人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.111 | システム紹介
Space-E/5Axis Plus
5軸荒取り・仕上げ工程のCAM自動化、異形工具での加工工程の効率化
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
製造ソリューション事業部 技術開発部 第一サービス課 沖縄担当課長
阿部田 哲史

はじめに

昨今の日本の製造現場は、内需減少と価格競争による調達先の見直し、少子高齢化による技術伝承の問題や就労者不足の問題を抱えています。このような大きな環境変化の中で製造現場では、早急な変革と対策が求められています。私たちNTTデータエンジニアリングシステムズ(以下、NDES)は、CAD/CAM/CAE の性能向上 ・効率化に取り組みながら、自動化による省人化の対応、人材育成および確保の推進が重要であると考えています。 これらの課題解決の手段として注目されているのが5軸加工で、近年の工作機械の性能や精度の向上でその優位性の理解が深まり、5軸加工への関心が高まっています。

5軸加工の具体的なメリットを挙げると、まずワンチャッキング加工で加工具長さが短くなることで高剛性、高速加工が可能となり加工時間を短縮できること、次に周速ゼロ回避による精度向上、放電加工工程の削減などがあります。ここでは、NDESが一般社団法人ものづくりネットワーク沖縄(以下、mdn)と取り組んできたSpace-E/5Axisの5軸加工機能による荒取りから仕上げ工程のCAM作業の自動化、および異形工具での加工工程の効率化について説明します。

Space-E/5Axis Plusの取り組み

前述のようなメリットがある5軸加工ですが課題もあります。それは、5軸加工機に搭載されている加工軸と工具の関係を制御する高性能なNC装置に対応するための複雑なCAM作業です。試行錯誤する5軸加工のCAM作業は、3軸加工と比較すると加工データの作成に時間を要します。NDESはその課題を解決するため、 5軸加工機で実加工を行うmdnとの協業により、Space-Eの5軸加工機能を用いた切削加工による加工の技術要素や要望事項のフィードバックを受けて、Space-Eの改良・ 開発に取り組んでいます。

表1に示すのは、5軸加工の各工程の定義とSpace-Eの5軸加工機能の自動化における取り組みです。NDESは、全体工程を荒取り・中取り・仕上げと大きく区分し、それぞれの定義に従ってCAM機能の自動化を推進しています。

表1 5軸加工による荒取り・中取り・仕上げの定義
表1 5軸加工による荒取り・中取り・仕上げの定義

Space-E/5Axis Plus最新版の機能

荒取り・中取り・仕上げ工程の自動化における開発成果を最新版Space-E/5Axis Plusに反映しました。その機能である「自動割り出しによる荒取り・中取り加工」「自動5軸仕上げ加工」「異形工具支援」について説明します(図1)。

 図1  加工データ作成フロー(荒取り~仕上げ)と経路イメージ
図1 加工データ作成フロー(荒取り~仕上げ)と経路イメージ

■自動割り出しによる荒取り・中取り加工

荒取り工程では、材料から短時間で形状を加工することが重要です。荒取り工程から割り出し5軸加工を行うと、3軸加工に比べ段取り替えの回数が削減され工程を集約できるため、加工時間の大幅な短縮が期待できます。しかし、割り出し工程の作成を手動で行うと、割り出し方向の検討や補助面の作成に試行錯誤の時間を要します。この解決策として、切削体積の多い方向から順に割り出し工程を自動作成する「自動割り出し機能」をSpace-Eに追加し、CAM作業の時間短縮を実現しました。

中取り工程では、荒取り工程で加工された素材加工形状から高品質な仕上げ加工を行うため、可能な限り残り量が少なく均一になるような加工を行うことが重要です。そこで、仕上げ時の小径工具切削の加工負荷を軽減かつ均一にすることで、最小限の工具本数で少ない加工条件という仕上げ工程の構成が可能になります。Space-Eの荒取りの自動割り出し機能と同様に、従来の割り出し加工工程を簡単にすることで、さらなるCAM作業の時間短縮を実現しました。 その上、Space-Eの自動中取り機能では、ストック(削り残し)が次工程に引き継がれるため、効率的な加工も実現できます。また、割り出し方向と工具を標準化でき、さらに補助面の作成が不要となります。

■自動5軸仕上げ加工

仕上げ工程では、形状内の箇所ごとに要求された面精度・面品位で加工することが重要です。荒取り・中取り工程と同様に補助面の作成、加工方向の検討が必要な工程ですが、仕上げ工程ではより高品質を実現するため、作業も複雑になり時間を要します。NDESはこの解決策として、Space-Eの「自動5軸仕上げ」の開発を進め、CAM作業のさらなる時間短縮を実現します。この機能は、2025年春にリリース予定の新バージョンからご利用いただけます。容易に経路が作成でき、形状全体だけでなく、形状から面を直接指定できます。指定した面の境界部は自動延長され角部を考慮した経路作成も可能となり、仕上げ工程で要求される箇所ごとの精度に柔軟に対応しています。また、指定した形状内の穴は自動でフタをし、アンダーカット部も自動認識できます。さらに、工具が干渉しない傾きを自動算出できるため、加工方向、軸制御方法の検討作業が不要です。これにより、荒取りから仕上げまでの全ての工程において5軸加工経路を容易に作成することが可能となり、CAM作業および加工時間の短縮を実現できます。

