有限会社池田鉄工所様は、発泡樹脂専門の金型メーカとして輸送に不可欠な梱包材、緩衝材の製作に貢献され、さらに発泡樹脂のサンプル加工でもお客様のニーズに対応されています。常に「ミスの無い」、「丁寧・キレイに」、「納期厳守」を掲げて、新しい分野にも試行錯誤を重ねながら積極的にチャレンジされています。
今回は、発泡樹脂に関わる業務内容、そしてSpace-E導入の背景や利用状況、今後の展開などのお話をお伺いしました。
事業内容
当社は、発泡樹脂用金型の設計、製作およびサンプル加工を行っています。
主に製作している金型は、物品の輸送関係で使用される梱包材や緩衝材の金型です。身近なものでは、テレビを輸送する際に固定するための発泡スチロールを成形する金型になります。
その他にも、自動車内装材やバンパーの基材などの金型があります。自動車には、座席の中、マットやトランクルームの下などに発泡樹脂が数多く使われています。この発泡樹脂の硬さは、用途により異なり、サンプルで検証をされて決められています。
また、金型を作らない削り出しの依頼もあります。それは、50~100個ほどの小ロットのサンプル加工になり、さまざまな分野から依頼があります。これまで製作した中には、高級バナナを陳列するプレートや入浴時に幼児を座らせるイスなどがありました。
当社の前身は、私の父が1931年に設立した会社です。この会社は、麻の皮を薄く剥いて繊維にする機械の特許を取得して製造、販売していました。そして、国内だけでなく、海外にも販売を拡大していたので、従業員は100名ほどいました。ところが、時代の流れにより麻はナイロンに押されて、少しずつ異なる分野へ進出することになり、発泡樹脂に携わるようになってからは30年になります。
短納期が当社の売り
当社の売りは、他社では真似のできない短納期への対応です。とにかく早いことに誇りを持っています。ですから、当社への依頼は、納期がないようなものが多いのです。梱包材は、製品が完成して最後に検討されるものなので、厳しい納期になるのだと思います。
急な依頼でも対応できるように社員の持ち場を決めて、すぐに作業できる体制を整えています。そのため、図面1枚で依頼がくるとすぐに流れ作業で完成させることができます。まれに、あまりにも早くできてしまい、お客様が変更依頼をかけようとしたときには、既に作業が終わっていたこともありました。
金型の納期は、製品によって違いますが、1ヶ月のものもあれば、2週間のものあります。
Space-E導入の背景
ある日、NDESからSpace-Eの説明をしたいと電話があり、話を一度聞いてみることにしたのが、NDESとの付き合いの始まりです。
そのとき、他社のCAD/CAMを使っていたのですが、使いづらく感じていました。お客様とのやり取りで、3次元が軌道に乗り始めていたため、2次元から3次元、または3次元から2次元に変換する必要があり、その作業に時間がかかっていました。それに、工場の加工機とCAD/CAMは接続していなかったので、そのことも相談したいと思っていたのです。
そして、実際にNDESの提案を聞いて、5年前の2007年にSpace-E2台と加工機を導入しました。このとき、既存の加工機と増設した加工機をSpace-Eとネットワークで接続してもらいました。
Space-Eを利用して
金型設計、サンプル加工
Space-Eの1台はノードロックライセンスで、もう1台はネットワークライセンスです。工場の加工機の横にノートPCを置いてCAD/CAM室と両方で使えるようにしています。CAD/CAM室でNCデータを作成して修正が必要になったとき、加工機とやり取りしながらその場でノートPCのSpace-Eを操作する方が効率良く作業できます。特にサンプル加工は納期が短いため、加工機を円滑に動かすにはNCデータを加工機の横で作成しないと間に合わないのです。
お客様からは、モデルデータや図面が支給されます。
金型設計の場合、支給されたモデルデータを金型用に分解します。図面であれば、モデルデータを作成して金型用に分解します。そして、NCデータを作成して削っています。その一部は、鋳物にしてから削る場合もあります。
それから、サンプル加工の場合は、支給されたモデルデータからNCデータを作成して直接削っています。
現在、Space-Eを使っているのは2名です。ひとつの仕事を1人が最後まで担当していて、モデルデータの作成から金型設計、加工まで行っています。
Space-Eは使いやすいと思います。オペレータの1人は2年目になりますが、Space-Eの講習には行かずに会社で勉強しながら使っています。それに、何かトラブルがあればコールセンターに電話して、遠隔操作で画面を見てもらうことができます。また、急ぎの場合でも、コールセンターはすぐ対応してくれています。
深物は木型屋さんに依頼
自動車が3次元データになってからは、当社でも加工機で木型を削るようになりました。これまで、木型屋さんに図面を渡して木型を作っていましたが、加工機で削ることで図面に落とす手間が省けました。
ただし、深物は加工機で削ると逆に時間がかかってしまいます。そのため、深物は木型屋さんに頼むことにしています。
3次元データから図面を作成する手間を入れても木型屋さんの方が早くできます。今は、加工機で作るものと木型屋さんで作るものは半々ぐらいです。
腕が自慢の木型屋さんは、図面がしっかりしていれば、作る木型も信頼できるものを仕上げてくれます。そのため、図面作成のことを考えると、3次元から図面へ簡単に変換できる機能があれば良いと思います。Space-Eでも2次元の展開までは簡単にできますが、寸法を入れる作業はあります。だいぶSpace-Eのオペレーションにも慣れてきたので図面も早く作れるようになりました。
