天昇電気工業株式会社様は、テクノロジーの進歩とともに、情報化・機械化のスピードにますます拍車がかかる中、たえず技術力に磨きをかけながら、プラスチック業界のパイオニアとして数々の製品を送り出してこられました。また、地球環境との共存も重要課題として取り組まれています。
今回は、Space-E導入の背景、3D化の取り組み、導入による効果、今後の課題などを中心に、金型製造部 部長 紺野様、所長 加藤様、生産本部 武藤様、設計担当 佐藤様、佐久間様、鴫野様、斎藤様にお話をお伺いしました。
事業概要
OA機器の外装部品や機能部品を総称して機構部品と呼んでいますが、これらの金型製作・製造などを、福島工場で行っています。
また、自動車関連部品、大型コンテナー、健康機器製品なども取り扱っています。
当社は「5S」(清掃・清潔・躾・整理・整頓)に礼儀作法をひとつ加えて「6S」とし、その指導を徹底して行っています。
来客の際には、起立して挨拶をするよう社員に指導していますし、現場の作業者についても見学にこられたお客様に挨拶をするよう指導しています。
製造業という暗いイメージを感じさせないような明るい職場作りを心がけています。
導入の背景
業界全体の3次元化が理由のひとつに挙げられます。
最近ではお客様から頂くデータの半分以上は3次元データになってきましたし、それに対応していかなければなりません。
4年前に色々なCADを検討し、UNIXベースのCADを検討していましたが、操作が困難なものばかりでした。
そこで、Windowsベースでかつハイエンドの能力のあるCADを探していたところ、Space-Eに出会いました。
Space-Eが販売されると紹介を受けたときに当社の要望を満たすものでしたのですぐに導入を決めました。
さらに導入の決め手になったのは、ハイブリッドモデラーであるということです。
これからの金型業界の動向も見据えて導入を決めました。
導入当初は3台で運用していましたが、今ではSpace-Eを使いこなせるようになって体制も整い、さらに昨年8月に2台増設して計5台で運用しています。
3D化の取り組み
■女性スタッフの採用
金型関連の企業で女性スタッフの採用に積極的な会社は少ないと思います。
しかし当社では、金型設計において女性ならではの独創性や感性に期待しています。
今は女性3名、男性4名で3次元設計業務を行っていますが、今後も女性スタッフを増やしていこうと考えています。
■活躍の場
弊社では、お客様から図面を頂いて技術・品質管理の担当者とともに3次元担当という立場でお客様との打ち合わせを行っています。
その後社内でどのような金型を製作するかを協議・検討して構想設計を行います。
そしてCAMデータにするために詳細図も含めて検討し、CAMの工程に渡して機械加工を行って仕上げに移るという流れになっています。
また、2次元CADでの打ち合わせ、3次元から2次元への落とし込みの作業も必要になります。
金型設計の工程だけではなく、データを作成する工程にも参加しています。
■CADを通して
私たち女性が金型工場の現場に出て金型を製作したり大きな金型を扱うことは難しいですが、設計・モデリングを通して『自分で"モノづくり"をしている』という実感を持てるので大変やりがいがあります。
大型の金型でも、詳細な金型でも3名でチャレンジしていきたいと思っています。
工程の効率化
ある時期からCAD/CAMの分業化を考え始めました。
従来はCAD/CAMは一緒に作業していましたが、今は設計する側がモデリングだけを行うように分業していますので、スピードアップに繋がっています。
また、製作する金型は加工しやすく組み立てやすいものでなくてはなりません。
ですから、設計の段階から加工の担当者と組み立ての担当者も一緒に検討していきます。
違う工程の作業者が、どのような目的で同時に検討作業を行っているのかを、お互いに考慮しながら検討していくことが大切です。
そのようなことがミスを無くし、作業をスムーズにするために必要だと思います。
以前は部品の干渉などをチェックすることを主な目的として3次元データを利用していました。
その当時は、お客様から2次元のデータを頂いていましたので、そのデータを元に3次元のモデリングをして干渉チェックを行っていました。