■異形工具支援

異形工具は、ボール工具よりも大きなRで加工できることから、ピッチを大きく設定しても同一のカスプハイトを保つことができ、加工時間の短縮が可能です。特に凹凸の少ない面の加工や大物の加工で効果が期待できます。しかし、異形工具で5軸経路を作成すると、次のような課題があります。

①異形工具の角度設定が難しく、作業者の経験値に頼った作業となりバラつきが発生する。

②異形工具の大きなRを利用することが多く、先端まで活用されていない。

③複雑な工具形状であるため加工範囲が予測できず、試行錯誤が必要となる。

次にこれらの課題を解決できるSpace-Eの機能について説明します。

・工具の接触位置を利用した傾き角度の自動設定

Space-Eは、加工物との「接触位置」によって、工具の最適な傾き角度を自動設定できます。加工に使用したい工具の場所(接触位置)を指定するだけで、工具の利点を最大限に生かした最適な傾き角度が短時間で算出され、全自動で設定できます。これにより、5軸加工の経験が浅い作業者でも、短時間で設定できるようになります(図2)。

 図2  工具の接触位置を利用した傾き角度の自動設定
図2 工具の接触位置を利用した傾き角度の自動設定

・先端Rを活用した隅部加工

Space-Eでは、隅部加工に特化している3軸経路の「隅取り」 「面沿いオフセット」「複合面沿い」を異形工具の5軸経路へ簡単に変換できます。これにより、異形工具の先端Rを活用した5軸での隅部加工が可能になります(図3)。

 図3  先端Rを活用した隅部加工
図3 先端Rを活用した隅部加工

また、ボール工具より剛性のある工具先端を活かし、たわみを抑えた高精度な加工ができます。これにより、隅部加工の時間短縮を実現するだけでなく、異形工具の利用範囲を拡大できます。

・工具形状による加工可否の予測および経路による加工済み範囲の抽出

CAMで設定した加工機の情報や異形工具の形状をもとに、CADのモデル上に加工可否を点群で表示できます(図4)。加工できる箇所は緑色の点群が表示され、経路が作成できなかったり、工具が干渉したりする場合は加工できない箇所として赤色の点群が表示されます。この点群により加工可否を予測することで、異形工具による加工領域の作成を支援しています。また、CAMで作成した異形工具の経路から加工済み領域を抽出し、CADのモデル上に表示することも可能です。これにより、加工済みの領域を視覚的に確認しながら、後工程の加工範囲の作成が可能となります。

図4  異形工具による加工可否の予測、加工済み範囲の抽出
図4 異形工具による加工可否の予測、加工済み範囲の抽出

以上のことから、異形工具による試行錯誤を減らし、作業者をサポートする機能がSpace-Eに揃っていることが分かります。

加工事例

自動割り出し(荒取り・中取り)、自動5軸仕上げ加工

図5に示す入れ子の加工は、自動割り出しによる荒取りと中取りの事例です。図6に示す切削サンプルの加工は、傾斜スライドの自動同時5軸仕上げの事例です。すべての工程で、補助面作成、加工方向や加工軸制御の検討が不要となります。その結果、手動による割り出しの経路作成に比べて、荒取りおよび中取りでは84%、仕上げでは91%のCAM作業の短縮となりました。また仕上げ加工の品質を割り出しでの仕上げ加工と比べると、一定のピッチで均一な加工目となり、境目のない加工面で高品質な加工を実現しました。

図
図5 入れ子の自動割り出しによる荒取り・中取り加工のCAM作業時間の削減効果
図
図6 切削サンプルと自動5軸仕上げ加工のCAM作業時間の削減効果

異形工具の加工事例

図7で示すエンジンカバーの仕上げ加工は、異形工具による事例です。表2に示す5本の異形工具で仕上げ加工を実施しました。

図
図7 異形工具によるエンジンカバーの仕上げ加工
表2 仕上げ加工に使用した5本の異形工具
表2 仕上げ加工に使用した5本の異形工具

側面(立ち壁)部や底面部では、異形工具の大きなR部を活用しながら、隅部では先端の小径Rまでを用いた加工を行うことで、大幅な加工時間の短縮を実現しました。図8に示すように、通常のボール工具による加工時間に比べ、約76%の加工時間を短縮できました。

図8  異形工具による仕上げの加工時間の削減効果
図8 異形工具による仕上げの加工時間の削減効果

今後の展望

今後もNDESは、「省人化につながる5軸加工」がスタンダードになると考え、最新のIT技術に注力しながらSpace-Eの開発を推進していきます。さらに、お客さまと共に課題を解決しながら、Space-Eを通して「CAMの自動化」および高精度・高品質加工の実現に取り組んでいきます。