株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ 製造ソリューション事業部 技術開発部 商品推進課 若原 朋子 |
はじめに
2012年、私たちはCAD/CAMシステムの基礎開発の拠点として、マニファクチャリングラボを沖縄に開設しました。そこでは、新たなものづくり技術の研究開発に取り組むため、一般社団法人ものづくりネットワーク沖縄様と協力して進めてきました。さらに2021年には、Mold Future Space - OKINAWA(以下、MFS-OKINAWA)を新設し、製造業に関わるさまざまな方と連携を図り、ものづくりの自動化を推進するための取り組みを開始しました。まずはその一環として3軸加工に着目し、CAMにおける操作の省力化と最高品質の加工を実現することができる新商品「Space-E/CAM 2022」の販売を開始しました。
ここでは、Space-E/CAM 2022の特長である「高品質・高能率加工」と「最適な操作性」についてご紹介します。
高品質・高能率加工
優れたCAM演算ロジックによる高品質加工
Space-E/CAM 2022から採用するCAM演算ロジックは、複雑な曲面形状を忠実に再現できる優れた特長があり、従来のSpace-Eで培ったCAMのノウハウと統合することで、CAMにおける論理演算の最適化を図りました。従来のSpace-Eでは、経路を作成するモデル形状をポリゴン要素へ一度変換して参照していたため、不均一な構成点の経路になっていました。それがSpace-E/CAM 2022では、サーフェイスそのものを参照できるため、均一な構成点の経路を作成することができます(図1)。これにより、複雑な曲面でもなめらかな経路が作成できるようになり、高精度・高品質な加工を実現できます。

ラジアスエンドミル有効活用による高能率荒加工
ラジアスエンドミルを使い効率的に荒取りできる加工モードを搭載しました。これにより、ワークの外形をオフセットした周回経路が作成でき、工具全面を利用した加工の際、工具の性能を最大限に発揮します。コーナー部には工具負荷を優先するトロコイド円状の経路と、加工時間を優先する取り残しを考慮した経路を出力できます(図2)。

高精度なストック自動認識による高能率加工
加工が完了した形状と加工が途中の形状からストック(取り残し)を認識し、自動検出した加工領域で経路を作成できます。そのストック自動認識には「速度優先(Zmap)」と「精度優先(Multi)」の2種類があります(図3)。「速度優先」は、荒加工で経路計算を早く行いたい場合に選択します。「精度優先」は、仕上げ加工で形状の細部または立壁を認識したい場合や、工具の突き出し長さを算出したい場合に選択します。

ツーリング干渉回避による高品質加工
工具の突き出し長さに合わせてツーリングの干渉を回避する効率的かつ高品質な加工が可能です。指定したホルダ・工具の突き出し長さで干渉する場合は、干渉を回避した形状を自動計算し、最適な加工経路を作成します。従来のSpace-E方式は、干渉箇所で経路を切断することになり回避動作が多くなっていました。新しい方式では、干渉を回避するための移動距離が最短になり、連続した加工ができます。さらに、未加工の領域は自動認識して次の工程の加工経路を作成できるので、 オペレーターの手間を削減できます(図4)。

最適な操作性
優れたユーザーインターフェースによる最適な操作性
ユーザーインターフェース(UI)の最適化を行い、誰でも簡単に操作できる高いユーザビリティを実現しました。
CAMのメインパネルでは、モデル、加工工程全体の流れ、加工条件、経路の確認など一連の作業を1つの画面で行うため、さまざまな情報を一目で把握できます。また加工範囲、工具、加工条件などの設定を1つの機能パネルに統合し、入力や確認が必要な項目を分かりやすく表示します。これにより、初心者でもスムーズな操作が可能です(図5、6)。
CAMの設定時間は、従来に比べ約60%短縮します(図7)。



おわりに
従来のSpace-Eをご契約中のお客さまは、新商品のSpace-E/CAM 2022への移行を無償で行えます。また、従来のSpace-Eで作成した加工工程を取り込んで流用することができるため、新システムへの移行を円滑に行え、蓄積したノウハウをすぐに活用できます。現場の即戦力となるSpace-E/CAM 2022で高品質・高能率加工を実現します。今後は、5軸加工用のCAMシステム、CADシステムのリリースを予定しており、新商品の拡充を行います。MFS-OKINAWAを通して、さらなるCAD/CAMシステムの進化を続けていきます。新しいSpace-E/CAM 2022にご期待ください。
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