人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.33 | お客様事例
GRADEからSpace-E CAA V5 Basedへ

株式会社朝霞工房様は、デザインから試作さらに製品化という、「モノ作りを一貫として行う」ということをコンセプトに、創業以来30年にわたり研究開発し、蓄積してきた「FRPによるモデルの試作、加工」技術の集大成として、エコランカーの制作および販売にも取り組まれています。常に「お客様のニーズ」を念頭に置かれ、無限に広がるお客様のご要望にお応えすべく日々研究を重ね続けられています。

今回は、Space-E CAA V5 Based(以下Space-E V5)を導入された背景と効果を中心に、代表取締役 西牧敬三様、専務取締役 西牧拓朗様、営業部長 藤林宏康様、佐々木誠司様にお伺いしました。

事業概要

人物の写真
代表取締役
西牧 敬三 様

「モノ作りを一貫として行う」というコンセプトのもと、低コスト・高品質のFRP製品製作、バイク・自動車・電子部品等の試作開発&少量生産、エコランカーの制作・販売を行っております。特に、自動車、オートバイのデザイン外装・内装の樹脂部品が中心となっています。

お客様からデータをいただいて、CADデータの作成、モデル製作、FRP、真空注型、真空成形、光造形など、総合的なモデルメーカとして事業を展開しています。

昭和47年にFRPの試作メーカとして創立し、創業以来、33年にわたる研究開発で技術を蓄積してきましたので、FRPの分野においては、非常に優れた技術を持っていると自負しています。

大手自動車メーカさんのエコカーの製作にもかかわっていましたが、このFRPの成形技術を応用し、カーボンモノコックボディーで軽量化を図った完全にオリジナルのエコランカー(地球環境生態系に優しい低公害・低燃料・ 低排出ガス車)の制作・販売も行っています。

車一台分をクレイモデルで造形して、点群からデータを作成して面張りまでを行うシステムを関連会社のニュースタジオ(http://www.new-studio.co.jp/)で行っています。

Space-E V5導入の背景

【GRADE/CUBEの導入】

7年前に、CADを導入しようと検討を始めましたが、どのCADを導入したらいいのか迷い、一番の取引先であるタカギセイコーさんに相談に行きました。タカギセイコーさんが一番使われているGRADE/CUBEが良いのではないかというアドバイスをいただいて、GRADE/CUBEを導入しました。

GRADE/CUBEの良いところは、モデリングの性能が高く、測定データから自由曲面が張れ、自由度が高いということです。面の精度がよく、直彫りの金型データを作成できます。

他のCADとの互換性も非常によかったです。

【Space-Eの増設】

GRADE/CUBEを何年か使い、GRADE/CUBEに代わるCADの増設を検討し、Space-Eを導入しました。その後、GRADE/CUBEとSpace-Eの両方を使ってきました。

【Space-E V5の導入】

人物の写真
専務取締役
西牧 拓朗 様

トヨタさんのCATIA V5の導入で、自動車関係はCATIA V5の方に向いています。

ニュースタジオの方でも自動車メーカーさんとの取り引きが始まり、お客様と同じシステムを入れたほうが良いだろうということと、やはり何が何でも、CATIAを導入して、CATIAの技術力を強めていかなければならないということを感じていました。

たとえば、お客様の設計される方によっては、新データと旧データをレイヤーで何枚も重ねてくるのですが、データ変換をしてSpace-Eに取り込むと、レイヤーが自動的に省かれて古い面を見ていたということもありました。そういうトラブルを回避するためにもCATIAの生データでやり取りができた方がいい。V4で作ったデータをV5に持ってくるときも、結局はIGESで変換しなければならないのですが、同じシステムなので変換率が高くなります。

導入にあたり、CATIA V4とV5の入れ替え時期でもあり、V4を導入するのか、V5がいいのか非常に迷いましたので、HZSに相談をしてどういう状況にあるのかを聞きました。

CATIA V5や他のCADの検討も行いましたが、HZSとの今までのお付き合いと、使い慣れたGRADEというシステムの血をひいているということで、Space-E V5に決定し、現在使用しています。

