データ品質管理サービス「CADデータチェッカー」
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ カスタマー&サービス事業本部 クラウドサービス事業部 第一営業部 営業課 担当課長 服部 正太郎 |
はじめに
2017年9月19日、「Manufacturing-Space Version 4.0」のサービスを開始しましたのでご紹介します。Version 4.0では、株式会社エリジオン(以下、エリジオン)との協業により、「CADdoctor」のPDQ(Product Data Quality)検証および自動修復エンジンをクラウドサービスに搭載し、 3次元CADデータの品質チェックおよび不具合箇所の自動修復を行うデータ品質管理サービス「CADデータチェッカー」としてご提供を開始しました。
3次元CADシステムにおける
データ交換時の問題

金型設計の業務においては、取引先から製品形状の3次元CADデータを受け取り、自社の3次元CADシステムに取り込んで作業することになります。このとき、取引先とシステムが異なると、IGESやSTEPといった中間フォーマットを介して受け取ることがよくあります。そのとき、3次元形状の表現方法の違いによるさまざまな問題が発生することがあります(図1、図2)。
また、他部門や取引先に3次元CADデータを渡すときも同様の問題が発生する可能性があり、その問題を解決するのはデータを受け取った側の作業となります。しかも、金型設計に入る前に無駄な工数がかかることになります。

データ品質管理サービス
「CADデータチェッカー」
データ品質管理サービス「CADデータチェッカー」では、取引先から受け取った3次元CADデータをManufacturing-Spaceの「データコンシェルジュサービス」へ登録(アップロード)すると、3次元CADモデルの品質を自動チェックできます。データ品質は状態に合わせ、青・黄・赤のシグナルで視覚的に表示されます。そのうえ、必要であれば対象ファイルを指定して、不具合箇所を自動修正できます。これにより、お客さまは受け取った3次元データの品質の改善や、異なるシステム間で発生するデータ変換時のトラブルから解放され、作業効率を大幅に改善できます(図3、図4)。


『CADdoctor』および『ASFALIS』の
エンジンを搭載
Version 4.0の「データ品質チェックサービス」は、エリジオンの技術的な協力により実現できました。データ品質チェックおよび自動修復については、エリジオンの「CADdoctor」および「ASFALIS」のエンジンを搭載しています。
エリジオンは、独自の3次元データ処理技術によるパッケージソフト開発・販売に加え、形状処理技術を生かした顧客ごとの専用システム開発を行っています。製造業を中心としたソリューションの提供の他に、近年は3Dレーザースキャナーで計測した膨大な点群データの処理ソフトを開発し、顧客層は土木・建築・プラントメンテナンスなどに広がっています。
エリジオンの役割と3次元データの変換に関する考え方は以下の通りです。
- エンジニアリングプロセスの効率化のためには、上流工程から下流工程まで、一気通貫で3次元データを活用することが不可欠
- そうした中で、現在主要なものだけでも約10種類のCADソフトが普及し、さらに3次元データに関するファイル形式も多数存在。企業にとっては効率的なデータ活用が難しい課題の一つとなっている
- エリジオンは、これら種類の異なるデータを最適化することで3次元データに関わるさまざまな課題を解決するソリューションを提供する(図5)

(エリジオンロゴ)
株式会社エリジオン(Elysium Co. Ltd.)
* 語意はギリシャ語で「至上の幸福、理想郷」
【本社】
〒430-0927 静岡県浜松市中区旭町11-1
プレスタワー(受付:10F)
【URL】
http://www.elysium.co.jp/(外部サイトへ移動します)
【設立】
1999年11月1日
【資本金】
3000万円
【役員構成】
代表取締役会長 CEO 小寺 敏正
代表取締役社長 COO 矢野 裕司
取締役 CTO 相馬 淳人
【実績/主要な取引先】
- グローバルで3000社以上に技術提供
- トヨタ、日産、キヤノンをはじめ、年間連結売上高1兆円以上の国内製造業者はすべてエリジオン技術を採用
- 欧米ではNASA、ボーイング、ダイムラーなどに技術提供
- モータースポーツ界およびものづくりの最高峰といわれるF1に参戦するルノー・スポールF1チーム テクニカルパートナーに
【事業内容/技術領域】
- 独自の3次元データ処理技術によるパッケージソフト開発・販売
- 形状処理技術を生かした顧客別の専用システム開発
- 3Dレーザースキャナーで計測した膨大な点群データの処理ソフトを開発し、顧客層は土木・建築・プラントメンテナンスなどにも拡張
今後について
今後も引き続き、エリジオンとの協業を深め、サービスの強化および新サービスの追加を行う予定です。Manufacturing-Spaceではエリジオンが「CADdoctor」および「ASFALIS」で提供されている形状比較、簡略化、成形性検証などの機能をクラウド上で実現し、サービスとして提供する予定です。その機能を以下にご紹介します。
(1)形状簡略化

緻密に設計されたCADデータは高品質な製品・部品の製造には欠かせません。ただし、データを用いたシミュレーションを行う際には、その複雑な形状ゆえに解析に膨大な時間を要する場合が多くあります。そうした場合には、シミュレーションに影響を与えない形状(フィーチャー)を削除し、シンプルな形状に修正することで、データ自体の容量が軽減され、解析にかかる負荷が低減されます。
金型を設計する際、テーパーをつけるために一旦CADデータから一部のフィレットを除去し、その後再度フィレットを作成するといった工程を踏むことがあります。そうした煩雑な作業が必要な場合にも形状簡略化機能は有効性を発揮します。
エリジオンの形状簡略化機能の特長は、CADデータに履歴がない場合でも、形状からフィーチャーを認識し、削除する点にあります(図6)。
(2)CADデータ比較

