人とシステム

季刊誌
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No.31 | お客様事例
Space-E CAA V5 Based Mold Design Add onで
型設計の効率アップを図る

株式会社清光金型様は、独自のノウハウと最先端の技術力によって、高い生産性と高品質の射出成形用金型を設計製作されています。常に時代に合ったユーザニーズに対応すべく研究開発を続け、高度な技術力を蓄積されています。今回は、Space-E CAA V5 Based Mold Design Add on(以下Space-E/Mold V5)を導入された背景と運用についてのお話を中心に、経営企画本部 社長室室長 常務取締役 天田誉哉様、開発技術・管理担当 部長 栗原稔様、CAM課 課長 和佐田直明様、設計課 課長代理 岩崎正和様にお伺いしました。

事業概要

人物の写真
経営企画本部 社長室室長
常務取締役
天田 誉哉 様

清光金型は、昭和38年に創立して、今年で40周年を向えました。設立当初は地場メーカ様の自転車の発電ランプなど、手のひらサイズの金型製作から始めまして、現在では10トンクラスの金型が製作できるまでになりました。製作方法として1万回転以上の加工機を主流としています。これは、お客様の要望に合わせて金型設備を整え、3次元CAD/CAMも導入してきましたので、その要望の多い3次元形状ものを得意とするような設備になっています。

射出成形に関しては、昭和45年に設立したセイコーレジンという別会社で行っており、ここには30トンから1050トンまでの成形機があります。

清光金型では、外販金型と社内成形の金型を半々の割合で製作しています。主な外販金型は自動車関係で、ドアミラーの樹脂部は得意分野です。

社内成形品は地場産業のメーカ様の製品が中心で、自動販売機、家電製品、遊技機器などの成形を行っています。現在ではデザインインとして開発中の段階から参加させていただき、金型設計、製作それから成形まで一貫生産の受注をいただいています。また、生産コストダウンを目的としたユニット部品としての受注を行っていて、その組立てまでを行う生産体制になっています。

導入の背景

【GRADEを導入する】

1996年頃のフライス加工はNCと倣いが半々でしたが、加工精度向上のためにNCへの全面移行を考えていました。しかし、デジタイジングしても面をはるCADはありましたが、力不足のため苦労していました。その当時、GRADEは面作成が容易でしたので、それが導入決定の第一の要因でした。実際、客先からデータをいただいても、そのままでは使用できなかったので、それを修正するためにもGRADEが必要でした。輸出用のドアミラーをクレイモデルから作って欲しいという要望があり、HZSの協力を得てGRADEでCADモデルを作成しました。今思うとGRADEは良い選択だったと感じています。

また、同時期にCATIA V4を導入しています。

【GRADEとCATIA V4の役割】

人物の写真
開発技術・管理担当
部長 栗原 稔 様

基本的にはCATIA V4は型設計に使っています。ただ自動車関係に関して、CATIAでどうしても扱いにくい面データがあるのでGRADEで処理していました。

CATIA V4とGRADEを導入した1996年頃は、CAM主体のデジタル技術が型屋さんでは主流でした。それが2000年頃からソリッドデータに移行して、CATIA V4を中核として金型設計を行い、サーフェイスのアシストとしてGRADEを使うという役割に変ってきました。それから2001年には、それまでの2次元での設計不良の対策として、CATIA V4で3次元化に取り組みました。

【CATIA V5を導入する】

CATIA V4からV5に移行したのは、CATIA V5になって、デジタルモックアップとしてのアセンブリの技術が圧倒的に強くなったということです。弊社としてもアセンブリはどうしても必要な技術でした。それからCATIA V5では、点やサーフェイス、ソリッドなど、全てが一体化され、本当の意味でデータベースが揃いました。これだけでもCATIA V4よりもV5は毅然としたベースの違いが出ています。それとCATIA V5にはナレッジウエアが組み込まれました。CATIA V4では異なっていたサーフェイス、点などのデータ言語が全て統一されナレッジに組み込まれたということで、データを組み上げるための基本的なロジックというのがV5 R8で揃ったと判断しました。

2002年にCATIA V5 R8の検証を始めて、2003年にCATIA V5 R9を2台導入しました。

【CATIA V5で新規立ち上げ】

弊社ではCATIA V4とV5は全然別の世界と考えていますが、他社においてもCATIA V4を使っているのであればV5に移行するのではないかと思います。製品設計においては、CATIA V4とV5は今の段階で歴然とした力の差がありますから、後は既存のデータベースやライブラリを各メーカがどこまで移行できるかということになります。弊社では移行するのではなくて、V5で新規立ち上げと考えていましたので、V4のデータは全く移行せずにゼロからのスタートにしています。

【Space-E/Mold V5を導入する】

CATIA V5での製品設計については、標準機能で十分対応できます。ただ、問題はモールドの部分です。モールド設計は、反復作業が多く本当に設計者が判断して細工するのはごく一部だと思っています。いろいろな部品をどこに配列していくかというのがモールド設計の原点になっているので、CATIA V5ではモールド部品が仕様に合っておらず、使い勝手の悪い構成になっていました。

そのためCATIA V5の標準部品ライブラリを全て作り直すことにしました。当社独自の部品ライブラリですので、ナレッジやマクロの作り込みがどうしても必要です。ただ、当社の規模では、業務は兼業で、新規開発もする、量産もする、ソフトウェアの開発もするということを一緒にやっていく必要があり、どうしてもカスタマイズのサポートが必要でした。そこで、Space-E/Mold V5を導入してカスタマイズをHZSにお願いすることにしました。

