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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.86 社長インタビュー

5軸加工による金型製作を推進し
沖縄のものづくり産業の振興を加速
― 官と民が協力してものづくり人材を育成する ―

沖縄県うるま市の素形材産業賃貸工場内に拠点を構える沖縄県金型技術研究センター様とものづくりネットワーク沖縄様は、産業振興を支える金型分野の人材育成や研究開発、5軸加工の研究、加工設備を活用した試作品や製品づくりを推進しています。同工場内にはNTTデータエンジニアリングシステムズ(以下、NDES)のCAD/CAMの研究拠点である沖縄事業所マニファクチャリングラボがあり、技術的なご要望を伺いながらCAD/CAMソフトウエア「Space-E」の研究開発を行っています。

ものづくりの基盤である金型分野
人材育成と研究開発を推進

代表取締役社長 木下 篤
NDES
代表取締役社長
木下 篤

木下 2012年1月にNDESの沖縄事業所マニファクチャリングラボが沖縄県金型技術研究センター様、ものづくりネットワーク沖縄様と同じ場所で活動を始めてから、ちょうど5年目の節目を迎えました。改めて、沖縄県金型技術研究センター様とものづくりネットワーク沖縄様の活動内容を聞かせていただけますか。

金城 沖縄県のものづくり産業を振興するためには、まず、ものづくりの基盤産業である金型分野の人材育成と研究開発を進める必要がありました。そこで、2010年4月、沖縄県工業技術センターで金型関連の人材育成や、産学官連携による研究開発、最新の機器提供を行う組織として「沖縄県金型技術研究センター」がスタートしました。

また沖縄県では、サポーティング産業の企業誘致を促進するために、2010年7月、うるま市に素形材産業賃貸工場を整備し、入居企業が利用できる各種工作機械も整備しました。さらに、うるま市が人材育成などソフト的な支援を行ってくれたことで、金型分野の人材育成と研究開発を行う基盤が整いました。一方で、課題も出てきました。

沖縄県素形材産業賃貸工場
沖縄県素形材産業賃貸工場

木下 それはどのような課題だったのでしょうか。

金城 若い技術者たちの受け皿です。沖縄県金型技術研究センターの設立から2年間ほど、金型分野でものづくりに参画する人材の育成を進めてきたのですが、沖縄県内には若い技術者が活躍する場が少ないことが分かりました。そこで、若い技術者の受け皿をつくり出す民間組織として、2012年1月に「ものづくりネットワーク沖縄」を立ち上げたのです。

木下 それぞれの組織の役割をお聞かせください。

金城 沖縄県金型技術研究センターが公共性の高い官の立場から5軸加工機をはじめとするハードウエア面を整備する一方、ものづくりネットワーク沖縄はより現場に即した民のダイナミズムを発揮しながら、OJT(On the Job Training)を通じた実践的な人材育成と研究開発の場となります。

そうした活動を推進するには、民間企業との連携も必要となるため、沖縄県金型技術研究センターが金型の設計・評価技術といったエンジニアリングを担い、それに対し、ものづくりネットワーク沖縄は金型の設計・製作、各種加工など、民間企業と連携しながらものづくり全般に関する活動を進めるなど、両社が車の両輪となって沖縄のものづくり産業の振興に貢献することを目指しています。

木下 沖縄のものづくり産業を担う上で、どのような人材が求められているのでしょうか。

金城 求められているのは、金型技術を理解できることはもちろん、上流の製品設計や製品成形を含めた生産プロセス全体に対応できる能力を持つ人材です。金型を単に作るのではなく、お客さまが要求する金型を適切に作れる「コンカレントエンジニア」を育てていかなければ、グローバルな競争に打ち勝つことはできません。そのために各種研修コースを用意しています。

観光リゾート向け電気自動車の開発など
沖縄らしいものづくりを加速

木下 人材育成以外には、どのような取り組みをされているのでしょうか。

金城 沖縄県金型技術研究センターは沖縄のものづくり産業の振興が目的です。ただ、何でもやるというのではなく、沖縄らしいものづくりにチャレンジすることを心がけています。本土はマーケットが大きいので大量生産も可能ですが、沖縄は違います。小ロットで付加価値の高いものづくりが必要です。また、沖縄らしい産業振興を進める上で、県内に多くの事業者がいる観光・レジャー産業や食品・飲料、工芸品などの産業との連携を重視しています。

