人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.96 | お客様事例
超精密加工による日本のものづくりに
貢献するSpace-E

2019年6月に創立50周年を迎えたナカヤマ精密株式会社様は、日本ならではのものづくり技術で、お客さまの要望に応え続けている超硬合金・耐摩耗精密工具を専門とした金属精密加工メーカーです。大阪に本社を構える同社は、1984年に熊本工場を設立し、その後も成長を続け、2013年には同じ熊本県にテクニカルセンターを開設しました。この2つの拠点における製品の設計・製造で、Space-Eが活躍しています。これからのものづくりのあり方やSpace-Eの活用についてお話を伺いました。

日本のものづくりにかける思い
精密加工のオリジナル技術で

ナカヤマ精密株式会社 代表取締役 社長 中山 愼一 様
ナカヤマ精密株式会社
代表取締役 社長
中山 愼一 様

ナカヤマ精密様の製品は、精密プレス・モールド金型部品、電子・半導体・液晶関連精密部品、自動車・医療機器部品、宇宙・航空機器部品、ディスペンサーノズルなど幅広い分野に及びます。その他に、ナノ(10億分の1)メートル単位の超精密加工による製品として、高品質レンズ用金型部品、燃料電池用精密部品があります。同社は、熟練した技術と最新鋭の設備の融合で、ますます要求が強まる部品の超小型化、超精密化に対応しています。

超精密加工の技術をリードする同社代表取締役社長の中山愼一様に、ものづくりの現状について伺いました。

「日本が主導してきた技術の中には、中国や韓国、東南アジアの方が優れてきている技術も多々あります。この状況を私たちは厳しく捉えて、さまざまな新しい技術にチャレンジして、スキルを磨くことが大切だと考えています。特に中国企業の設備投資の規模は大きく、加工機であれば一挙に5~10台の導入は珍しくありません。ただ、最新の機械で加工したとしても、その機能を十分に利用しているとは言い難いようです。私たちの強みは、最新の機械を使いこなしながら、職人技を駆使した製品を作り続けているところです。この強みが、海外だけでなく日本における私たちの優位性につながっています」

毎年のように新しい機械設備を導入している同社は、日進月歩で進化する加工機の機能・性能にただ依存するのではなく、独自の工夫を凝らしながら機械を使いこなす努力を続けています。その結果、メーカーのカタログ値を超越する精度を出す、オリジナル技術としての加工ノウハウが生まれています。中山様は、機械の導入についても特長があると話します。

「同様の機械を2~3社から導入するようにしています。各機械は、メーカーによって得意、不得意の領域があり、その得意とする点を重視して使い分けています。機械の特徴を把握して問題点を見つけることで、新機種に向けた機械メーカーとの共同研究にも取り組んでいます」

また同社は、製造業のグローバル展開が当たり前のように考えられる現在にあって、国内の製造、雇用を基本としています。それは、"日本国内でのものづくり"を大切にしたいという中山様の思いがあります。

「日本で暮らす人が国内で働き収入を得ることが大切だと考えています。これまで、国内でのものづくりにこだわりを持ってきましたので、人件費の安さから海外に人材を求めることに疑問を感じています。もし、日本で海外の人材を採用するのであれば、給与は日本人と同じにします。これからも私たちは、国内でのものづくりにこだわり、技術力を高めて会社を成長させるとともに、社員が納得して働けるような会社を継続していきます」

仕事も遊びも全力で行う同社は、全社員が参加する社員旅行やレクリエーションを実施し、社員の親睦を深めています。テクニカルセンターで開催する感謝祭や熊本のサーキット施設を借り切っての走行会など、社員だけでなく家族も一緒に楽しめる企画です。中山様が自らお好み焼きを焼いて振る舞うこともあるそうです。

独自ノウハウの結晶である精密機械部品、精密金型部品(プレス・モールド関連)
独自ノウハウの結晶である精密機械部品、精密金型部品(プレス・モールド関連)
独自ノウハウの結晶である精密機械部品、精密金型部品(プレス・モールド関連)
テクニカルセンター
テクニカルセンター
熊本工場
熊本工場
精密加工のオリジナル技術を生み出す工場
精密加工のオリジナル技術を生み出す工場

信頼と操作性が
Space-E導入の決め手

ナカヤマ精密株式会社 製造部 課長 富永 洋市 様
ナカヤマ精密株式会社
製造部 課長
富永 洋市 様

2000年のSpace-E導入時に中心となった製造部課長の富永洋市様に導入の経緯を伺いました。

「2次元図面が多かった当時、お客さまが求めている製品形状を図面でイメージすることの難しさから、3次元化していくことを検討していました。また、お客さまから納入製品について、手仕上げではなく機械的な精度を保証して納めてほしいとの要望もありました。それに対応できる3次元CAD/CAMを探していました」

同社独自のCAD/CAM導入状況のリサーチでは、Space-Eの導入数が多かったそうです。販売しているNDESについて、中山様は「きめ細やかな営業スタイルで、私たちの状況を把握した上で、当社に合わせた提案がありました。Space-Eの機能は評価していましたが、営業としての姿勢に、先々も安心できそうだという信頼を感じて導入を決めました」と印象を語ります。

ナカヤマ精密株式会社 製造部 課長 原田 秀康 様
ナカヤマ精密株式会社
製造部 課長
原田 秀康 様

導入時からSpace-Eを活用されている製造部課長の原田秀康様は、「実際にSpace-Eを使ってみると操作が簡単で、2次元CADを使っていた私たちも容易に3次元に移行できました。Space-Eは、幾何拘束を使ってソリッドモデルを作成する手順ではなく、ソリッドとサーフェイスのハイブリッドモデルだったため、モデルを一本の線から描きたいという私たちの希望に合致していました」とその利点を説明します。