Space-E V5での運用

取引先からデータをいただき、そのデータを検証して、加工データを作成し、削る作業に入ります。検証というのは、データがどのような状態できているのかチェックします。いろいろな取引先からさまざまなデータがきますので、加工しやすいようにデータを修正します。そのまま使えるようなデータはきませんので、分割を考えたり、ものによっては面を新たに全部作り直したりします。

【Space-E V5ではやり方、考え方を変える】

Space-E V5を導入後、講習を受けましたが、講習は基本的なことだけなので、最初は、GRADEと同じような方法で使っていました。四苦八苦しながら、実務をこなす中で、やり方、考え方を変えることによって、Space-E V5にスムーズに移行することができるようになりました。Space-E V5の使い方がわかってくると、こんなに簡単にできるんだということも多かったですし、マシンの性能も上がっていますから計算も速いです。でも逆に、GRADEではこんなことができたのに、どうしてできないんだということもありますが。

【加工データの作成】

Space-Eを使っていましたので、Space-E V5スタンドアローン版はSpace-Eのインタラクティブが使え、試作関係の場合は、すぐに立ち上げて加工データが作成できますし、インタラクティブ自体がすごく便利な機能なので、加工データはすぐに作成できました。

CATIAのCAMは複雑な形状の加工データを作れますが、操作も複雑になってしまい、失敗をすると作り直す作業に時間がかかってしまいます。

試作は金型と違って流れがなく、どのような状況になるのかわかりません。インタラクティブは簡単にできて、すぐにつけかえられるので、大変作業しやすく、一つ一つのパスを全部別々に使えるというのが一番やりやすいです。

ただ、Space-E V5は、2次元の機能がなく、2次元の作業にはSpace-Eが必要です。

Space-E V5導入後の効果

Space-E V5の導入は、今後の方向を見越した先行的な投資でした。前倒しにしなければいけないという感覚がありましたので、今うまく運用していて、先行投資をした判断に間違いは無く、前倒しでやっていかなければだめだということを実感しています。

【営業サイドの効果】

人物の写真
営業部長
藤林 宏康 様

取引先が、車関係ですので、CATIAのデータでくることが多く、CATIAのデータを読むのであれば、Space-E V5の方がやりやすいです。

Space-Eのときは、CATIAモデルファイルの変換率が良いといっても100%ではなく、IGESに変換するとレイヤーなどが全部同じ色になってしまいます。営業サイドからすると、お客様から何番のレイヤーの何色のところが今回の設計変更内容ですよと依頼がきますが、同じ色になってしまってわからなくなっていました。

Space-E V5では、そのままモデルデータを渡せば仕事ができますので、やり取りが楽になりました。データで判らないことがあるときも、レイヤーを参照できるのでスムーズに進んでいます。

【データの受け渡し】

仕事の出戻りが少なくなっています。以前ですと、データがうまく取れず何度も変換をしなおしてもらって、それで一日経ってしまうこともありました。IGESでデータを受け渡ししていると、うまくデータの受け渡しができなかったときに、どちらのデータが悪いのかよく判らず何度もやり取りをしていました。今はストレートにデータがきますので、そのようなことは無くなりました。

【履歴による設計変更】

画面例
履歴による設計変更

ドアにつけるロメントのようなもので、どのぐらいのRがいいかという検証をしました。

Rを指示して、次にそのRの値を変更すると、履歴が残っているので、簡単に形状を変更することができます。最初にもどってRを変えれば、そのとおりに履歴が全部変わるので、設計変更が楽にできます。

ただ、作業をしていると、どんどん動きが遅くなり、3時間ぐらいで、ほとんどメモリーを食い尽くしてしまいますが、CATIAの問題だから、仕方がないです。

ニュースタジオ

挿絵

55年前に車1台のクレイモデルを製作するために、ニュースタジオを設立しました。設計から、デザイン、モデリング、精密測定機による三次元測定、製品の制作に至るまでの工程を弊社において効率よく進めることができるため、デザイン面、機能面でより優れた製品をご提供しています。

