効率よく加工モデルに反映させる
新生ヤマセイとして2012年にスタートされたヤマセイ株式会社 様は、前身の会社から含めると50年以上にわたり金型づくりに取り組まれ、豊富な実績と高い技術力を持たれた金型メーカーです。この金型づくりを支えるのは、高精度機械加工技術と匠の技術の融合であり、自動車産業を中心とした各種産業の金型づくりの一翼を担う、なくてはならない会社を目指されています。
今回は、Manufacturing-SpaceのModeler、CAMをどのようにご利用いただいているのか、またその効果についてのお話を中心にお伺いしました。
新生ヤマセイとして
2012年よりビューテックグループの一員となり新生ヤマセイとしてスタートしました。それまで、板金プレス金型が主力でしたが、ビューテックグループが得意としている自動車の内装、外装樹脂部品を量産するための射出成形金型の設計、製作への取り組みも始めました。他には、ガラスと周辺の樹脂部品を一体成形するMAW(Module Assy Window)金型の設計、製作も行っています。
当社は、板金プレスの大物部品から中小物部品、そして樹脂部品まで幅広い金型の設計、製作ができる体制を整えています。板金プレス金型では、自動車部品でもかなり大物になるボディサイドアウターなども実績があります。また、射出成形金型になると、板金プレス以上に高精度な加工が必要な細かい形状が多くなり、従来のやり方では対応できない部分もあり、新しい加工方法も取り入れていかなければなりません。
射出成形金型に関しては、現在勉強中で試行錯誤を繰り返しながら設計、製作を行っています。ですが、早いうちに、ビューテックグループとして金型づくりの技術ノウハウを設計、製作、データ作りも含めて蓄積していくという目標があるため、人材を育成しながら取り組んでいます。
板金プレスの金型づくり
金型の指示書は現場が作成
お客様からいただいたデータは、シミュレーション部門に回り、成形解析のシミュレーションをして最適な工程設計を行います。さらに、実際に現場で金型を微調整しているノウハウを持った職人が、実際の経験に基づいてプレス成形による金型の当たり付けや逃がしなどを指示書として作成しています。この指示書には、グラインダーを使って型の当たり調整を行った経験を基に、当たりが弱かったので、次は強く当ててほしいとか、不要な部分は逃がしてほしいといった、機械加工の段階で反映してほしい内容が指示されています。
我々NC課には、シミュレーションモデルとこの指示書が回ってくるので、その内容をモデルに織り込み、金型機械加工用のNCデータを作成しています。おそらく他社は、このような指示書は上流部門からくるのではないかと思われますが、当社はその逆で、現場が指示書を作成して、現場で行っていた微調整を加工モデルに反映させるようにしています。これにより、現場の職人技が全てなくなるわけではありませんが、現場の作業をできるだけ削減できます。
Space-Eのサーフェイスが一番使いやすい
現場からの指示書をモデルに反映する作業はSpace-Eを使っています。Space-Eは、昔から使っていたGRADEの後継ということで導入していますが、板金プレス金型の形状操作に関しては、Space-Eのサーフェイスが一番使いやすいと思います。
それにSpace-Eは、ちょっとした数学の知識があれば、サーフェイスが作成されている理屈を理解しやすいシステムです。たとえば、ここは中心線を通るから、こういうサーフェイスが張られる、ということが数学的に説明できます。そうすると、いろいろなサーフェイスを作成するときにも応用がききます。
以前、当社の工程設計でソリッド系CADを使い始めたとき、モデリング作業もソリッド系CADにした方がいいのではという話になりました。そのとき、数社のCADでモデリング作業をしたことがありましたが、他社のCADは、ソリッド系なのでサーフェイスの作成、編集機能が充実していませんでした。やはり、Space-Eのサーフェイスの方が、容易に編集ができ、効率よくモデリングできます。
最近は、金型の工程数が減り、より複雑な形状になってきているため、現場からの要望はさらに厳しくなっています。それに対応するため、工程ごとの上下のモデルもサーフェイスで精密に作り込むようにしています。
NCデータによる加工の利点とは
当社は5~6年前から、全ての金型加工においてNCデータによる加工を実施しています。紙図面は配布されず、原則として現場は、NCデータを基に全ての機械加工を行う体制にしています。その全てのNCデータをNC課で作成しているので大変な作業です。
それでも、NCデータ化しておくことに利点があります。例えば、お客様から金型の設変、改造があると、精度を出すために修正作業は1つの部品に対して行います。そうすると、他社では現場の職人が手加工で調整されていると聞きますが、当社の場合は、できるだけ修正した金型もデータで残そうとしています。まず現場では、修正するための見込みを考慮して変更する数値をパネルに指示します。その修正指示パネルが、NC課に回ってくるのでモデルに反映させます。
この設変、改造は新作より短納期ですが、新作と同じような手順でモデリングしてNCデータを作成しているため、かなり厳しいスケジュールになります。
しかし、一度データで残しておけば、他にも2番型、3番型があるので、そのデータで何度でも同じ金型が作れます。もし、手加工だけで行っていたら同じものは製作できないでしょう。やはり、データ化するメリットは大きいと思います。
それから、データ化のもうひとつの背景として、現場の仕上げ職人の流動化があげられます。スーパーバイザー等で一時的に社内の人手が少なくなっても作業は増えているので、効率よく現場の作業を行うためにもデータ化は必要です。
Manufacturing-Spaceの活用
