CAD/CAM統括部 開発部 グループマネージャ 鯵坂 昌広 チームリーダ 小澤 宏明 グループマネージャ 田中 誠 |
Space-E Version 5.0(以下、Ver.5.0)を5月末にリリースいたします。
Ver.5.0では、金型設計・製造における最適な3Dデジタルエンジニアリング環境をご提供することを目的に、新機能の開発、および既存機能の改良に取り組んでいます。本稿では、その一部を抜粋してご紹介いたします。
Space-E/Modeler Ver.5.0
Space-E/Modeler Ver.5.0(以下、Modeler)のテーマは、解析(CAE)・測定(CAT)・検査(CMM)との連携強化です。
そのために、まず、3Dモデルの構成要素に大容量点群やSTLを加え、これらの編集機能を装備しました。
また、プレス金型用のスプリングバック解析(CAE)とSpace-Eの強力な複合面変形(レ・フィット)機能と直結させて、ダイフェース形状に対するスプリングバック見込みを自動化しました。
この他、図面化作業の効率化とミス防止のため、3Dモデルと図面(寸法線・記号)の連動性の向上を図り、順送プレスの工程設計のための専用機能の充実化にも取り組んでいます。
64ビットOS対応
64ビットOS(WindowsVISTA,Windows7)に対応しました。これまでメモリの制限によって扱うことができなかった大規模モデルをストレスなく扱うことが可能になります。
点群・STL生成
点群とSTLを、それぞれ点群要素、STL要素として、従来のワイヤ要素やフェイス・ボディ要素と同じように扱えるようにしました。
大量の点群を取り込んで、ノイズを取り除きながらSTLを自動生成したり、STLの局所的な凸凹(デコボコ)や欠落を専用の編集機能で修正したりすることもできます。
ベストフィット機能
点群、またはSTL要素と、CAD面を重ね合わせて、双方のズレが最小になるように位置合わせすることができます。この位置合わせ機能は、合わせ方向(移動軸や回転軸)が限定されている場合にも柔軟に対応します。また、点群やSTL要素内の極端に大きなノイズ(特異点)は、位置合わせの計算対象から除外すことで、より正確に安定した位置合わせができるように工夫されています。
スプリングバック解析(新商品)
Modelerに組込まれたスプリングバック解析(ワンステップ法)によって、プレス成形品のスプリングバックの傾向を簡単に確認することができます。
スプリングバック後の形状は、STL要素として登録されますので、そのままベストフィット機能(前述)で位置合わせしたのち、レ・フィット機能に取り込んで、ダイフェースに対してスプリングバックを見込むことができます。
3D形状と連動した寸法線の自動更新
3D形状が変更されると、その投影図(図面)に引き出した寸法線・記号が自動更新されます。3D形状の変更によって、基準線が消失してしまった寸法線は更新することができません。
このような寸法・記号の更新漏れを防止するため、システムは更新不能な寸法線を検出すると、それを赤く強調表示してオペレータに手作業による修正を促します。
キャビ・コア分割スライド対応
簡易キャビ・コア分割機能には、従来から、分割漏れや分割間違いを確実に見つけていただくために、型開きシミュレーション機能が装備されています。 Ver.5.0では、従来の、固定側(キャビ)面と可動側(コア)の型開きに加え、スライド面についても、それぞれ設定したスライド方向に型開きすることが可能になります。
トリム展開(コンディション表示)
余肉面に展開されたトリムラインを、その部位によって異なるトリムコンディション(余肉面にトリム型の切刃が入る角度の大きさ)に応じて、カラーマップ表示します。基準軸を変更しながら、トリムコンディションの変化の様子を視覚的に確認できるので、プレス方向の検討に活用することができます。
順送プレス金型の工程設計機能
順送プレスの工程設計のための専用機能を追加しました。成形品形状の表裏自動分割機能。中立面を考慮しながら複数の曲げ部を一括展開する曲げ展開機能。順送2個取りやペア要素対応など多彩な配置モードを考慮しながら歩留り計算を行う板取り機能。2Dスケッチを用いて抜き・曲げなどの工程構想設計を行う工程レイアウト機能などがあります。
