人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.61 | システム紹介
導入支援レポート(第8回)
Space-Eにおけるプレス金型向けユニット部品構築方法(1)
CAD/CAM統括部 営業企画部 導入支援グループ
橋口 淳一

はじめに

今回は、Space-E/Press (順送プレス金型設計向け・プレス工程設計向け)によるプレス金型における金型部品の作成方法をご紹介します。

プレス金型におけるユニット部品作成

図1 構造設計で使用するSpace-E/Pressの機能
図1 構造設計で使用するSpace-E/Pressの機能

プレス型の工程設計は、Space-E/Press プレス工程設計向けの専用コマンドを用います。また、構造設計は、Space-E/Press 順送プレス金型設計向けのユーザ部品やユニット部品の機能を用います。(図1)

「こだわり」と「わりきり」によるテンプレート部品作成

図2 ダイプレート部品構築における「こだわり」と「わりきり」
図2 ダイプレート部品構築における
「こだわり」と「わりきり」

テンプレート部品作成には、「こだわり」が必要です。
設計の試行錯誤や設計変更をスムーズにするために、テンプレート部品には、こだわった設計ノウハウを盛り込みます。

ただし、パラメトリックや拘束にこだわりすぎると、部品作成に工数がかかってしまいます。そこで、工数が多くかかる場合は、部品作成に「わりきり」が必要になります。ここでの「わりきり」とは、CADの機能を使って設計を行うことを意味します。たとえば、コマンドで位置を編集したり、部品の追加や削除をしたりすることです。(図2)

ダイプレートユニットの仕様

図3 ダイプレートユニットのダイアログと部品イメージ
図3 ダイプレートユニットのダイアログと部品イメージ
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

ダイプレートユニットの作成において、まず検討しなければいけないことは、構成する部品の種類と数です。

今回は、ベースとなる「ダイプレート」に「六角穴付きボルト」、「ノックピン」で構成するダイプレートユニット部品の構築方法をご紹介します。

ボルトの本数に関しては、2本、4本、6本と切り替わるように構築します。(図3)

ダイプレートのユニット部品を作成するポイントを以下にあげます。

  • 基準点の移動
  • ボルト、ノックピンの位置の変更
  • ボルトの本数の変更
  • 小物部品の移動(運用)
  • プレート穴の活動、非活動

六角穴付きボルトの位置

図4 ボルトの自動長さ調整
図4 ボルトの自動長さ調整

六角穴付きボルトは、「人とシステム」No.59 導入支援レポート(第6回)でご紹介したボルトを使用して、埋め込み量が変更されると自動的にボルト長さが変更できるようにします。

ボルトの位置は、すべての部品が均等に変更できるように作成します。

六角穴付きボルトの本数

図5 ボルトの本数変更
図5 ボルトの本数変更
図6 ボルトへの非活動索引付加
図6 ボルトへの非活動索引付加

ボルトの本数は、パラメータの値を切り替えることで2本、4本、6本と切り替えることができるようにします。(図5)

構築方法は、「非活動化索引付加」コマンドで、索引付加番号を作成し、ボルトの活動化・非活動化を切り替えるようにします。今回は、「CapScrewNumber:ボルト数」パラメータを利用します。

6本のボルトの内、中央に配置された2本のボルトは、6本の場合に活動化するので、「非活動索引付加」コマンドでCapScrewNumber=6を付加します。右上と左下のボルトは、4本以上の場合(4本と6本)に活動化するので、CapScrewNumber=4を付加します。(図6)

ノックピンの位置

図7 ノックピンの移動
図7 ノックピンの移動

ノックピンの位置をボルトの本数によって変更するには、オフセット量にIf文を盛り込みます。ボルトの本数が2本の場合は、ボルトのX距離と同等にします。4本と6本の場合は、ノックピンのX距離のパラメータとリンクします。(図7)

例:オフセット量に盛り込む式の記述
if(CapScrewNumber-2,DowelPin_PosX,CapScrew_PosX)

※ボルト本数が2本の場合、ノックピン位置Xはボルト位置Xの値を参照します。それ以外は、ノックピン位置Xを参照します。

六角穴付きボルトの移動(単品)

図8 部品の単品移動
図8 部品の単品移動
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

単品部品の移動は、コマンドで行います。移動コマンドでボルトを移動する場合、穴はボルトを中心に拘束されているので穴も追従して移動します。そのとき、確認のダイヤログが表示されるので、「更新」「削除」「処理なし」から選択します。(図8)