主任研究員 泉川 達哉 様
沖縄県工業技術センター
沖縄県金型技術研究センター
主任研究員
泉川 達哉 様

木下 沖縄県といえば、観光産業が主要産業の一つですが、それと沖縄県金型技術研究センター様との関連というと、どういうものになるのでしょうか。

泉川 例えば、観光リゾート施設内を移動する電気自動車「コミュニティビークル」の研究開発を手掛けています。観光リゾート施設での利用だけでなく、沖縄は高齢者が多く、手軽に乗り降りできる電動の低床車のニーズもあります。また、沖縄は自動車の保有台数が100万台以上あるといわれ、中古車をエンジン車から電気自動車に改造して再利用する「コンバートEV」など、高齢者や環境に配慮した乗り物も考えられます。

この他、台風や錆に強い住宅のアルミサッシなど、沖縄の気候・風土に合わせたものづくりができる人材育成を進めているところです。

木下 沖縄でのものづくり産業の企業誘致の状況はいかがでしょうか。

観光リゾート向けコミュニティビークル
観光リゾート向けコミュニティビークル

泉川 沖縄県では2014年6月、那覇市など5市に加え、うるま・沖縄地区(中城湾[なかぐすくわん]港振興地区)を国際物流拠点産業集積地域に指定し、ものづくり産業を担う企業誘致を進めてきました。県内に航空会社の貨物ハブ基地ができ、物流面でのハンデが解消されたこともあり、うるま・沖縄地区に進出する企業数、雇用者数とも大幅に増加しています。2010年と2016年を比較すると、企業数では126社から221社と約1.7倍に、雇用者数は2847人から5439人と約2倍になっています。沖縄はマーケットの大きなアジアの最前線基地としてのポテンシャルがあり、進出する企業はそこに期待しているようです。

コア技術として5軸加工を追求
NDESとの協業で可能性広がる

木下 金城様は早くから5軸加工に積極的に取り組まれていますが、その経緯や現状課題についてお話をいただけますか。

金城 5軸加工でなくても金型を作ることはできますが、時間がかかったり形状によっては1回で加工ができなかったりと限界があります。そこで金型製作においてもっと5軸加工を追求すべきだと考えていました。

2005年ごろから試行錯誤しながら5軸加工に取り組んできましたが、その当時、5軸加工は特殊な形状の航空機部品などで主に利用されていました。航空機部品は高価な材料を使用するので、できるだけ切削の無駄を出さないようにする必要があります。また、放電加工機で加工をすると熱疲労破壊を起こす可能性もあります。そうした状況の中、航空機部品の製造分野で5軸加工が導入されてきたのです。

木下 しかし金型分野では5軸加工がなかなか進みませんでしたが、その理由をどのようにお考えですか。

金城 一つは、5軸加工機が高価なことです。また、5軸加工のCAMデータを作成する場合、時間と手間がかかり採算が取りにくいという問題もあります。とはいえ、5軸加工の可能性は大きいと考えています。

沖縄県金型技術研究センターを開設した当初から、コア技術として5軸加工に取り組み、研究開発を進めてきました。そして、2012年にNDESがこの素形材産業賃貸工場に入居したことで、5軸加工向けCAMソフトウエア開発の可能性が広がったと感じています。

一般社団法人 ものづくりネットワーク沖縄 エンジニアリング部 部長 吉居 誠 様
一般社団法人ものづくりネットワーク沖縄
エンジニアリング部
部長
吉居 誠 様

木下 金型製作の現場におられる吉居様は、5軸加工技術の現状をどのように見ておられますか。

吉居 ものづくりネットワーク沖縄をはじめ、金型製作の現場ではマシニングセンターや放電加工機、ワイヤーカット加工機などにより、さまざまな加工に対応しています。お客さまから要求される品質や納期などによって加工機を使い分けていますが、複数の工程を経ることで、精度や品質の維持、加工時間の短縮が課題になっています。

こうした課題を解決すると期待されるのが5軸加工です。ただ、実際は5軸加工のNCデータ作成には経験と知識が必要で、加工を始めるまでに多くの工数がかかっているのが現状です。そのため5軸加工のNCデータ作成のノウハウをより多く得るのが今後の目標です。

CAMの進化で5軸加工の
メリットが向上

木下 5軸加工は今後金型製作の中心になるのでしょうか。

金城 現在は3軸加工が中心で、5軸加工はあくまで補完的な位置づけですが、これまでの3軸加工では限界があるので、5軸加工を金型製作の中心にしたいと考えています。

海外の金型製作の動向を見ると、特にドイツでは5軸加工が当たり前になっています。海外製の5軸加工機の中には価格面で手ごろなものや、性能面で優れたものが出ています。5軸加工がものづくりの課題を全て解決するわけではありませんが、金型製作の工程がシンプルになるなど、現場の人たちにとって望ましい方向といえるでしょう。

