有限会社ウエキモールド様は、プラスチック部品全般をサポートする金型設計、製作メーカです。これまで培った技術、経験を活かしながら、新しい技術も積極的に導入され、今まで以上に短納期化、低コスト化へ挑戦されています。
今回は、Space-E、IronCADの導入の背景、その後のご利用と効果についてのお話を中心に、代表取締役 松尾八郎様、設計 落合栄章様にお話をお伺いしました。
事業概要

松尾 八郎 様
当社は、弱電から雑貨、自動車まで、オールマイティにやっているプラスチック金型設計、製作メーカです。
仕事の受注は、依頼元から指名されることが多く、ほとんどの仕事は口コミで決まっています。
設立当初から、とにかく良いものを造り技術評価をしてもらって、依頼して良かったと言われるように頑張ってきました。会社を設立して5年目ですが、取引先は毎年増えています。
導入の背景
■導入のきっかけ
昔から汎用機を使い、計算と手法でいろいろな形状を造り出してきました。それでクレームがついたことは一度もなかったので、最初は3次元CAD/CAMはいらないと思っていました。
ところが2年前に、あるメーカさんから当社が使用しているCAD/CAMシステムについて問い合わせがありました。3次元CAD/CAMを持っていないこと伝えたら、そのとき、10型ぐらいの予定が入っていたのですが、2型だけになってしまいました。このままでは、仕事が無くなってしまうという危機感を感じ、3次元CAD/CAMを検討することにしたのです。
それから、いろいろなCAD/CAMシステムを検討し、保守料、ソフトの価格を考えて、あるメーカのCAD/CAMを導入しました。その当時、設計は別の設計事務所に依頼していましたので、導入したCAD/CAMはCAMをメインに使うつもりでした。
設計事務所から専属で当社の設計をしていたのが、落合くんで、彼が設計用のCADを選定していました。
■設計用CADの選定

落合 栄章 様
設計事務所に所属していたときから、現実に、3次元データを元にした仕事が入ってくるので、CAD/CAMを持っていないと、全くデータが読めず寸法が分からないわけです。自分で角度を取って、計算していくと、これだけで莫大な時間がかかり、非常に悩んでいたときに、HZSからSpace-Eを借りてテストすることになりました。
最初は、個人で所有することも考えていましたので、支払のことを念頭において、何種類かのCADを探し、体験版を取り寄せたりしたのですが、Space-Eのようなクラスになると体験版自体ないわけです。また、実際それを評価するときに会社で購入するか、個人で購入するかの枠が違うので、ここで失敗したら後がないわけですから、絶対に間違いのないものを探さなければいけないという思いで必死でした。
そういうときにウエキモールドに入社することになり、選択基準の幅が広がったので、本当に自分の考えに合うものを選べるようになりました。逆に中途半端なものは選べないというプレッシャーになって、納得いくまでSpace-E、IronCADを含めた数社のソフトをテストしてみました。
主に注目したのは以下の点です。
- 幅広いファイル形式の入出力
- モデラーとしての本来のスペック
- 3次元から2次元への変換機能
その結果、Space-E、IronCADが一番良かったので導入することにしました。またWindows版ということで一番操作性も良く、今使っている2次元CADと変わらなく操作できます。凝ったCADだとメニューが階層になり、使いたいコマンドにたどりつきにくく、馴染めなかったというのも要因のひとつです。ソフトの能力が高くても、覚えるのに時間がかかっていては、何もならないからです。
Space-EとIronCADの利用について
■Space-EとIronCADの役割
自動車関係から弱電まで金型設計でSpace-Eを使っています。2次元図面からデータを起こして、それを元にモデリングするパターンの他に、3次元モデルをいただいて、金型の構造、配置などを決めて、それを2次元に落として現場に流したり、あるいは、3次元データのまま加工に渡したり、いろいろなパターンがあります。
当初は3次元に関して何も分かりませんでしたので、デモなどの情報収集の結果、IronCADが設計に良いのではと考えていました。実際、IronCADはファイルの入出力の窓口が非常に広く、3次元から2次元にする手順も簡単で、また部品の配置関係も強いソフトなので狙いにぴったりだと思っていました。ただ、IronCADだと、最初から3次元設計になるので、いただいたデータに対して、最初から3次元で配置を割り当てることになります。今までのやり方として2次元で配置をして、そのラインをもとに3次元でモデリングしてという流れを作っていたので、IronCADで最初から3次元設計というのが馴染めませんでした。そういう思いと、仕事の都合でIronCADよりもSpace-Eを先に覚えることになり、今では2次元的な考えでSpace-Eでモデリングして、その3次元モデルをIronCADに取り込んで2次元図面にしているという流れになっています。