このカスタマイズが実現できれば、後で多大な効果が期待できます。

CATIA V5の画面 CATIA V5の画面
CATIA V5の画面 設計の風景

今後の展開と効果

【部品ライブラリの作成】

標準部品の中で普段使用する一般部品は、CATIA V5R12にSpace-E/Mold V5がのるまでを目標に作成しています。普段使う部品の7~8割(約300部品)はサポートしていくつもりで今作り込んでいます。

カスタマイズの過程でSpace-E/Mold V5への要望もありますので、ハードルを越えながら着実に進んでいます。モールド部品のパターンは千差万別なのですが、データ構築としては同じようなものです。たとえば、丸ピンの先端形状が少し違うだけですから、あるパターンができるとそのデータを数十パターンで使い回しができるということもあります。もちろん1種という固有のものもあります。

HZSに協力していただいて、突き出しピンの部品ライブラリに1メーカを追加しました。何が違うのかというと、部品を配置した後にツバの形状を一部変形させます。標準部品を組み込んで、一部を細工してから、そこにはめるというのが一般的です。しかし、標準のCATIA V5は形状があるだけで、そこに穴を配置したからといって穴にどういう細工をするのか、その部品にどういう細工をしたいかというのは基本的な概念にはありません。

【アセンブリのデータベース】

人物の写真
CAM課
課長 和佐田 直明 様

部品ライブラリをカスタマイズして作り込んだ後は、アセンブリのデータベースを作る予定です。今、アセンブリの一部を作ってはいるのですが、どうしても部品ライブラリが完成しないとデータベースを作れません。部品ライブラリは、アセンブリの部品、ユニット設計に移るための基礎になります。このアセンブリの部品ライブラリができたときに大幅な作業時間の短縮というのを見込んでいます。

実際は、2次元設計で型図を作る方が早いのですが、その後の工程や直しの工程では3次元設計が断然早く、設計ミスの削減という観点からも3次元設計の方が効果が大きいです。今、通常の業務では最低2~3人で行うリードタイムをCATIA V5では、ほぼ1人でできるようになり、これがR12では1/3の短縮を予定しています。

【ナレッジによる設計支援】

アセンブリデータベースの構築後は、CATIAのナレッジをもっと組み込んで設計の効率化を図っていきたいと考えています。

例えば部品の入れ替えのロジックが、まだV5R11レベルでは存在しないので、V5R12への要望をあげています。V5R11では、ルールに従って部品を入れ替えていくという概念がないので、部品の変形はできるのですが、部品の入れ替えはできません。ただ、アセンブリの世界では当然サポートするべき機能なので要望としては受け入れられると考えています。

CATIA V5の画面 CATIA V5の画面

【技術進歩はデータベースに反映】

データの使いまわしというのは、今後どんどん考えていきたいと思います。ただ、今までいろいろな意味で、標準化して検討してきたのですが、1年前の型は、1年間の技術進歩がありますので、使うことはあり得ません。進歩した技術は、常に部品やアセンブリのデータベースに反映させてCADに今の手法を入れていこうと考えています。

【チーム設計】

基本的にはチーム設計を考えています。設計といっても図面だけ描いていれば用が足りるというわけではないので、設計者が3次元設計をしたり、Excelで部品表などの資料を作ったり、簡単なCAMにおとしたりと、必ずしも3人いたら、CATIAが3台必要とは思っていません。そのためにライセンスはネットワークで、マシンのスペックさえあれば、社内のネットワークでどこでも使えますので、必要な人がCATIAを立ち上げればいいと思います。

【CATIAを習得するには】

人物の写真
設計課
課長代理 岩崎 正和 様

CATIAは裏の流れが分からないと使えないと思います。例えば、パッドを作成しましたという説明はありますが、パッドを作成したときのスケッチ平面は何を意味するのかということを理解していないとCATIAは使えません。これはV4のときからそうで、ソリッドモデラー、パラメトリックの世界は、ここに点を置いたというのは何を意味するのかを理解しないとCATIAを使いこなせないと思います。ラインを1本動かせば、モデル全部が変形できて、それがアセンブリ構成されていれば、アセンブリ全体の点1個の数値を変更すれば全て変更できます。家計図のような構成をしっかり理解できれば、本当の意味でのCATIAを効率よく使えるようになります。始めはその一線を超えるまでが大変です。

HZSについて

当社のような会社規模の要望を聞いて細やかなサポートをしていただけると期待してHZSを選びました。CATIA V5を使って金型設計、製作の効果をあげたいと考えていますので、本当にHZSが使う側を理解していただいて、そこで意見交換することでカスタマイズを含めて良い方向に進展していきたいと思っています。

CATIA V5の金型設計で「お客様に選ばれるため」に生き残りをかけて当社独自のカスタマイズを行い、他社より一歩先の技術構築をしたい。これを行うためにはHZSの協力は不可欠です。

是非、細やかなサポートをお願いします。

おわりに

CATIA V4とV5の違いやCATIAを使いこなすための考え方などのお話をお伺いでき、大変勉強になりました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社の写真
本社工場

株式会社 清光金型

本社 群馬県佐波郡境町大字小此木458-1
工場 群馬県佐波郡境町大字下武士661
創業 昭和38年5月20日
資本金 9,620万円
従業員 32名
事業内容 合成樹脂金型設計製作、省力化機器設計製作
製品の写真製品の写真
自動車のドアミラー
製品の写真
洗濯機のフタ部分
製品の写真
カップの自動販売機

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