木下 金型製作において、5軸加工はどのようなメリットがあるとお考えですか。

吉居 段取りが不要になり工数が減るため、時間短縮が可能になります。感覚的には5軸加工は金型製作のリードタイムを半減できます。また5軸加工は工具の突き出しを短くできるため、工具の剛性が高まり、工具本来の能力を生かすことができます。例えば、工具の突き出しが10mm長くなるだけで剛性が半分に落ちたりすることもあります。

5軸加工の工具突き出しを短くすることにより、加工精度(寸法精度)や加工品質の向上、加工時間の短縮が可能、というようなさまざまな効果があります。

具体的には、工具のたわみが減り、工具の折損や形状への食い込みなど不良の発生要因を減らすことが可能です。

木下 5軸加工の加工精度が向上しているのは、機械的な理由によるものでしょうか。

泉川 5軸加工機の機械的な技術の向上に加え、近年は5軸加工機を制御するCAMソフトウエア技術が進化し、加工精度が上がっていると感じます。

吉居 加工精度の誤差については、例えば各軸で誤差が1/100の場合、5軸では5/100になってしまいます。

ものづくりネットワーク沖縄で使用している5軸加工機は、積極的に工具の突き出しを短くし5軸でも1/100の誤差に収まる精度を実現しています。工作機械の精度向上とCAMソフトウエアの進化が相まって、5軸加工の精度は大幅に向上しています。

CAMソフトウエア・加工機・工具の
特長を生かし、5軸加工を検討

木下 5軸加工向けCAMソフトウエアの完成度について、どのようにお考えですか。

金城 5軸加工機の性能向上に比べ、CAMソフトウエアの性能・機能はまだ遅れているのが実情です。例えば、私たちは汎用的な荒取り機能を備えたCAMソフトウエアが5軸加工の金型製作に必要だと訴えてきましたが、まだ十分に対応されているとはいえない状況です。金型製作で5軸加工を普及させるためには、加工機とソフトウエアがもっと高性能・高機能にならなければならないと考えています。

そこで、5軸加工に関連するCAMソフトウエア会社、加工機メーカー、刃物などの工具メーカー、そしてユーザーの4者が一体となり、より使い勝手の良い5軸加工の在り方を検討していく必要があると思います。これまでのようにCAMソフトウエア会社だけ、加工機メーカーだけといった独自の取り組みでは限界があり、世界では戦えません。それぞれの特長を生かしながら、一緒に活動できる環境が整っているのが、沖縄のものづくりの強みだと思います。

木下 実際に5軸加工の作業を進める上で、特に留意していることはありますか。

吉居 5軸加工データを作る際に、さまざまな検討が必要です。例えば、割り出し角度の見極めも重要な検討課題の一つです。

その際、(1)なるべく広いエリアが加工できる角度を探す(2)5軸加工用のモデリング作業を行う(3)NCデータを作成する(4)NCデータから加工エリアに漏れがないか確認する(5)工具の突き出しを確認する、といった手順に留意する必要があります。もし、工具の突き出しや加工エリアが不十分な場合、再度、角度の検討から始めなければならず、とても手間のかかる作業となります。

沖縄県金型技術研究センター様の5軸加工機
沖縄県金型技術研究センター様の5軸加工機
5軸加工機で試作した放熱用ヒートシンク
5軸加工機で試作した放熱用ヒートシンク
ものづくりネットワーク沖縄様の施設
ものづくりネットワーク沖縄様の施設
ものづくりネットワーク沖縄様の5軸加工機
ものづくりネットワーク沖縄様の5軸加工機

ソフトウエア開発者と技術者が
議論を重ね機能向上するSpace-E

木下 私たちも、数年をかけてCAMソフトウエアの機能強化を図っていますが、5軸機能については、ものづくりネットワーク沖縄様の現場での意見がとても重要と考えています。

吉居 Space-E Version5.6の機能は、5軸加工の作業の手間を解消してくれると期待しています。例えば、突き出しが最も短くなる旋回軸や、傾斜軸の角度をSpace-E側で教えてくれる「5軸割り出し仕上げ」や、荒取りのパスを自動的に作成する「5軸荒取り」などの機能により、5軸加工のNCデータ作成時間の短縮が可能です。これにより5軸加工の幅が広がり、現場作業の生産性を高められると考えています。

将来的には異形形状工具への対応や、切削解析によるNCデータの最適化など、Space-Eの機能がさらに改善されることを期待しています。NCデータの最適化により、経験や勘に頼っていた切削条件や工具の寿命を数値上で判断できるようになると思います。