■2次元への変換
3次元モデルから2次元のラインを抽出したときに、2次元CADで使えるラインが出るのかという問題は選定するときにありました。絵は見れて、点も取れるけど実際Rとして認識できるのかという細かい部分が分かりませんでした。その設定もやっと分かり、Space-Eのアレンジモードで2次元のラインを出し直して、2次元CADでそのまま加工のラインまで出せるようになりました。
全て3次元で処理すると加工データの作成が追いつかなくなり、機械が止まることがあるので、2次元で処理した方が早いこともあります。
■Space-Eの習得
始めから講習を受けずに、自分でいろいろ操作しているうちに出てくる疑問を質問するという方法でSpace-Eを覚えました。最初は何も分からない状態ですから、大変でしたが、理想的な覚え方だったと思います。その後の講習は半日でした。
導入の効果
■仕事量のアップ
導入する前から売り上げは伸びていましたが、Space-Eを導入して仕事量は30%増えています。データ化しているものは全部Space-Eで行っています。それによって、効率がかなり良くなり、結果は出ています。数字的なものでは、従業員7人で月1千4百万平均の売り上げです。
■加工の短縮
設計だけでなく、加工がかなり短縮できています。今までは2次元設計だったので、加工で3次元の部分を2次元半で加工したり、いろいろな方法でやっていたのが、3次元加工で一気に短縮できたことが大きいと思います。形状を理解するのに時間がかかっていたのが、画面に表示されたものがそのものですから、3次元設計が終わった時点で、完成した気持ちになります。
■組み付け時間の短縮
それから一番大きな利点は、金型を組んだときの余分な部分の干渉が少なくなったことです。これまでは、実際の組み付けのときにしか分からなかったので、型の修正に徹夜することもありました。Space-Eで実際に当たる当たらないというのを確認できるようになり、組み付けが非常に楽になりました。これは大変大きいな効果です。
■機構の動きの確認
金型という固定概念を覆すような斬新なアイデアで、新たな挑戦をしていますので、機構の動きを確認するのにもSpace-Eを使っています。これにより他社が造りきれないものを造れています。
■立体での安心感
立体化することで安心感のうえで設計できるようになりました。複雑な設計になると、よく見えない部分でトラブルがありますが、それを事前にチェックでき、造る前に注意しなくてはいけないポイントまで見れます。
■CAD、CAM、高速加工
ある仕事で、受注先の依頼で数回作業をストップすることがありました。これは普通ではとても納期には間に合わないと思いましたが、工程を変え、省くところを調整して納期に間に合わせることができました。早く終わった理由はCADとCAMと高速加工の3つの要素があったからだと思います。
■全体のバランス
Space-Eを導入しなければ、現状の仕事をこのような短時間には終わらせることはできませんでした。また設計だけでなく、加工の能力、段取りの能力、これが合体したときにはじめて良い仕事ができます。
いくら良い設計図を書いても型技術がだめなら良いものができないのです。逆に型技術が良くても設計がだめでは良いものはできません。双方同じような技術力が必要です。今はSpace-Eを使う優秀な人材や加工の技術力共にバランスが取れています。
今後の課題、展開
■サーフェイス機能の習得
Space-Eを導入して半年ぐらいですが、入れてすぐに設計しないといけない状態だったので、結局使っているのはソリッドのコマンドがほとんどです。Space-Eはサーフェイスが強いモデラーなので、サーフェイス機能を習得すれば、仕事の幅が広がるのではと思います。
■データの取り込み

