"世界一への挑戦"
事業概要

加藤 良典 様
当社は、2001年11月にアジアのタイに株式会社三幸精機の現地法人として設立し、2002年12月から創業しています。
タイへの進出当初は、会社申請・登記・BOIの投資恩典申請、建屋建設、設備調達、輸送据付試運転及び従業員採用、そして訓練指導など、毎日が手探り状態で、目まぐるしく過ぎていきましたが、ここにきてやっと軌道にのせることができました。
主な事業内容は、自動車用プレス金型(タンデム型、順送型、トランスファー型)の設計・製作・販売です。
昨今、日本及び欧米の自動車メーカーの拡大進出がめまぐるしい「アジアのデトロイト」と言われるタイの自動車産業と切っても切れない自動車用プレス金型に携わり、この現地タイで、日本の良品質の金型造りを展開しています。

Space-E導入の背景
最初に、三幸精機の本社でのCAD/CAM導入の経緯からお話します。
【GRADE/CUBE-NCの導入】
従来は、倣い加工と自動プロの半々で、NCデータは紙テープでやり取りをしていました。

山口 拓也 様
その後、高価なワークステーションの3次元CAD/CAMを導入しましたが、時代と共にハードも古くなり、レスポンスの悪さが目立ってきました。そのため、短納期でのCAD/CAMデータ作成及び、造型力のアップを図ると共にモデリングのノウハウが蓄積できる体制にするため、CAD/CAMの検討を始めました。時代の流れもあり、1996年に様々なメーカーを比較検討した結果、GRADE/CUBE-NCの導入を決定しました。この頃から、HZSとのお付き合いが始まりました。
GRADE/CUBE-NCの導入を決定した要因は、HZSのサポート体制がしっかりしていることと、ワイヤーフレームからのモデリングの容易さと、金型の見込み面修正の容易さが、弊社の望むやり方に一番近いということでした。初めは、1台導入し、徐々に4台まで増設していきました。GRADE/CUBE-NCを導入して、当時としては飛躍的な進歩を遂げることができました。
【Space-Eの導入】
Space-Eは、2000年に2台導入しました。
GRADE/CUBE-NCと比較して、モデリングの操作方法は、問題ありませんでしたが、システムが不安定なことがあったり、CAMの操作方法が変わったことによる戸惑いを抱える中、2001年のタイ工場設立にあたって、CAD/CAMソフトを何にするか大変迷いました。その結果やはり、HZSの営業所がタイあること、それから、お隣の工業団地のメイワモールドさん(株式会社明和製作所様 タイ現地法人)が、タイでもGRADE/CUBE-NCとSpace-Eを使われているということ、そして、タイ人スタッフに初期の操作方法を教育していただけるということで、Space-Eを選択し、2台導入しました。
現在、本社で5台、タイ工場で5台導入しており、来年には、もう1台増設を検討しています。
Space-E導入の効果
【標準化】
現在、CAD/CAMオペレーターは5名います。オペレーターごとに、作業方法・データ出力方法が異なると、現場は困ってしまいます。どのメーカーさんも決め事はあると思いますが、弊社では問題があった場合、現場からの要望、改善作業、要注意の箇所等、それぞれ標準書を作成し、統一化を図っています。

フロア-部品

センターピラー

センターピラー
【工程検討から面修正まで一元化】
私の拝見したタイのほとんどの金型メーカーは分業制で、工程を検討する人、面を張る人、NCデータを作成する人、と各セクションに分かれています。現場の問題・成形性・設計の不具合に対して、「なぜ?」と疑問を持ちながら作業をしているようには見えないのが感想でした。上司に言われたことをやるだけで、疑問を持たない。これでは一向に個人の能力は、引き出せないような気がします。
弊社のCAD/CAMオペレーター(現場も同じく)は、各工程の面の作成検討から精度合格まで、1品番につき1人が担当し、金型を製作する過程を実践しています。こうすることにより、各個人が考えるようになり、スキルアップにつながる上、ミスも減り、リードタイム短縮につながります。
【展開PFライン作成】
Space-E V4.4よりリリースされるトリム展開作成コマンドは、設計の材料寸法決めや工程検討時の干渉などに重宝しています。


【コマンド入力】
現場からの形状変更依頼や精度調整・絞り形状検討など、モデリングデザインの修正は、画面を見ながらリアルタイムに調整ができます。これもGRADE/CUBE-NCから培ってきたSpace-Eならではのキーボードからのコマンド入力ではないかと思います。
コマンド入力ですと、個人差はありますが、アイコンからの操作よりデザイン工数も削減できますし、イメージが膨らみ、思いもよらない効果がでることもあります。
また、タイ人スタッフへのモデリング操作説明にも、コマンドで説明が可能なので、難しいニュアンスでの説明が必要ありません。結局は、やって見せてモデリングさせながらスキルアップをしています。
教育
【Space-Eオペレーターの採用】

新工場設立にあたり、各セクションの従業員の採用から始まりました。何もかも1からのスタートで、従業員の面接は、非常に苦労しました。どのぐらいのレベルの人材がいるのか、また、この国は離職率が高いと聞いており、教えてもすぐ辞めてしまうのではないかと不安を抱えながらの面接でした。
結局、大卒でTOOL&DIE学科卒業の新卒を採用しました。
金型の勉強はしているが、実際自分のモデリングしたものを削ったことはなく、1からのスタートでしたが、逆に変な知識がなく、教えたことをそのままストレートに吸収するので、予想以上に伸びました。
まだ細かな判断はできませんが、今では4人の部下を持ち、教育指導を行っています。
【Space-Eを使用するにあたって】
CAD/CAMは、色々なソフトがあります。その中で私は、Space-Eというソフトを知りませんでした。

