熟練した職人の手加工と最新鋭の工作機械、このアナログとデジタルを融合しながら木型・モデル製造をメインにした世界に一点しかないモノづくりにチャレンジしている株式会社昭和製作所様。お客様に心から満足していただくためのモノづくりを常に考えられ、多種多様な要望に応えるために木型・モデル以外の新たな分野へも積極的に取り組まれています。
今回は、機械加工、手加工の技術の大切さやその想い、そしてSpace-Eの導入背景から5軸加工への展開などのお話をお伺いしました。
創業90年を迎えて
会社の創業は大正8年と古く、創業90周年を迎えました。今の社長は3代目になります。操業以来、この地で鋳造用鋳物の木型製作を事業の柱としています。メインに製作しているのは、
船のディーゼルエンジンの木型、原子力発電所用のポンプ、自動車のシートモデルです。
以前は、船のディーゼルエンジンでも長さが7~8m、高さ2~3mにもなる大物も製作していましたが、徐々に船の木型の中でも一番難しいと言われるシリンダーヘッドを受注するようになり、精度が必要な細かい仕事へと自然に変わってきました。やはり、大きなものを作るより効率が良いので、今は細かい作業が当社の得意分野になっています。
自動車のシートモデル作成にSpace-Eを採用
Space-Eの導入は7年前で、工作機械の導入は6年前です。それまでは2Dの世界だったので自動車のシートモデルも全部手加工で作っていました。シートの種類もベンチタイプやセパレートタイプがあり、座る部分、背もたれ部分、ヘッドレスト部分などのいろいろな車種のシートを作ります。
当時は、図面と3Dデータの両方が支給されて、加工も手加工、機械加工のどちらでもよかったのですが、その後、3Dデータを利用した機械加工に変わってきました。そのため、CAD/CAMと工作機械を導入しなければ、今後、自動車のシートモデルを受注できなくなる状況でした。
全くCAD/CAMのことは分からなかったので、取引商社の株式会社ヤマイチからSpace-Eがいいと薦められ、迷うことなく導入を決意しました。後になってから、関東、関西の同業者さんの多くがSpace-Eを使われていることを知りました。私が知っている限りで、同業者さんがSpace-Eで作業をされているところは8割を占めます。
また、CATIA V5を導入されているお客様でもCATIA V5とSpace-Eは使い分けて作業をされているそうです。今になって、Space-Eが当社の仕事に適していることを実感しています。
同業者の中には、25年ほど前に数千万円というCAD/CAMを導入しているところもありました。その頃は、手加工でやった方が早いし、CAD/CAMで何をするのかという考えがありました。それで当社はCAD/CAMを導入する時期が遅かったのですが、昔に比べるとPCの操作は簡単になり、これから導入してもまだ巻き返せるという直感はありました。Space-Eを導入してからは、従業員が頑張ってくれたので自動車のシートモデルも順調に受注できるようになりました。
Space-Eは、キャムクラフト株式会社にサポートしてもらっていて満足しています。導入当初はNDESのSpace-E講習会をキャムクラフトのSEと一緒に受講しました。何かあれば、NDESがサポートのバックアップをしてくれるので安心しています。
【会社名】
キャムクラフト株式会社
〒531-0072 大阪市北区豊崎2-11-1 西部ビル4F
TEL:06-4802-3660 FAX:06-4802-3661
【会社概要】
金型向け3次元CAD/CAMシステムの販売とサポートをしています。Space-Eは、導入後の訪問講習や電話などのアフターサポートまでを全て行っています。また、システムをご導入されたお客様の業務支援をさせていただき、システムの早期稼働をお手伝いいたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
Space-E をいろいろな仕事に活用
自動車のシートモデルを受注するためにSpace-Eを導入したので、社長は自動車のシートモデルだけのツールという認識でした。でも、この5年間で木型も切削するようになり、自動車のシートモデルだけの高価なツールから、いろいろな仕事に対応できるツールだという認識に代わってきました。実際のところ私も同じ考えでCAD/CAMより手でやった方が早いと思っていました。でも手加工と機械加工とのトータルの時間は変わらなくても機械加工の方が精度良く加工できます。
今では、ちょっとしたことでもSpace-Eを使って機械加工で行うようになりました。
若い従業員の定着
Space-Eを導入する前は、若い従業員を採用してもなかなか定着しませんでした。毎年ハローワークに何人か紹介してもらいますが、3日ほどで来なくなります。
やはり、30代、40代、50代と各年代がいるわけではなく、年配のベテランの方ばかりという環境も原因だったのかもしれません。
それがSpace-Eを導入してからは、若い従業員が辞めることなく、次に入社する従業員も居やすい環境になったのだと思います。そういう若い人を惹きつける効果はあったと思います。
従業員数は、30年前と変わっていませんが、当時は私より先輩の方ばかりで、その方々も退職されて今は先輩の方が1人になり、後は30代の従業員に入れ変わりました。
どこの同業者さんも高齢化が進んでいます。地道な作業で明るい仕事ではないので、若い方が続かないのも分かります。CAD/CAMを検討している同業者さんにCAD/CAMの効果を聞かれたとき、当社の従業員が入社間もなくしてSpace-Eを使って実務のモデルを作れることを話しました。手加工でも作れますが、新人が実務のモデルを作れるまでに5~10年はかかります。人のことを考えるとCAD/CAMの導入効果は大きいと思います。
機械加工と手加工の技術
Space-E、工作機械を導入しても、手加工の仕事も大事にしています。デジタルとアナログをうまく融合させるには、ノミ、カンナを使った技術者を育成していかないといけないと思っています。手加工は何十年来受け継いでいる職人の技術が必要ですが、一人前になるのに年数がかかります。今、若い30代の従業員2人が手加工の技を引き継ごうとしているので期待しているところです。