木下 沖縄県金型技術研究センター様やものづくりネットワーク沖縄様の技術者と同じ場所で活動しながらSpace-Eの精度などを評価していただくことで、私たちも得られるものがたくさんあります。例えば、パス計算において数値上はきれいに削れるはずなのに、実際に工作機械にかけるときれいに削れないことがありました。そうした現象を現場で目の当たりにできることは、私たちのソフトウエア開発者にとって貴重な経験となっています。

吉居 Space-Eを使っていて削り方に気になることがあった場合、加工機の前で実際にNDESのソフトウエア開発者に見てもらうこともありました。金型製作の技術者とソフトウエア開発者が同じ場所に立ち、一緒に現象を確認することで、現場の思いや課題を理解してもらうことも可能です。現場ではこういう削り方をしたいといった議論をNDESの開発者と重ねることにより、より良いシステムができるのだと思います。

木下 貴重なご意見ありがとうございます。その他に、私たちへのご要望があれば聞かせていただけますか。

金城 先ごろ、NDESが発表したクラウドサービス「Manufacturing-Space」のロードマップ(本誌14ページ参照)に期待しているところです。それにはCAD/CAMソフトウエアの方向性や技術動向が分かりやすく示されており、金型関連産業に携わる人たちにとって、将来像を描くことができます。山を登るにも目標が必要で、いろいろなルートがあるのと同様に、今後のクラウドサービスをベースとしたCAD/CAMソフトウエアの進化の道筋が見え、ユーザーとして安心感があります。

泉川 沖縄県金型技術研究センターでは、エンジニアリングの解析ツールとしてCAEソフトウエアを導入していますが、CAEソフトウエアは業務によって使用頻度がまちまちです。私たちが必要とするCAEソフトウエアがクラウドサービスとして提供されれば、使いたいときに一定期間契約すればよく、使い勝手もよくなると思います。

木下 ロードマップでは、利用期間に応じて料金を支払う方式のサブスクリプションサービスの提供を計画しており、今後、ご要望に対応してまいります。また、モバイル端末への対応や、AI(人工知能)を活用した自動化の推進などにも取り組んでいく予定です。

今後の沖縄での
ものづくりの目標

木下 最後に今後の目標についてお聞かせください。

金城 今後の目標ということでは、沖縄のものづくりをさらに促進したいと考えています。沖縄県では、2015年に「沖縄県アジア経済戦略構想」を策定しました。この構想では、アジアのダイナミズムを取り込み、沖縄の発展を加速させるため、五つの重点戦略を打ち出しています。その一つが、沖縄からアジアへとつながる新たなものづくり産業を推進していくことです。ものづくりの人材を育て、付加価値を生み出してアジアに展開する新たなものづくり産業の確立を目指しています。例えば、国際物流拠点産業集積地域(うるま市)におけるものづくり産業の集積の強みを生かし、新たな産業の起爆剤となるコンバートEVやコミュニティビークルの開発・製造・輸出などの施策を展開していくことが明記されています。

こうした活動を推進していくためにも、沖縄県金型技術研究センターとものづくりネットワーク沖縄の役割はますます大きくなると確信しています。

泉川 官である沖縄県金型技術研究センターと、民のものづくりネットワーク沖縄がお互いの足りない部分を補完し、協調することで、県内企業に対する効率的な技術支援を続けていきたいです。

吉居 5軸加工の金型製作をはじめ、ものづくりを進める上で、NDESとは同じ建物の中で緊密にコミュニケーションを図ってきました。これからも、生産現場に最も近いCAD/CAMソフトウエア会社として、課題を共有し、現場に使いやすいシステムを提供してほしいと期待しています。

木下 沖縄でのものづくりへの取り組みや5軸加工の現状など、貴重なお話を聞かせていただきました。今後も、私ども沖縄事業所マニファクチャリングラボの活動やSpace-Eなどの製品を通じ、皆さまの活動をお手伝いしていきたいと考えています。

本日はありがとうございました。

会社プロフィール

所在地 沖縄県うるま市勝連南風原5192-30
設立 2010年4月
事業内容 金型分野の人材育成、研究開発、機器提供を3本柱に活動。
研究開発では、素形材産業賃貸工場内に設置された
5軸加工機を用いた金型部品の5軸加工に関する研究や、
高機能部品を実現する形状最適化技術の開発、
電気自動車に関する取り組みなどを行う。
所在地 沖縄県うるま市勝連南風原5192-30
設立 2012年1月
事業内容 「人づくり、型づくり、ものづくり、事づくり」を通じ、
沖縄のものづくり産業の振興に貢献することを理念に、
コンカレントエンジニアなどの人材育成、
金型技術や地域振興に資する技術開発などの研究開発、
金属加工や各種成形、解析などのエンジニアリング事業を展開する。

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