Mr.PATTANASAK D.
モデリングとCAMをエンジニアマネージャーの山口さんに教育してもらいました。Space-Eは、CAMとModelerが同時に使用できるので、確認や修正がしやすいと思います。
最初は、3台のマシニングセンターに対応するため、2台のSpace-Eを導入していましたが、2年目に金型の生産量が増えてきました。そこで、生産能力の拡大を目的に、マシニングセンターを2台増設し、その対応のためにSpace-Eも3台増設しました。マシニングセンターが搬入される半年前から、技術的な教育を行って準備をしていました。Space-Eは使いやすいので操作方法もすぐに習得でき、現在5台のSpace-Eは、5台のマシニングセンターに円滑で効率的にデータを供給しています。
(日本語訳 Miss.NIPAPHAN P.)
今後の展開
【スキャニング加工の確立】
昨年より、タイの他社メーカーで製作したプレス金型で、破損寸前で早急に対応しないと金型がもたず、生産ラインに支障をきたすということで、1工程目の絞り型の上型を何型か再製作することになりました。
ところが、どの金型も型基準とCADデータの基準が合っていないのと、かなり大量に手仕上げで修正をしているため、復元が不可能に近い状態でした。
そこで金型をスキャニングして再製作を考えましたが、全ての基準を一致させることが課題となりました。
CADデータ・スキャンデータ・金型の3つの基準を、どこが基準か分からない下型に一致させる方法を考案し、金型を復元することができました。現在では、問題なく生産ラインで稼働しています。
まだまだ加工できるまでのモデリングに、時間がかかっていますが、作業工数を低減させることが今後の課題です。


【Space-E/Global Deformationの活用】
製品形状をモデリングし、NCデータを作成するには、ある程度の経験があればできるようになります。
プレス金型には、スプリングバックやサーフェイス見込み修正が必須作業で、この分野が非常に工数のかかるところです。
昨年リリースされたSpace-E/Global Deformationを活用していくことで、早く楽に変形・面修正することを考えていますが、まだまだ使いこなすまでには至っていません。
短納期で品質の良い金型を製作するには、トライ回数を低減し、全てデータ化することは当たり前です。
弊社でのモットーは、タイで、なかなか守られていない、この当たり前を続けていくことです。これを続けることにより、後々に反映され、思わぬアクシデントでも型修正に早期対応できます。
【プレス金型製作について】

服部 春樹 様
私は、タイに赴任して3年になりますが、金型工場の立ち上げから始まり教育等を実施してきました。
金型に携わってきた方々は、ご存知だと思いますが、金型というのは、教育さえすればできるという物では無いため、まだまだ現場だけに任せられるというレベルには、至っていません。
しかし、データ化が進む中、今まで現場で面修正等をしていたことが、Space-Eのお陰で修正が非常に楽に早くできるようになり、現場側から、こういった工具で、こういう加工をしたいから、こういうデータはできないか、等の要望にも即対応できるので、非常に助かっています。
できれば、全てデータ化することで、ムダを省くことができるようになれば、製作時間の短縮ができるし、より良い金型作りができるようになります。
もちろん、データが全てではないので、現場作業員のレベルアップを図りながら、良い金型作りを目指していくつもりです。
今後も、HZSには色々と協力していただき、良いパートナーとして、一緒に金型作りを考えてもらいたいと思っています。




HZSへの期待
HZSには、我々の要望や不具合など、いつも快く対応してもらっています。
タイ人スタッフは、普段の要望や不具合があった時でも、なかなか発言をしないタイプが多い中、HZSのエンジニアの方がきた時は、質問や要望を積極的に話しています。
これも自分の要望に、何らかの形で答えてもらえると思っているからではないでしょうか。
タイ国内で、Space-Eを使っているプレス金型メーカは、まだ少ないですが、徐々に興味を示し、購入し始めていると聞いています。それに対して、我々もサポートできる範囲は、協力していこうと考えています。
HZSには、日本国内に限らず、海外の意見も今以上に取り入れていただける体制づくりをお願いします。それから、バージョンが異なるために発生する日本とのデータのやり取りの互換性の問題が出てきますので、日本語バージョンリリース後の英語版の早期リリース対応に期待しています。
おわりに
タイの従業員の方達と共に、Space-Eを利用した金型設計・製造の効率化を目指し、着実に成果を上げられています。HZSも、そのお手伝いができるよう今後も努力いたします。
この度は、Space-Eのユーザ事例として、ご紹介させていただくことを快くお受けいただき、ありがとうございました。
会社プロフィール

THAI SANKO SEIKI CO.,LTD.
所在地 | 90/3 MOO 9 WELLGROW INDUSTRIAL ESTATE BANGNA-TRAD (KM.36) T.BANGWUA A.BANGPAKONG,CHACHOENGSAO 24180 THAILAND |
---|---|
設立 | 2001年11月 |
創業 | 2002年12月 |
資本金 | 247,000,000 Bath |
従業員 | 53名(内3名 日本人) |
事業内容 | 自動車部品金型製造(タンデム・順送・トランスファー)、治具部品 |






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