「更新」を選択すると拘束が削除されないため、プレートを更新すると、移動したボルトが元の位置に戻ります。移動をやり直す場合に便利ですが、更新によって元の位置に戻ってしまうので注意が必要です。「設計変更があった場合、コマンドの操作でわりきる」のであれば、拘束を「削除」するほうが便利です。

導入支援グループでは、各種金型部品のデータを作成しています。今後も、さまざまな金型の3次元化に取り組んでいきたいと思っています。

関連するソリューション

関連するソリューションの記事

2023年07月01日
5軸加工 技術情報 連載vol.4
負荷制御を活用した5軸荒取り
2023年07月01日
Space-E 新バージョンCAM 2023、Version 5.11リリースのお知らせ
2023年01月10日
第31回 日本国際工作機械見本市
JIMTOF2022 出展のご報告
2023年01月10日
第25回 関西 設計・製造ソリューション展
出展のご報告
2023年01月10日
5軸加工 技術情報 連載vol.3
CAMの自動中取りと3+2の有効性について
2023年01月10日
新製品「Space-E/5Axis 2022」のご紹介
2022年10月12日
製造業におけるIT技術導入を加速する取り組みを開始
~ C&Gシステムズの高精度なCAMエンジンを採用 ~
2022年10月10日
INTERMOLD名古屋 出展のご報告
2022年10月10日
5軸加工 技術情報 連載vol.2
東台精機/HEIDENHAINの優位性
2022年10月10日
新商品「Space-E/CAM 2022」のご紹介
2022年07月01日
5軸加工 技術情報 連載vol.1
異形工具の活用と効果
2022年06月15日
製造業向け CAMシステム
新製品「Space-E 2022 CAM」を販売開始
~優れたCAM演算ロジック採用による高精度・高品質加工の実現~
2022年06月14日
「IT導入補助金2022」のお知らせ
2022年04月01日
Space-E Version 5.10リリースのお知らせ
2021年07月10日
中小製造業の皆さまを対象とした
「補助金・助成金診断サイト」をオープンしました
そのビジネス課題、公的支援を活用して解決しませんか
2021年07月10日
Manufacturing-Space®
サブスクリプションサービス開始のお知らせ
5月から「Space-E 1 Day ライセンス」サービスを提供
2021年07月10日
金型づくりの自動化を目指した
「Mold Future Space - OKINAWA」の取り組み
2021年07月10日
4事業部のご紹介(2)
製造ソリューション事業部
2021年06月28日
金型づくりの自動化を推進する拠点Mold Future Space - OKINAWAを開設
~沖縄から全国へものづくりの最新技術を発信していきます~
2021年03月01日
補助金・助成金診断サイト開設のお知らせ
2021年01月01日
Manufacturing-Space® Version 4.6
新機能のご紹介
2020年10月15日
Space-E Version 5.9リリースのお知らせ
~自動化への第一歩「簡単、確実な操作へ」~
2020年04月01日
大連永華技術有限公司と中国における代理店契約締結
-日軟信息科技(上海)有限公司の閉鎖について-
2020年04月01日
Manufacturing-Space® Version 4.5
新機能のご紹介
2019年10月01日
Manufacturing-Space® Version 4.4
サービスインのお知らせ
2019年07月01日
Space-E Version 5.8リリースのお知らせ
~自動化に向けて進化する~
2019年06月26日
金型設計・製造業界向けCAD/CAMシステム「Space-E」
最新Version 5.8をリリース
2019年04月01日
Space-E
マルチスレッド技術による
特殊隅取りモーフィングモードの高速化
2019年01月01日
CAD/CAMシステムオンラインサポートサイト
e-support リニューアル公開のお知らせ
2018年10月01日
Space-E Version 5.7リリースのお知らせ
~5軸加工機能の強化と特殊隅取りの改善~
2018年10月01日
ものづくり業界向けクラウドサービス
「Manufacturing-Space®
最新Version 4.2をサービスイン
2018年10月01日
金型設計・製造業界向けCAD/CAMシステム「Space-E」
最新Version 5.7をリリース
2018年04月01日
NTTDATA (Thailand) co., ltd. 活動報告
2018年04月01日
沖縄マニファクチャリングラボの取り組み
5軸加工機能の強化および実用化に向けて
2017年04月01日
Space-E Ver.5.6リリースのお知らせ
~沖縄マニファクチャリングラボの研究成果を反映~
2017年01月01日
5軸加工への取り組み
沖縄マニファクチャリングラボにおける
5軸加工機能の技術開発
2016年07月01日
第1回 名古屋 設計・製造ソリューション展
出展報告
2016年04月01日
Space-E Version 5.5リリースのお知らせ
~生産準備業務の効率化を目指す~
