現在は常時2台分のSimufact Formingをフル稼働させるほどではありませんので、初期投資が極力抑えられるクラウド型のメリットは大きいと思います」
クラウド型を活用するもう一つの目的として、人材育成と業務の分散化を目指していると案納様は話します。
「東京にサービスステーションの部門があり、金型設計とメンテナンスサービスを兼任している社員がいます。これから集中して勉強する期間を設ける予定なので、そういった場合でも、使いたい時に使った時間分の料金だけで利用できるクラウド型であれば、勉強期間の利用料金だけ負担すればいいのでコスト的にもメリットがあります。今後はお客さまより東京に機種選定の依頼が直接あった場合、Simufact Formingを使って対応してもらいたいと考えています。ゆくゆくは本社にも解析ができる若手の社員を採用し、案件を分担することで効率の良い解析が行える体制を目指したいと考えています。そして、解析業務を行える社員が増えてくると、クラウド型から常設のオンプレミス型へ移行する検討もあるかと思います」
計算時間の短縮に大きな期待クラウド型Simulation-Space
松井様に長年ご利用いただいているSimufact Formingについて伺うと次のように話します。「私が解析担当になったとき塑性加工は専門ではなかったのですが、Simufact Formingは直感で使えるツールだと感じました。扱いやすい仕様になっているので気軽に使うことができると思います。導入当初は、1台のパソコンでモデリング、解析を行っていたので、解析計算を実行するとパソコンに負荷がかかり固まって動かなくなることが多々ありました。現在は、2台のパソコンでモデリングと解析に分けています。クラウド型については、Simufact Formingの動作環境がパソコンからクラウド環境に置き換わるだけで、オペレーションは同じなので違和感なく使えています。また、クラウド型を利用するためのサービスの開始、終了などの手続きは、一般的なスマートフォンの料金管理と同じようにオンラインで簡単に行えるので便利です。NTTデータエンジニアリングシステムズが提供するクラウドサービスは良い取り組みだと思います」
クラウド型のSimulation-Spaceをご利用いただいている同社より、サーバー上のCPUを16コア(ヘキサデカコア)で使えないか、というご要望がありました。
松井様によると、「オンプレミス型で使っているパソコンは4コア(クアッドコア)のCPUです。クラウド型も最初は4コアでスタートしたのですが、計算のスピードアップを図るため16コアに増やしてもらいました。理論上では、16コアくらいまでは倍々に近いところで速くなるはずです。計算は1~2時間で終わるものもあれば、夕方に設定して帰って翌日朝でも終わっていないものが結構あります。それが、16コアになれば計算時間もぐっと短くなるので、どれぐらいの案件に対応できるのか期待しています」と話します。細かな実証はこれからとのことですが、クラウド型の有利な点に期待を寄せていただいています。
もっと多くのお客さまに解析の有効性を広げたい
現在解析を行っているのは、お客さまの検討時に当社からご提案するための検討ツールだと話す案納様ですが、必要性をもっと知ってほしいと考えています。「解析の有効性がお客さまにもっと認知されるようになれば、解析そのものが極めて有効なビジネスの手段となり得ますし、結果として、お客さまにとっても製品に対するさらなる自信につながることになります」この言葉からも、実際に解析結果を活用してきた立場から今後への期待が伝わってきます。
私たちNTTデータエンジニアリングシステムズは、解析を中心とするさまざまなソリューションのご提供を通して、中島田鉄工所様の事業発展に向けてお役に立ちますよう尽力いたします。
中島田鉄工所様は、主力であるヘッダー・パーツフォーマーの他に宇宙関連事業にも取り組まれており、東北大学との共同研究として人工衛星のデブリ化を防ぐFREEDOMの製造を担当しています。2024年2月には、JAXAのH3ロケット試験機2号機(H3TF2)で打ち上げられた小型人工衛星にも搭載されています。
今回ご紹介した「Simufact Forming」のクラウド型の詳細はこちらをご覧ください。
クラウド型解析ソリューション「Simulation-Space」(外部サイトへ移動します)
会社プロフィール
株式会社中島田鉄工所
創業 | 1911年(明治44年)5月 |
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設立 | 1951年(昭和26年)10月 |
資本金 | 4,500万円 |
所在地 | 福岡県八女郡広川町大字日吉1164-4 |
従業員数 | 138名(2024年3月現在) |
国内拠点 | 名古屋テクニカルセンター、大阪営業所、東京サービスステーション |
事業内容 | ●ヘッダー・フォーマーの設計、製作、販売、アフターサービス ●宇宙関連事業 |
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