しかし、設立当初は、クレイモデルだけではなかなか商売に結びつきませんでした。

しかし、クレイモデルをやり始めたことで、パーツ類に派生し、今までに培った技術と経験を生かし、世界でたった一つの自動車用カスタムパーツ(ワンオフパーツ)を、今まででは考えられなかった価格で提供できるようになりました。このようにして、仕事が徐々に変化し、違う分野にも参入しています。

マシニングなども24時間稼動できるという効果もでてきています。まだ工場にはスペースが十分ありますので将来的にNCマシンをもう1台入れようと考えており、広さがないと会社の発展はないなと感じています。

ニュースタジオは今は2人しかいませんが、人を増やしていきます。基本的にクレイモデル、CAD、NCマシンはニュースタジオ、FRPなどの手加工は朝霞工房と、仕事の内容によって分けていく予定です。

これからもニュースタジオは世界に通用するモノ作りの会社として邁進していきます。

今後の展開

当社がSpace-E V5をすでに導入しているので、お客様がCATIAを導入されるときに相談を受けることもあります。

Space-E V5を使うことによって、新しい設計の分野の仕事にも取り組んでいきたいと考えています。

当初ニュースタジオを建てたときも、今時クレイモデルなの、全部CAD上でできるのではないかという議論もありましたが、コンピュータを利用したデータ化と手作業でやるクレイモデル。

この手作業による技とコンピュータを利用したITの融合がどこまでできるか。試作屋の技術的なレベルが問われているとともに、勝ち残っていくための道であると考えています。

最初はやはりデータ化ということで、クレイモデルの作業は減っていきましたが、データだけではイメージが湧かず、スケールもわからないということで、今は逆にクレイモデルの仕事も増えています。

HZSへ

人物の写真
佐々木 誠司 様

クレイモデルからのモデリングを始め、お客様からいただいたデータの切削を含めて、Space-E V5は今、当社のメインCADになっています。足りない部分や、こういう機能が欲しい、というところを充実して、完成度の高いCAD、さらにそれを一歩二歩前へ行くようなCADにしていただきたいと思っています。

また、Space-E V5に2Dの機能を追加してほしいです。機能部品や取り付け部分は2Dからおこして、断面を3D上において、180゜、360゜回転して作成し、それを図面にして確認をします。

インターネットでも仕事が入るようになり、個人相手のお客様だと、2次元のCADを使っているところが多いです。お客様から、AutoCADを使っているのでDXFにしてほしいという要望も多いので、2次元にしないと渡せないという状況です。

金型に移行するデータならいいのですが、当社のように試作で、機械加工と手加工が同時に入るとなると、職人さんはCADを見てもわからないのです。

設計関係では3Dで物を作っていきますが最終的に紙の出図は必要です。そういうときに3Dを一旦2Dに落として現場サイドで見たり営業サイドのやり取りに使っています。今後、出図も少なくなり、2D機能も使わなくなっていくと思いますが、3Dと2Dを重ね合わせて確認しますので、欲しい機能でもあります。

データ化の方向へ進んでいますが、やはりまだ昔ながらの機械化できない部分というのがあって、そこに依存している仕事が非常に大きいのです。

CADに対するヒューマンインターフェイスというのは、2次元、紙図による出力というのもありますが、Darwinなど、また違う形でHZSが開発しているのであれば、それもいいと思います。

おわりに

今回の記事の中ではご紹介できませんでしたが、工業製品を超えた、我々の身近なもので、寸法のない形状に対する試作にも取り組まれています。完成された折には、ニュースになることと思います。

このような新しい技術への挑戦に私どものシステムを利用していただき、大変ありがたく感じています。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社の写真
本社工場

株式会社 朝霞工房

本社工場 埼玉県朝霞市膝折町3-2-7
創業 昭和47年4月(1972年)
会社設立 昭和53年5月
資本金 11,000,000円
従業員 12名
事業内容 トランスポーテーションデザイン(二輪車・四輪車等)、インダストリアルデザイン(一般工業製品)におけるデザインモデルの制作。
真空注型(シリコン型、FRP型等)
製品の写真
一般プラスチック製品
の試作開発
製品の写真
バイクの試作開発
製品の写真
自動車の試作開発
製品の写真
エコランカー

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