Space-E/Mold Ver.5.0
Space-E/Mold Ver.5.0では、お客様が長い時間をかけて蓄積された設計標準のプラットフォームになるべく、ユニット部品ライブラリを中核にした基本的な金型設計フレームワークの改良に取り組みました。
また、設計した金型の成立性をその場で検証いただくために、動的シミュレーション(干渉チェック)機能を追加しました。
金型標準部品ライブラリの充実化
金型部品メーカが販売している金型標準部品(約2700個)を、部品ライブラリに登録しました。お客様は、独自に作成した準標準部品と金型部品メーカの標準部部品を組み合わせて、独自のユニット部品ライブラリを効率的に構築することができます。
追加工コード対応
ひとつの部品に、標準の部品コードに加えて、追加工コードも定義できるようになりました。
ユニット部品の置換機能
すでに配置されているユニット部品を、他のユニット部品に置き換えることができるようになりました。置き換えられたユニット部品には、もとの部品の寸法や拘束条件が自動的に引き継がれます。
Excel(VBスクリプト)による部品編集機能
例えば、お客様の金型構想仕様書や穴表に従って金型を自動設計するといった、より高度なカスタマイズの要求にお応えするため、Excelのスプレッドシートに記述したVBスクリプトから、直接、ユニット部品の寸法や拘束条件にアクセスして、その値を変更できるようにしました。
ユニット部品編集の高速化
ユニット部品の寸法や配置位置を編集する時の待ち時間を大幅に短縮しました。
下図にVer.4.5(前バージョン)とVer.5.0の編集時間の比較を示します。Ver.5.0では部品数の増加による編集時間への影響が大幅に軽減されています。
金型機構シミュレーション(干渉チェック)機能
初期設計・成立性検証・設計変更という金型設計者の検討サイクルを支援するため、金型機構シミュレーション機能を追加しました。
ユニット部品どうしの位置関係を拘束している距離や角度を、時間の経過に合わせて連続的に変化させることによって、金型の機構動作を画面上に再現します。機構動作中に部品どうしの干渉を検出すると、その場でシミュレーションを中断して、干渉箇所をハイライトします。
タイムチャートには、複数の部品の動きを時系列に指定できますので、例えば、型開きにおける、可動側ユニットの移動、その後のエジェクタユニットの移動という一連の動作をシミュレーションすることができます。
Space-E/CAM Ver.5.0
Space-E/CAM Ver.5.0では、今まで、多くのお客様からご要望いただいた2次元加工の自動化・省力化に取り組みました。また、主要なCAMエンジンを改良して経路品質や信頼性の向上に取り組みました。
形状認識によるフィーチャ加工機能
金型設計が3次元で行われるようになったことを背景に、多くのお客様から、その後の2次元加工も、従来のように図面や穴表を介するのではなく、直接3Dモデを活用することによって効率化やミス防止を図りたいというご要望を多くいただくようになりました。
フィーチャ加工機能は、こうしたご要望にお応えするために開発されたもので3Dモデルから自動抽出した穴やポケットに対して加工工程を自動作成することができます。Ver.5.0では、Space-E/Moldで設計された穴とポケットを統合し、同様の操作で加工工程が生成できるようになりました。
・色による加工情報認識
データ変換によって取り込まれた3Dデータに対しては、加工形状を自動認識するとともに、ソリッドの面についている色から、穴種や公差といった加工情報を認識して加工データを作成することができます。
・加工工程の編集
フィーチャ加工機能は、加工形状を自動認識したり、Space-E/Moldの設計情報を参照したりすることによって、ひと通りの加工工程を自動生成します。しかしながら、特に複雑な複合段差形状になると、やはり熟練者が、加工効率や仕上がりを考慮しながら、加工工程を微調整しなくてはいけないケースがでてきます。
