サービスインのお知らせ
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ 製造ソリューション事業本部 クラウド技術開発統括部 技術部 第一サービス課 木村 雅裕 |
はじめに
2019年9月にサービスインしたManufacturing-Space® Version 4.4(以下、Ver.4.4)では、各種サービスの品質向上、利便性向上に取り組みました。本稿では主にVer.4.4の概要についてご紹介します。
データコンシェルジュサービスの利便性を向上
データ管理サービスのデータコンシェルジュサービスは、クラウド上でファイル共有するだけの単なるオンラインストレージではなく、データのバックアップや社内の情報共有はもとより、各種CADファイル、Officeファイルのプレビューやファイルの履歴管理、お取引先さまとの高セキュリティーなデータ授受といった製造業分野のお客さまに特化したデータ管理の機能を備えています。
Ver.4.4では、各種プレビューについて機能改良を実施し、セキュリティー機能については操作性の向上を図りました。
プレビュー機能では、大きく3つの改良を行いました。1つ目の改良は、CADビューアーの対象ブラウザーであるInternet ExplorerとGoogle Chromeの操作の統一です。どちらのブラウザーでも同一の操作でCADモデルのビューイングができるようになりました。また、Google Chromeでは利用できなかった測定機能の3点角度、勾配、曲率、2面間角度、半径の測定が、Internet Explorer同様に利用できます(図1左)。
2つ目の改良は、Officeファイル(PowerPointやExcel、Word)のプレビュー品質の改善です。これまでのプレビューは、表示のずれや図形の変形などが発生し、Officeソフトで開いて表示された結果とは異なる場合がありました。Ver.4.4ではOfficeファイルのプレビュー時にMicrosoftのOneDriveと連携することにより、Officeファイルを正しく表示できるようになりました。OfficeソフトがインストールされていないPCやタブレットでも違和感なくデータの確認ができます(図1中央)。
3つ目の改良は、プレビューの対象にSpace-E/CAMの加工指示書を追加したことです。これにより、加工指示書と経路を合わせプレビューできるので、一連の加工条件などを現場で容易に確認できます(図1右)。
その他には、データコンシェルジュサービスをご利用いただいているお客さまからの要望が多かったセッションタイムアウト時間の変更に対応しました。フォルダのアクセス権限では、グループ別、個人別でしか設定できなかった権限が、グループに個人を追加できるようになり、より柔軟な設定ができるようになりました。



類似形状検索サービスの検索機能を強化
類似形状検索サービスは、AI技術を活用してCADデータを検索できるサービスです。
Ver.4.4では、絞り込み検索の強化を実施しました。モデルの体積を利用した検索結果の絞り込みや検索対象フォルダーの指定に対応しています。これにより、検索したいCADデータをより早くより簡単に見つけることが可能となり、見積もり作成のスピードや精度の向上、過去データの有効活用につながります。
類似形状検索サービスの効果
皆さまは、このような経験はありませんか。金型製作の見積もり依頼を受けた際、過去に似たようなモデルの仕事を受けた覚えがあるので、そのデータを参照しようとしたことです。過去のデータを見れば見積もりの根拠や概算、当時のメモ、注意点なども参照できます。しかし、数年前に受けた仕事のデータはなかなか見つけることができません。会社ごと、年度ごとなどでフォルダーを管理していてもファイルを一つずつCADなどで開いて確認するとなると非常に手間がかかります。また、ハードディスクの容量不足で削除していたり、PCの買い替えや故障の際にデータを移行していなかったりするケースもあります。過去のデータが見つからず、参考データがない状態で見積もりを作成する場合、型設計費や部材購入費、加工費、組み立て費、運搬費などを初めから検討することになり、担当者や業者への確認に時間も手間もかかります。
その課題は、データコンシェルジュサービスと類似形状検索サービスを利用することで解決できます。過去データを一元管理し、似たような形状を素早く見つけることができます。過去データ(加工工程、見積もりなど)を活用し作業効率を向上させましょう(図2)。
オートサーフェスの変換品質を向上

リバースエンジニアリングサービスのオートサーフェスは、測定データをCADデータに自動で変換できるサービスです。手作業ではどうしても発生してしまう品質のばらつきを抑えることができます。
Ver.4.4では、変換品質の向上に対応しました。3Dスキャナーで測定したデータは、メッシュの自己干渉やノイズなどリバースエンジニアリングで利用する際に作業を阻害するエラー要素が含まれることが少なくありません。お客さまのデータを使用したオートサーフェスの変換テストにおいても、約3割はこれらのエラー要素が原因で変換に失敗しており、手作業での修復作業が必要でした。Ver.4.4で、エラー要素の自動修復とメッシュの軽量化に対応したことにより、変換の成功率が向上し、よりシームレスな測定データのCADデータ化を実現しました。
モデルの種類・用途によって変換パラメータを変えたいという要望に対し、「標準」「機械部品」「意匠系」「生体」の4つをVersion 4.3sp2から設定できます。目的に合わせたCADデータに変換することで、その後の作業効率が向上します。
形状抽出や再現精度を高めたい場合は「機械部品」を、曲面の流れの抽出を優先したい場合は「意匠系」を、軽量で面数が少ないデータを作成したい場合は「生体」を選択しましょう。例えば、人体モデルやマスコットモデルのように形状の再現精度よりも面数が少ないことを優先したいケースでは「生体」を選択します(図3)。
おわりに
製造業のお客さまでは人材不足に対する課題を抱える企業が多いという統計があります。このような課題を抱えるお客さまにもお薦めしたいのが、クラウドサービスです。今後もお客さまの利便性・作業効率向上を目指し、役立つサービスの改良・開発に努めてまいります。クラウドサービスで課題解決を検討されていましたら、ぜひお問い合わせください。
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