いろいろなCADデータの取り込みが問題で、それが頭の痛いところです。メーカさんからいただくデータを取り込むと、面落ちしていたり、Rが抜けていたりします。元データはいいのでしょうが、同じCADを持っていないので、データの取り込みの時点でそういう現象が起きます。いろいろなメーカさんの依頼を受けていますので、CADを同じにすることはできません。そのため、データ変換はこれからの課題です。
最近は、CATIAが多くて、CATIAの生データをIronCADでsatにしてSpace-Eに渡すという流れにしています。
■IronCADのカタログ
部品はカタログに追加できるので、リピートの部品に効果を発揮するというのは理解していますが、時間が無いということもあり実現できていません。また、金型のパターン化したモデルをカタログに入れて、アッセンブリ配置できたら新規の設計も早くなります。今はSpace-Eでコピー&ペーストしています。
■人材の増員とCAD/CAM増設
人材を増やして、設計に力を入れてSpace-Eをより良く使いこなしていきたいと考えています。
またCAD/CAMを増やすことによって、今以上の短納期化と低コスト化を目標にしています。
今は、納期が1週間単位の仕事が多くなっています。そのため、別の仕事が途中で入ると間に詰め込むため工程がぐちゃぐちゃになり、遅くまで仕事をしなくてはいけなくなっています。CAD/CAMに力を入れれば、工作機はボタンを押すだけになるので、余裕がでてきます。そうすると途中で別の仕事が入ってきてもこなせる体制になり、仕事もかなり楽になります。
■優秀な人材
優秀な人材がいないと、これからは生き残っていけないと感じています。CAD/CAMの人員を強化すれば、機械がある程度やってくれるので、あとは手仕上げの強化です。要は技術で、人間の手でしなくてはいけない作業です。現状、どこの国でも機械とCAD/CAMさえあれば、金型はできてしまうという感覚があります。しかし、その中でトラブルがあり、何がだめなのかというと人間の技術力です。やはり機械と手仕上げを組み合わせているところは良い仕事をしています。一般的には安かろう悪かろうというのが現実です。その中で、自分たちは安い仕事も請けていますが、逆に手を抜けません。
また、全てCADに頼るのも間違いではないかと思います。改造の依頼がきたとき、図面が読めなければ、3次元データをもらってからの作業になります。そうすると、この短納期の時代にそぐわないわけです。図面を読めれば、それでモデリングして持っていく。そういう能力も身に付けておく必要があります。
■積極的に設備投資
IronCADを最初に見たとき、このようなシステムを操作できる人がたくさんいると、太刀打ちできないと実感しました。そのとき、苦労して複雑な2次元図面を書いて、その2次元図面を見ながら頭で立体化して形状を理解していたのが、IronCADではポンと表示できるので、自分たちは何をしているのかと思いました。
昔のやり方にとらわれず、良い物は積極的に取り入れて設備投資していく必要があるという考え方に変わってきています。
HZSへ
型設計において、いろいろな意味でのノウハウをSpace-Eに取り入れ、現時点で出ている不具合点を少しずつでもクリアにしていただきたいと思います。最近、Space-Eがバージョンアップしましたが、機能がだいぶ良くなっています。
やはり、効率良く仕事をしていくにはHZSの力が必要なので、これからも協力お願いします。
おわりに
社員の方全員が、自主的に妥協せず納得がいくまで仕事をするというお話をお聞きし、仕事に対する熱意が伝わってきました。こちらもお役に立ちますよう努力いたします。
大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
会社プロフィール

有限会社 ウエキモールド
住所 | 福岡県鞍手郡鞍手町大字中山3024-47 |
---|---|
設立 | 1997年5月29日 |
資本金 | 300万円 |
従業員 | 7名 |
売上高 | 1億8千万円(平成13年度) |
事業内容 | プラスチック金型設計、製作 |


(カバーとスタンド)

(吹き出し口)

(お風呂等給湯の
ポンプの部品)




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