2016年02月22日
ものづくり業界向け「オートサーフェス」サービスを提供開始
2016年01月01日
沖縄マニファクチャリングラボにおける
5軸加工機能の技術開発
2015年10月01日
Manufacturing-Space® Version 3.0サービスインのお知らせ
統合型クラウドファイル管理サービス
「データコンシェルジュサービス」の開始
2015年07月01日
トータルソリューションのご提案(4)
PDMを活用した鍛造解析向けトータルソリューション
2015年07月01日
Space-E Version 5.4 リリースのお知らせ
~まずは削ることから刷新~
2015年04月01日
トータルソリューションのご提案(3)
NDESがご提案するトータルソリューションとは
2015年01月01日
マニファクチャリングラボ(沖縄)の取り組みについて
2014年10月01日
CAXA社との協業について
2014年10月01日
トータルソリューションのご提案(1)
STLの活用例
2014年10月01日
Manufacturing-Space® Version 2.0リリース
~あらゆるデータをいつでもどこでも、もっと自由に!~
2014年07月01日
Space-E Version 5.3 リリースのお知らせ
2014年01月14日
クラウドサービス「Manufacturing-Space®
PDMサービスの「Web」と「iPad」閲覧機能の拡充
2014年01月01日
Manufacturing-Space® Version 1.5リリース
~あらゆるデータをいつでもどこでも、もっと自由に!~
2013年10月25日
金型業界初のクラウドサービス
Manufacturing-Space®の提供を開始
~あらゆるデータをいつでもどこでも、もっと自由に!~
2013年09月25日
金型業界初のクラウドサービス「Manufacturing-Space®
10月1日サービス開始
2013年07月10日
東南アジア地域における
Space-E販売代理店の支援強化について
2013年04月01日
安倍首相がオバマ大統領に贈ったパターは、
Space-Eをご利用いただいています
「有限会社 山田パター工房」様が製作したパターです
2013年02月25日
Space-E Version 5.2 をリリースしました。
新機能の詳細は、人とシステムの記事をご覧ください。
2012年01月01日
導入支援レポート(第11回)
Space-E/Moldにおけるカスタマイズについて(2)
2011年10月01日
Space-E Version 5.1 新機能のご紹介
2011年10月01日
導入支援レポート(第10回)
Space-E/Moldにおけるカスタマイズについて(1)
2011年10月01日
Space-Eで実現する
デジタルエンジニアリングにおける4つのCサイクル
2011年07月01日
導入支援レポート(第9回)
Space-Eにおけるプレス金型向けユニット部品構築方法(2)
2011年04月01日
Space-E Version 5.0 新機能のご紹介
2011年01月01日
5軸加工およびSpace-E/5Axisのメリット
2011年01月01日
導入支援レポート(第7回)
Space-Eによる3次元金型設計を中心としたシステム構築
2010年10月01日
3次元CAD/CAM/CAE一体型システム
Space-E/Pressのご紹介
2010年10月01日
導入支援レポート(第6回)
Space-Eによる3次元金型設計の実現(3)
2010年07月01日
導入支援レポート(第5回)
Space-Eによる3次元金型設計の実現(2)
2010年04月01日
Space-E Version 4.9 新機能のご紹介
2010年04月01日
導入支援レポート(第4回)
Space-Eによる3次元金型設計の実現(1)
2010年01月01日
Space-Eの有効活用「電極設計の効率化」
2009年10月01日
Space-EとDr.工程との連携
設計部門から製造部門へ、情報伝達の正確性アップと時間短縮のご提案
2005年07月01日
Space-E最新バージョンのご紹介
2005年01月01日
Space-E Version 4.3のご紹介
2004年07月01日
Space-E Version 4.2 Modeler & CAMのご紹介
2004年04月01日
Space-E/Global Deformation Version 1.0のご紹介
2002年04月01日
Space-E Version 3.1のご紹介
2002年04月01日
Space-E/STEPのご紹介
2001年07月01日
Space-E最新バージョンのご紹介
2001年07月01日
Space-E/Mold Version 2.0のご紹介
2000年10月01日
Space-E/SolidCAMの紹介
2000年07月01日
Space-E/Moldのご紹介
2000年04月01日
Space-E Version 2.1 のご紹介
1999年10月01日
WindowsNT版 製図支援システム Space-E/Draw のご紹介
1999年07月01日
Space-E Version 2.0 最新機能紹介と今後の展望
1999年01月01日
Space-Eのご紹介