Space-Eの使いやすさについて富永様も「CAD/CAMが一体なのでデータを行き来させやすく、製造の一貫性を保つことができます。CAMに関しては、ツリー構造で表示されているので各工程の順番が分かりやすく、パスもきれいに作成できます」と評価します。

Space-Eの特長を
製品設計・製造に生かす

Space-Eを活用した超精密部品(サンプル)
Space-Eを活用した超精密部品(サンプル)

最新の加工機と独自技術を融合させた製造現場を支える役目を、Space-Eも担っています。熊本工場で製造しているほとんどの製品にSpace-Eが使われています。ナノレベルの超精密部品を製造しているテクニカルセンターでは、Space-Eにしかできない機能があると原田様は説明します。

「例えば、レンズの金型設計では、点群を1本のスプラインでつなぐことでレンズの面を作成しています。Space-Eであれば、点群を取り込んでスプラインに連結する機能が標準であり、そのスプラインを元に面を作成することができます。CAMについても、点と線をつないでカッターパスにするところを、Space-Eでは円弧で作成してくれるので、データ量が少なくて済みます。加工機のメモリー容量には限りがあるので、データ量が少ない方が処理の負荷を軽減できます」

こうしたSpace-Eの特長を上手に生かした独自の活用法があり、モデルを作り込むときの細かい作業などにもSpace-Eが重宝されています。

人を生かしてものづくりを進める

Space-Eの操作も含めた加工工程の多能工化を推進
Space-Eの操作も含めた加工工程の多能工化を推進
コマ大戦レプリカ (直径16mm、高さ20mm)
コマ大戦レプリカ (直径16mm、高さ20mm)

現在、Space-Eは7~8人の社員が使用しているそうですが、多能工化を目指して現場で加工機を操作する社員もSpace-Eを使えるように進めています。中山様によると「ものを作ることで精一杯だった頃に比べると、社員が増えて時間に余裕が生まれたことで、研究や実験に取り組めるようになり、スキルが伸びてきました。社員も自ら勉強して技術を蓄積してきたことで、各自のスキルも上がり、セクションごとにエキスパートが育っています」と、各部署の垣根を越えて相談をし合う姿勢もあり、それもスキルアップには効果的だったと言います。

このスキルは、2012年の全日本製造業コマ大戦の九州沖縄地区で優勝するという実績にも表れています。コマはSpace-Eで作成され、同社ではそのレプリカの販売もしています。

今後の企業としての課題、取り組みについて、中山様から次のような説明がありました。

「これからは、レンズ関係の金型、医療機器関係の超微細な部品加工に力を入れていきたいと考えています。この分野は、機械の加工精度も上がり、ナノオーダーという人間が触ってわかるようなレベルではない精度が要求されています。測定器でしか測れないという状況において、従来のように職人技が生かせるのか否かは分かりません。ですが、機械やAIなどの技術が進歩しても人間にしかできないことがあるはずです。それを見いだして取り組んでいきたいと思います。ものづくりは自分たちでコツコツと作り続けることが大切なのです」

精密加工のカッターパスをSpace-E/CAMにて作成
精密加工のカッターパスをSpace-E/CAMにて作成
精密加工のカッターパスをSpace-E/CAMにて作成

NDESへの期待

ナカヤマ精密株式会社 製造部 技師 谷 良一 様
ナカヤマ精密株式会社
製造部 技師
谷 良一 様

バージョンアップを繰り返して機能の改善、追加を実施しているSpace-Eは、CAMのパスなどの機能を充実させてきました。加工データ作成の担当として長年Space-Eを使われてきた製造部技師の谷良一様からは、「当社で要望を出した機能がバージョンアップで反映されました」とレスポンスの良さも実感していただいています。同社が求める精密なカッターパスの作成について、NDESは引き続きサポートしていきます。

谷様がこれまで作成したCAMデータは約15,000本あり、その中から似たような形状を探すことが大変だと言います。これに役立つ機能としてManufacturing-SpaceのAIによる類似形状検索サービスをご紹介したところ、過去の案件データを容易に引き出せると期待を寄せていただきました。

また、NDESのサポート体制については、「導入時に行っていただいた教育で、素人でもすぐにSpace-Eを使えるようになりました。その後は、コールセンターを利用していろいろな相談をしています。窓口の担当者は習熟度が高く、専門的な話ができるので頼りにしています。以前、不具合の原因が加工機側なのかカッターパス側なのか不明だったとき、NDESのマニファクチャリングラボの調査結果で、解決の手がかりが見つかり助かりました」と富永様、谷様に評価いただきました。

中山様からも「NDESには、これからも日本での開発を続けてほしいと思います。Space-Eは私たちにとって不可欠なツールであり、レンズ関係で超音波などの新しい加工方法や加工機に挑戦するときも、NDESのさらなるご協力を期待します」と今後について伺いました。

日本国内でのものづくりを大切に、ナカヤマ精密様は最先端の加工技術を追求し続けています。NDESもナカヤマ精密様のご要望にお応えすることで、日本のものづくりに貢献できれば幸いです。

会社プロフィール

ナカヤマ精密株式会社

URL http://www.nakayama-pre.co.jp/(外部サイトへ移動します)

本社 大阪府大阪市淀川区西宮原2-7-38 新大阪西浦ビル801号
設立 1969年6月25日
資本金 4,800万円
社員数 204名(2019年4月現在)
事業内容 超硬合金を主とする耐磨耗精密工具類の設計・製造販売
工場 熊本工場:熊本県阿蘇郡西原村小森3606
テクニカルセンター :熊本県菊池郡菊陽町原水上大谷3802-26

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