また、サンプル加工で2次元図面から3次元データに直して削ってほしいという依頼もあるので、図面を入れたら3次元モデルになるような変換ツールもあればいいと思います。
金型を作る工程で一部だけ人の手が入ります。機械加工が終わって凸型と凹型をセットするときのすり合わせで、かなり微妙な削りを手で行っています。この技術があったので当社も生き残れたと思います。
人とのつながりが大切
お付き合いしていただいている化学メーカ様の技術部門は、Space-Eを導入されているので、Space-Eのデータでやり取りができます。この化学メーカ様は有名な大企業ですが、当社のような零細企業でも上から物を言うのではなく、親切で丁寧に指導してくださいます。
本当に人のつながりに恵まれていると実感しているところです。ですから、助けられるばかりではなく、それにお応えしたいという強い気持ちを持っています。そのため、急ぎの依頼でも間に合うように仕上げています。
仕事も大切ですが、一番大切なのは人のつながりです。NDESとも縁があったのだと思いますので、これからもいろいろなアドバイスをお願いします。
今後の展開
テフロン加工から磨きへ
金型を磨いてほしいという依頼がきています。金型は最後にテフロン加工を施していますが、それを磨きに変えてほしいという依頼です。テフロン加工だと成形時に剥げて発砲樹脂に付着してしまうことがあるそうです。ただ、その磨きは機械ではできないので手作業になり、テフロン加工より単価が高くなってしまうのですが、それではだめなようです。
そのとき、磨きの会社を散々探しましたが、関東は磨きをしている会社が少なく、品質を満たす会社は見つかりませんでした。今後は磨きの品質と価格に挑戦できればと考えています。
ウレタン樹脂の切削
最近は、ウレタン樹脂を緩衝材で使うところが出てきています。金型まで作る必要がない小ロットです。ウレタン樹脂は、発泡樹脂より柔らかい素材なので、発泡樹脂とは異なる加工技術が必要です。
ウレタン樹脂で自動車関係の削り出しを行っている会社はありますが、加工方法は一切公開されていません。そのため、当社で刃物も含めて試行錯誤を繰り返して、最近やっと削れる目途がつきました。ただ、もっと良い精度で削りたいので、専用加工機の導入も検討しています。
このところ、ウレタン樹脂を削ってほしいという案件がいくつかあるので、何とか対応したいと思っています。
東日本大震災を乗り越えて
この1年は、東日本大震災のことで頭がいっぱいでした。この辺りは、非常に揺れが強く、普通では考えられない揺れを体験したので、しばらくは、地震の恐ろしさでショック状態でした。幸いにも工場の設備は、設置を万全にしていたので被害はありませんでしたが、地震後は計画停電があり、仕事を半日休業する日が続きました。最近、やっとショックから立ち直り始めています。
これまで、発泡樹脂の金型をいかに綺麗に仕上げていくか、アルミのことばかりを考えていました。しかし、数年前から多くの金型は中国で作られています。当社にはサンプル加工の依頼はあるのですが、そのサンプルで検証、試験が終わると金型は中国で作られます。品質を求めなくていい、金型を安く作るということがお客様の要望です。以前は、過剰なまでの品質を求めていましたが、少しずつ異なる分野へ基軸を変えていこうと考えています。
仕事も激減しているので、新しい分野へ進みたいと考えて積層技術の勉強を始めました。この積層造形の機械はかなり高価ですが、今まで成功した会社の話を聞くと先行投資しています。しかし、当社の規模では難しいところもあるので、今後どうすべきかを検討していきます。
Space-Eについて
CAD上でNCデータが表示できればいいと思います。そうすると、もっと操作性がよくなります。
それから、標準の変換がIGESだけなので、STEPも標準にしてもらいたいと思います。今はIGESしか窓口がないので、お客様にはIGESでいただくようにお願いしています。
また、バージョンアップでは新しい機能が追加されていますが、画面周りに変化がないため、何が変わったのか分からないことがあります。日々の作業で使う コマンドは決まっているので、時間があるときに新しい機能を試して、バージョンアップセミナーにも参加できればと思っています。
NDESへ
NDESには、手取り足取り教えてもらって、仕事が軌道に乗り始め、お客様からの依頼も切れずに流れるようになりました。その点では感謝しています。
NDESの良いところは、設備からCAD/CAMまでトータル的に提案してくれるところです。ネットワークも含めて全部をみてもらえるので、非常にありがたく思っています。難をいえば、保守費が高いということはありますが、今後もシステムを増設するときは、相談したいと思っています。
おわりに
発泡樹脂用金型にはスチームベントがあり、そこから水と水蒸気が出て充填した発泡樹脂に熱を加えることで癒着を促し成形するそうです。発泡樹脂用金型は初めてだったので、とても勉強になりました。
大変お忙しいところ、貴重な時間を割いてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
会社プロフィール
有限会社 池田鉄工所
URL http://park20.wakwak.com/~ikeda_tekko/
(外部サイトへ移動します)
所在地 | 〒321-0921 栃木県宇都宮市瑞穂3-11-7 瑞穂野工業団地 |
---|---|
創業 | 1931年(昭和6年)5月 |
資本金 | 5百万円 |
従業員 | 15名 |
事業内容 | 発泡樹脂用金型の製作、修理、オーバーホール 梱包用樹脂モデル・サンプルの作成 各種検査治具の作成 |
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