そのために、Ver.5.0では、まず、システムが自動生成した加工工程をフィーチャパレットに解りやすく表示して、さらにドラッグ&ドロップを中心にした直感的な操作で、各工程の加工方向や加工順番を変更できるようにしました。
例えば、ポケット加工の前に穴加工を行いたい場合、フィーチャパレットに表示されたツリー上で穴加工工程をポケット加工工程の前にドラッグするだけで、加工開始高さが自動調整されます。
また、加工方向が変更可能な加工部位については、フィーチャパレットのツリー上から加工方向を変更できます。そのとき選択可能な加工方向をシステムがナビゲートします。
・干渉穴の確認と切削条件の変更
穴どうしの干渉を検索して表示することができます。また、交差部の切削速度を制御するG01の穴あけ加工にも対応しています。
STLに対する加工データの作成
3次元デジタイザなど測定器の普及を背景に、お客様からは、測定点から作成されたSTLを直接加工したいというご要望を多くいただいています。このご要望にお応えするため、Ver.5.0では、STLとCAD面が混在した3Dモデルに加工データが作成できるようにしました。
64ビットOSに対応していますので、大容量のSTLに対しても、ストレスなく加工データが作成できます。
最適化機能の強化
加工形状に対する最適な首下長さや、ホルダ干渉部での経路分割といった、最適化機能の計算精度は、前工程で削りだしたストック形状の精度に依存して決まります。
Ver.5.0では、システムが経路計算後に生成するストック形状の高精度化を図るとともに、最適な計算ピッチを入力していただくためのアシスト機能を追加しました。
・計算ピッチの適正化
使用工具、モデルの大きさ、その時使用可能なメモリの状態から、計算ピッチの上限値を表示します。これを参考にして適切なピッチを設定することができます。
ストックの精度が向上したことによって、必要有効長の算出やホルダが干渉した部位に対して、正確な経路編集が行えます。また、多軸加工時に高精度なストックで処理するモードを追加しました。
割り出し加工機能の強化
3.5軸加工では、加工座標系を設定するときや経路計算前に、設定ミスを防ぐための警告表示や経路の自動調整ができるようになりました。例えば、加工座標系の変更により、回避高さでの移動経路がモデルに干渉する場合は、自動的にモデルに干渉しない高さで経路が作成されます。また、5軸工作機を指定していた場合は、工作機が回転できる軸を考慮して最適な加工座標系の設定ができます。
5軸経路編集機能の強化
経路エディタで工具軸を編集するとき、工具の傾き角度を複数個所に設定すると、角度がなめらかに変化する経路ができます。
3Dプロファイル加工機能の追加
プレス金型加工に必要な3Dプロファイル加工と、経路作成が難しいとされる切り刃段差のアンダーカット部に対して、Tスロットで加工する経路が作成できるようになりました。
既存機能の安定化および機能追加
既存の3軸加工機能についても、さまざまな改善を行っていますので、その一部をご紹介いたします。
・特殊隅取りの改良
経路のパターンに螺旋モードを追加しました。計算時間も従来の約半分で計算できます。
・螺旋モードの追加
等高線仕上げ機能に螺旋モードを追加したので、ピック部のない一筆書きの経路が作成できます。
・残り代の改良
等高線仕上げ、走査線仕上げなどの残り代では、工具の径方向と軸方向を別々に設定できます。
・回避最短ルートの拡張
補助機能や経路エディタにも対応することで、作成済みの経路を最短ルートに変更できます。
・ワイヤーカットの3Dモデル対応
3Dのソリッドモデルを対象に上下異形状の加工データが作成できます。
Space-E CAA V5 Based R20
CATIA V5 R20に対応した「Space-E CAA V5 Based R20」を平成23年(2011年)7月にリリースいたします。
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