人とシステム

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No.62 | システム紹介
導入支援レポート(第9回)
Space-Eにおけるプレス金型向けユニット部品構築方法(2)
製造ソリューション統括部 製造ソリューション部
コンサルティンググループ 橋口 淳一

はじめに

前号(No.61)「導入支援レポート(第8回)」に引き続き、Space-E/Press (順送プレス金型設計向け・プレス工程設計向け)によるプレスのユニット部品の構築方法についてご紹介します。

今回は、パンチユニットを例としてプレス金型における金型部品の作成方法をご紹介します。

3次元設計の効率化

金型構造設計の中で特に手数のかかる作業として、部品寸法の設定や部品どうしの位置関係の拘束があげられます。通常、金型構造は数百から数千個の部品や穴で構成されているため、設計者の試行錯誤や設計変更のたびに部品の設定や拘束が繰り返し行われると、手数はさらに増えます。

この手数の多さ(煩雑さ)が、3D金型設計の工数を増やしている要因であり、さらに、これが設計ミス(手戻り)につながる最大の原因であるという点でも、早急に改善すべき課題と言えます。

手数削減の手法

ユニット部品を作り込むことで、金型構造設計の手数を削減できます。金型の構造設計において、1つの部品の設計でも多くのパラメータの設定が必要となります。そのため、ユニット部品内で標準化のルールを作成し、パラメータ数を減らすことをお奨めします。

プレス金型におけるユニット部品の作成

図1 予約語の仕組み
図1 予約語の仕組み
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

Space-E/Pressには、部品を配置するときに、配置する部品と既に配置されている部品のパラメータを自動でリンクさせる機能として「予約語」があります(図1)。

予約語でパラメータを定義して部品を配置すると、既に配置されている部品の中から同じパラメータを自動検索してリンクを作成します。これにより、プレートの高さなどを設定する手数が削減できます。例えば、ジェクタパンチユニットに予約語を利用して、パンチプレート高さ、ストリッパプレート高さ、ダイプレート高さ、ダイホルダ高さ、材料高さの5つのパラメータを定義すると、部品配置時の工数を短縮できます。

パンチユニットの構築例

ユニット部品を作成する場合、部品だけではなく、穴部品も連動して動作させることでモデリングの手間を省き、設計時間を短縮できます。さらに、設計の手順やノウハウをパラメータとして作成すると効率的な設計ができます。パンチユニットの場合、定義するパラメータの例として、「部品の設計」「部品の変更」「動作の確認」などがあげられます。

「部品の設計」パラメータ

図2 ジェクタパンチのユニット部品
図2 ジェクタパンチのユニット部品
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
図3 ジェクタパンチの移動による確認
図3 ジェクタパンチの移動による確認

配置高さの調整、スクラップ穴の設計、突き出し量の設計などをパラメータとして定義します。ユニットとしての部品設計は、金型部品だけではなく、部品穴や材料高さにも依存するので、設計に必要な穴部品の組み込みや材料高さを考慮した拘束を作成します(図2)。

「部品の変更」パラメータ

パンチの固定方法が2つ以上ある場合、パラメータで切り替えるように構築すると便利です。構築方法は、「非活動化索引付加」コマンドで、索引番号を作成して活動化・非活動化を切り替えます。ご紹介しているジェクタパンチは、プレートとリテーナ部品を切り替えるように構築しています。

「動作の確認」パラメータ

パンチユニットに型開きの動作を盛り込むと、部品間の干渉などを確認できます。パラメータに開閉量を入力して確認します(図3)。

予約語の盛り込み

図4 ジェクタパンチのパラメータと予約語
図4 ジェクタパンチのパラメータと予約語
図5 ジェクタパンチと関連するプレート高さ
図5 ジェクタパンチと関連するプレート高さ

部品に予約語を定義することで、部品配置の工数を削減できます。ジェクタパンチユニットに定義する予約語は、ダイベースプレートのキー名です(図4)。

予約語で取得できるキー名は、ユニット部品のトップのパラメータ、または構成している部品パラメータなどで取得できます。ただし、ユニット部品のトップにパラメータを作成した方がパラメータの検索がしやすいので、あらかじめダイベースのトップにパラメータを作成することをお奨めします。

予約語を定義していると部品配置と同時にプレート高さのリンクを作成できるため、設計時間は大幅に削減できます(図5)。

予約語は、パラメータ以外には拘束にも付加できます。部品を配置すると予約語を定義した面に自動的に拘束が作成されます。

VBとSpace-Eの連携

図6 VBとの連携イメージ
図6 VBとの連携イメージ
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
図7 ジェクタパンチユニット VBとの連携
図7 ジェクタパンチユニット VBとの連携
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

Space-E Ver.5.0では、VBとの連携ができるようになりました。その機能を使用すると、より効率的な部品設計が行えるようになり、設計の標準化を促進できます。VBと連携するツールとしては、Excelが便利です(図6)。

Excelと連携することで、設計パラメータをシートに入力して、そのパラメータを3次元モデルに取り込むことができます。また、VBで自社のオリジナルのダイアログを作成して設計を行うこともできます。

今回、ご紹介したジェクタパンチもVBを使用すると効率的な設計を行うことができます。図7は、ジェクタパンチユニットのダイアログをVBで作成した例です。ダイアログにチェックを入れると、画像が切り替わるので、わかりやすい操作で設計できます。

おわりに

コンサルティンググループでは、システムのカスタマイズや各種金型部品のデータを作成しています。今後もお客様の業務の効率化を実現するために取り組んでいきます。

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