ネットワークライセンスの魅力により
当社にとって、非常に良いタイミングで、NDESからManufacturing-Spaceに移行する提案がありました。そのとき、NC課の技術要員の見直しがあって人数が削減され、今までなら普通にできていた仕事も回らなくなりました。さらに作業量は増えるばかりで、どうしてもデータ作成の効率を上げなければいけない状態だったのです。そういうときの提案だったので、作業効率を上げるためにもSpace-Eを使える社員を増やせるネットワークライセンスに魅力を感じ、Manufacturing-Spaceへの移行を決定しました。
そして、これまで使ったことのない社員のパソコンにもManufacturing-Spaceをインストールして、使える環境を整えました。これまでは、パソコンに固定されたライセンスだったので、自分のパソコンにSpace-Eのライセンスがなければ、使うことはありませんでした。それが、自分のパソコンに入っているということで、使ってみようという気持ちになれたと思います。自然にManufacturing-Spaceの空いているライセンスを使うようになり、使用する社員が広がったという状況です。現在、Manufacturing-Spaceは15ライセンスあり、金型設計、シミュレーション、NCなどの部門で効率よく利用しています。
教育は席替えして
これまで、NCデータ作成を専任にしていた社員は、Manufacturing-Spaceを使ったことがないので、その教育は席替えで補いました。モデル作成の経験者の隣に必ずNCデータ作成の専任者が座るという配置にすることで、どうやってモデルを作成、編集したらいいのかということを聞きやすい環境にしました。その結果、モデルの作り方を教えてもらうだけでなく、NCデータが作りやすいサーフェイスにしてほしいという要望も出ていたので、この席替は非常に良かったと思います。今では、NCデータ作成の専任者も簡単なサーフェイスであれば張ることができるので、そこからNCデータを作成しています。
また、これまで同じフロアにいても各々の作業内容は見えなかったので、席が隣になり交流できたことで、お互いの業務に対しての理解が深まったことも良かったと思います。
今後の展開
同じシステムでモデルからNCデータ作成まで
CAMは、別のシステムを使っていて簡単なサーフェイス編集機能はありますが、やはりサーフェイスはCADでなければ作り込むことはできません。そこで、新入社員がNC課に配属されたこともあり、Manufacturing-Spaceを使ってモデルからNCデータまで作成できるように頑張ってもらう予定です。
現在、部分的な表面データや輪郭データなどのNCデータは、Manufacturing-Spaceで作成することもあります。今後は、どれだけ工数を短縮して作業できるかが課題です。
ネットワークライセンスの活用
以前、当社でインフルエンザが大流行したとき、会社での感染リスクを無くすため、自宅でモデリング・NC作業ができるように計画をしたことがありました。また、出張先で社内に持ち帰らずに、その場で修正できたらいいのでは、という話がときどき出ていました。両方とも実現はしていませんが、ライセンス形態が変わったので、今後は検討してもいいのかもしれません。
操作の標準化
数名のベテラン社員がモデリングすると、寸法的に正しくほぼ同じ形状になるのですが、作成方法が異なり各々に特徴があります。これは、複雑な特殊形状のときに複数の作成方法があれば対処できるという長所であり、品質が統一できないという短所でもあります。それに、新入社員にモデリングを教えるとき、複数ある作成方法のどれを選ぶのかも難しいところです。
また同様に、加工データにおいても作業者によって作成、編集の方法が違うため、削った結果に差がある状況です。
今後は、各々の個性と利点を生かしながら、操作方法を標準化するための課題に取り組んでいく予定です。
NDESへ
これまで、さまざまな機能をコマンドにしてもらって、ありがたく思っています。今後も、ほしいコマンドがたくさんあるので、要望としてあげさせてもらいます。でも、最近追加されたコマンドが標準ではなくオプションになっているので、それがとても残念です。
また、コールセンターに要望を伝えても、その後の対応に関しての返答がありません。そこで、ユーザーからの質問、要望内容の一覧をウェブサイトで公開して解決済みや検討中などの状態が見られれば、他社でも同じ質問があったことや要望に対しての状況が分かるのではないでしょうか。
それから、業界のタイムリーな情報が入手しにくいので、ユーザー同士の情報交換の場などをNDESが提供していただけたらありがたく思います。
おわりに
席替えによる社員の交流によりManufacturing-Spaceの教育を実施されたとき、さらに各々のモデリング、NCデータ作成の多能工化が進むことを期待されたそうです。残念ながら現状は、そこまでは至ってはいないとのことですが、この席替え作戦による交流は、新鮮な取り組みだと感じました。
大変お忙しいところ、貴重な時間を割いてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
会社プロフィール
ヤマセイ株式会社
URL http://www.v-yamasei.co.jp/(外部サイトへ移動します)
所在地 | 〒790-0036 愛媛県松山市小栗5丁目31番1号 |
---|---|
設立 | 2012年1月17日(3月1日より新体制) |
資本金 | 1,000万円 |
従業員 | 145名 |
事業内容 | 自動車関連部品の板金プレス金型および 射出成形金型の設計・製作 |
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