製造プロセスにおいて、いかに設計変更を素早く、ていねいに後工程に伝達するか、また後工程からすれば、いかに設計変更の情報を迅速かつ正確に把握するかは恒常的な課題です。この問題に対するソリューションの一つが、エリジオンの形状比較機能です。
フェースやエッジの形状、位置の差異を色分け表示します。また、フィレットのR値や穴の半径など数値化できる差異についてはその値が表示されるため、正確に変更内容を把握することが可能です(図7、8)。

おわりに
前号(人とシステムNo.86)でManufacturing-Space が目指す方向とロードマップをご紹介しました。その実現に向けて、お客さまの業務をクラウド上で効率的に実行できるよう、データコンシェルジュ上の3次元データに対してさまざまなサービスを展開していく予定です。今後も付加価値の高いものづくりを支援していきますので、ご期待ください。
関連するソリューション
関連するソリューションの記事
- 2024年04月01日
-
Space-E 新バージョン 2023 R2
リリースのお知らせ
- 2024年04月01日
-
片山工業株式会社 様
金型技術者の育成強化を図り
成長するグローバル企業
- 2023年07月01日
-
5軸加工 技術情報 連載vol.4
負荷制御を活用した5軸荒取り
- 2023年07月01日
- Space-E 新バージョンCAM 2023、Version 5.11リリースのお知らせ
- 2023年01月10日
-
第31回 日本国際工作機械見本市
JIMTOF2022 出展のご報告
- 2023年01月10日
-
第25回 関西 設計・製造ソリューション展
出展のご報告
- 2023年01月10日
-
5軸加工 技術情報 連載vol.3
CAMの自動中取りと3+2の有効性について
- 2023年01月10日
- 新製品「Space-E/5Axis 2022」のご紹介
- 2022年10月10日
- INTERMOLD名古屋 出展のご報告
- 2022年10月10日
-
5軸加工 技術情報 連載vol.2
東台精機/HEIDENHAINの優位性
- 2022年10月10日
- 新商品「Space-E/CAM 2022」のご紹介
- 2022年07月01日
-
5軸加工 技術情報 連載vol.1
異形工具の活用と効果
- 2022年06月14日
- 「IT導入補助金2022」のお知らせ
- 2022年04月01日
- Space-E Version 5.10リリースのお知らせ
- 2021年07月10日
-
金型づくりの自動化を目指した
「Mold Future Space - OKINAWA」の取り組み
- 2021年07月10日
-
4事業部のご紹介(2)
製造ソリューション事業部
- 2021年03月01日
- 補助金・助成金診断サイト開設のお知らせ
- 2021年01月01日
-
Manufacturing-Space® Version 4.6
新機能のご紹介
- 2020年04月01日
-
大連永華技術有限公司と中国における代理店契約締結
-日軟信息科技(上海)有限公司の閉鎖について-
- 2020年04月01日
-
Manufacturing-Space® Version 4.5
新機能のご紹介
- 2019年10月01日
-
Manufacturing-Space® Version 4.4
サービスインのお知らせ
- 2019年07月01日
-
Space-E Version 5.8リリースのお知らせ
~自動化に向けて進化する~
- 2019年04月01日
-
Space-E
マルチスレッド技術による
特殊隅取りモーフィングモードの高速化
- 2019年04月01日
- Manufacturing-Space® Version 4.3 新機能のご紹介
- 2019年01月01日
-
CAD/CAMシステムオンラインサポートサイト
e-support リニューアル公開のお知らせ
- 2018年10月01日
-
Manufacturing-Space® Version 4.2
サービスインのお知らせ
- 2018年07月01日
-
経済産業省のプロジェクト参加報告
「標準の利用/活用推進委員会」の活動について
- 2018年04月01日
- NTTDATA (Thailand) co., ltd. 活動報告
- 2018年04月01日
-
沖縄マニファクチャリングラボの取り組み
5軸加工機能の強化および実用化に向けて
- 2017年07月01日
-
Manufacturing-Space®が目指す
方向とロードマップ
- 2017年07月01日
-
クラウドを利用した
「ものづくり産業」の生産性向上
- 2017年04月01日
-
Space-E Ver.5.6リリースのお知らせ
~沖縄マニファクチャリングラボの研究成果を反映~
- 2016年07月01日
-
第1回 名古屋 設計・製造ソリューション展
出展報告
- 2016年04月01日
-
Space-E Version 5.5リリースのお知らせ
~生産準備業務の効率化を目指す~
- 2016年02月22日
- ものづくり業界向け「オートサーフェス」サービスを提供開始
- 2016年01月01日
-
沖縄マニファクチャリングラボにおける
5軸加工機能の技術開発
- 2015年07月01日
-
トータルソリューションのご提案(4)
PDMを活用した鍛造解析向けトータルソリューション
- 2015年07月01日
-
Space-E Version 5.4 リリースのお知らせ
~まずは削ることから刷新~
- 2015年04月01日
-
トータルソリューションのご提案(3)
NDESがご提案するトータルソリューションとは
- 2015年01月01日
- マニファクチャリングラボ(沖縄)の取り組みについて
- 2015年01月01日
-
トータルソリューションのご提案(2)
フロントローディングソリューション
- 2014年10月01日
-
トータルソリューションのご提案(1)
STLの活用例
- 2014年07月01日
- Space-E Version 5.3 リリースのお知らせ
- 2013年09月25日
-
金型業界初のクラウドサービス「Manufacturing-Space®」
10月1日サービス開始
- 2012年10月01日
- 雲をつかむような話し