CAD/CAM技術も職人と思っています。Space-Eの担当者には、CAD/CAMだけではなくワークを選んで工作機械に段取りして載せて、もし、自分で作ったNCデータでうまく加工できない場合があれば自分で対処するように言っています。また、エンドミルの目が残るので、それをペーパーで擦ってならしていくという作業も大切です。NCデータを作るだけでなく、もの作りの楽しさを分かってほしいと思います。
5軸加工機の導入と期待
関係する自動車メーカ様がCATIA V5を使用されていたので、2台目のCAD/CAMをどれにするのか少し迷いました。でも当社の作業に適しているCAD/CAMはSpace-Eであり、入社した従業員の指導をSpace-Eの担当者にしてもらいたかったので、2台目もSpace-Eの導入を決めました。
2台のSpace-Eで作成したNCデータを、1台の工作機械では処理しきれないので、工作機械を増設しようと3軸加工機の検討を始めました。しかし、以前から5軸加工機には興味があり、このまま3軸加工機を導入しても変化がない。それに神戸の木工メーカで5軸加工機が入っている話を聞かないので、5軸加工を主力に受注拡大へつなげたいと考えました。もし、5軸加工で受注できなくても3軸加工で自動車のシートモデル数を増産する目標は達成できます。
5軸加工機を導入するときに、キャムクラフトの社長から、我々も一緒に勉強させてくださいと言ってもらえました。もちろん5軸のCAMは迷うことなくSpace-E/5axisです。
5軸加工機を検討していた時期は、まだ仕事がありましたが、導入を決めた頃から不況の始まりでした。でも、この機会に5軸加工を少しずつ勉強して技術を蓄積できれば、また、景気が回復してきたときに、垂直上がりで力を発揮できます。今は、そのための充電時期でよい時間をもらえたと思っています。仕事が忙しければ5軸の勉強はできません。
今は、NDESに協力してもらって5軸を勉強しながら、少しですがモデル関係で5軸の仕事も入るようになりました。このペースで仕事をするのが今はいいのかもしれません。
NDESに5軸のテスト加工を依頼されたときも、一緒に試行錯誤の中で失敗を繰り返すことで、いろいろと考えることができたので勉強になりました。
また、5軸は3軸では削れない箇所が削れるため、さまざまな可能性が広がるという楽しさがあります。
Space-Eの高速化
お客様のニーズがハイクオリティ、ハイスピードになってきています。特にスピードに関しては厳しく、短納期化に拍車がかかっています。Space-Eの導入当初は、1週間から10日かかって機械加工していましたが、今では2~3日で作業できるようになりました。その短縮の割合というのは、オペレーション技術も上がったのですが、Space-E自体の高速化を感じます。バージョンアップすると、NCパスの計算が速くなり、確実に便利になっています。たとえば、最初は3時間かかっていたNC計算時間も、今は1時間もかからなくなっています。ただ、お客様の要望はさらにそれを超えてきています。
Space-Eがバージョンアップされると、すぐにインストールして新しい機能を試したりしています。
新しい機能の情報は、NDESのセミナーに参加して聞いています。
人との出会いを大切に
人との出会いを大切にしたいといつも思っています。
木型関係のお客様は神戸、明石ですが、シートモデル関係の客様は、大阪、名古屋、東京になります。2~3年前は関東の仕事が多くあり、当然同業者さんもその地域に数多くいるわけです。その中から、当社を選んでお付き合いいただけたので大変ありがたいことです。
従業員に対しても同じです。当社は、機械加工部隊、手加工部隊がいるチーム昭和です。そのチームの中で従業員が競い合いながら技術を磨いています。従業員はパートナーで、私が頑張れるのは彼らが居てくれるからです。
阪神大震災を乗り越えて
阪神大震災のとき、4丁目の菅原市場が火事で焼けたニュースを皆さんご存じかと思います。6丁目の当社は、鉄骨造りの社屋の鉄骨が曲がり壁が全部落ちましたが、火事が出なかったことが幸いでした。機械も倒れていましたが、修理すれば使うことができました。
何より従業員の方々、ご家族の方々が元気だったことが一番良かったことです。会社が残っても一緒にやってくれる従業員の方が居ないと会社を再建することもできなかったと思います。当時、何千万という余計な借金をすることになったので大変でしたが、再建できた一番の理由は、当社を応援してくださる多くの方々の支えがあったからです。これだけ長い間続けてこられたことに感謝しています。
NDESへ
実際に使っている当社の担当者がこのシステムであればこういう効果が期待できると納得したシステムを導入したいので、NDESにはいろいろな提案をお願いします。
また、担当者と密に話をしてシステム開発に反映してもらい、使いやすいシステムにしてください。
Space-Eは、最近ストレスなく使わせてもらっていて、サポートにも満足しています。
おわりに
阪神大震災からの復興のシンボルとして、神戸市長田区の若松公園に「鉄人28号」のモニュメントが完成していました。
ガンバレ神戸ということで、震災にも不況にも負けない忍耐強さと明るく元気な精神で邁進するチーム昭和。これからもチームの力をひとつにして乗り越えていかれることと思います。
大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
会社プロフィール
株式会社 昭和製作所
所在地 | 〒653-0015 神戸市長田区菅原通6丁目3番地 |
---|---|
設立 | 大正8年5月 |
資本金 | 10,000,000円 |
社員数 | 8名 |
事業内容 | 各種鋳造木型製作、モデル製作、木製品製作、 鋳造品・金型製作 |
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