今では、お客様のほうから3次元の製品データが支給されますので、3次元データをおこす手間が省けるようになり、直接干渉チェックなどを行えるようになりました。
導入による効果
■Space-Eの利点
Space-Eのデモを初めて見たときに使いやすそうなソフトだなという印象を持ちました。
実際にHZSで1日の講習会を受け、基本操作は1ヶ月ぐらいで覚えることができました。
Space-Eは大まかな形状を作成してブーリアン演算で形状を削っていくような手順でモデリングできるので、金型製作用のCADとして適していると思います。
通常お客様から3次元形状をサーフェイスで頂く場合はそのままサーフェイスで使っています。
Space-Eの場合はそれ以外のものはすべてソリッドに直して作業できるなど、サーフェイス/ソリッドの使い分けができる点も非常に便利で時間短縮に繋がっています。また、サーフェイスについても操作方法が容易でモデラーとして使いやすいと思います。
3次元のモデリングに関して特に苦労したことはありませんし、楽しく作業しています。
■構想設計
3次元化したことによって構想設計も3次元で行なうことができるようになりました。
部品を組み立てて金型の構造を作り、3次元のモデリング作業と並行して検討作業ができるように、設計者も含めて構想設計を行っています。
今まで2次元から始めていた作業が、導入後は3次元から始まって2次元の図面を描くという流れになりましたので色々なメリットがあります。
3次元から始めていますので図面も簡略化され、その分時間も短縮できますし、工程の流れもスムーズになりました。設計の工程だけでも以前より35%ぐらい効率が良くなりました。
今後の課題
■スタッフの強化
さらに女性の職場としてCADのスタッフを拡大することを検討しています。
また、CADのスタッフがSpace-Eを推薦しているので、その声を反映して拡大に伴う増設はSpace-Eの導入を1番に考えています。
■設計ミスの防止
ミスが起こる割合が多いのは仕上げの工程で、設計部門が誘発したものが多くを占めています。
今後は、設計の段階で事前にミスを防げるように、設計の確立に取り組んでいきたいと思います。
■3次元データの確立
現在の金型業界では3次元に対応できないと仕事がない状態になってきていますし、我々が求めようと思っても2次元ベースで開発をしているところも少なくなってきています。
また、NCの分野はますます技術向上していますのでデータを自由に使いこなすことができないと、ついていけない状態になります。
お客様からは納期の短縮を迫られていますので、必ずしも工作機械で金型を作るということではなく、光造型などにも取り組んでいきたいと考えています。
ベースになる金型造りはできていますので、どんなものにでも対応できるように3次元データについてしっかりと力をつけ、使いこなせる体制作りに力を注いでいこうと思っています。
HZSについて
Space-Eはバージョンアップするたびに私達ユーザのニーズに応えていて操作しやすく、覚えやすいCADになっていていると思います。
今回のVer3.0へのバージョンアップでかなり機能アップしていますが、当社の求める加工が何種類かできていないところがあります。
今後もユーザの声を反映したバージョンアップに期待しています。
おわりに
今回の取材の最中にも、敷地内でお会いする皆様に挨拶をして頂きました。また、私達以外の来客の際にも大きな声で挨拶をされていました。
CAD/CAMを通してのモノづくりだけではなく、「6S」を始めとする社員育成・指導に取り組まれていることが実際の社員の皆様の行動で伝わってきました。
大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
会社プロフィール
天昇電気工業株式会社
本社 | 東京都世田谷区若林2-39-2 |
---|---|
創業 | 昭和11年5月1日 |
資本金 | 6億6千万円 |
従業員 | 約450名 |
売上げ高 | 110億円 うち金型関連20億円(平成13年3月) |
事業内容 | プラスチック成形品、各種金型設計製作、電子機器設計製作、健康医療ふとん他健康機器 |
福島工場 | 福島県安達郡安達町渋川字囲壇1番地 |
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