厳しい競争を勝ち抜く
1952年創業のリンテックス様は、60年以上にもわたり培われてきた技術力で、日々発展をとげる自動車産業を支え続けてきた自動車用のホイールメーカーです。お客さまのニーズに適応した付加価値の高いホイールは、研究開発力、生産技術力、品質管理力を結集することで生み出されてきました。その開発力のすごさは、世界で初めて780MPa高張力鋼板のホイールを実現させた取り組みからもうかがえます。
このたびは、ホイール設計、試作における解析への取り組みと、それを支えるManufacturing-Spaceの3次元CAD/CAMシステム「Space-E」の役割についてお伺いしました。
高付加価値のスチールホイール
ホイールメーカーとして
進化を続ける自動車産業の一翼を担うべく、当社は高機能化や省エネルギー化などのお客さまからのニーズに応えるため、新しい価値を付加したホイール開発・製造を強みとしています。
近年、ホイールメーカー間の競争がますます激しくなってきています。以前は、多数のホイールメーカーが存在していましたが、現在では業界再編が進んだ結果、当社を含めた3社に集約されてしのぎを削っています。その中で当社は、新日鐵住金グループの一員として、厳しい競争を勝ち抜いていこうとしています。
また、海外においては、中国に輪泰科斯(広州)汽車零配件有限公司を2004年に設立し、自動車メーカー様の現地生産による部品供給に対応しています。
生産技術における自動化
工場の自動化には、いち早く取り組んできました。オートメーション化をコンセプトとする高度なITシステムによって、製造情報を一元管理し、材料受入からディスク成形加工、溶接、塗装まで全てのプロセスを貫いた生産体制を構築しています。この岡山工場でもマイコンが流行りだした時代から生産技術における自動化に取り組み省人化を実現しています。
小回りを利かせた対応
大手ホイールメーカーでは、設計、試作などは分業制だと思ますが、我々は、小回りが利く会社規模なので、ひとりの社員が設計や試作を経験することができます。そうすることで、例えば、お客さまと設計の件で打ち合わせをしていて試作のことを聞かれた場合、大手ホイールメーカーであれば、分業している試作のことは別途連絡することになるかと思いますが、当社は、その場で回答することができます。
当社は、トータルで競争力があるご提案をしながら、お客さまが必要とする情報やデータなども素早くご提供できます。また、金型製作から試作までのスピードも早いため、小回りを利かせた対応ができるということが、当社の売りのひとつです。
強みとする技術力
世界初の高張力鋼板(ハイテン)のホイール
ハイテン材のホイールへの取り組みは、当社の最大の強みです。これまで、自動車メーカーと鉄鋼メーカー、当社の3社の共同開発で特許を取得して、世界で最初に抗張力780MPa材を用いたホイールの量産化を実現しました。
ハイテン材は高精度の加工技術が必要であるため、不良率は少し高めとなる傾向があり、ものづくりにおいて完成した材料ではないというとらえ方がされています。しかし、そういう課題にもあえてチャレンジしながら、ハイテン材の研究開発に取り組み当社の売りにしてきました。特に、ホイールはアルミ化が進んでいますが、その時代背景として剛性とコストの問題が常にあり、ハイテン材の需要が伸びたり、減少したりと浮き沈みを繰り返してきました。そして、そのたびに当社の戦略としてコストアップを抑えたハイテン材の軽量化に取り組んできています。今後もその方向で研究開発を推進していきます。
長年培ってきた解析ノウハウ
自動車の足回りを支えるホイールには、耐久性を保持するのは当然のことですが、振動や騒音を抑えた乗り心地の良さや運転のしやすさを高めることが要求されます。
また、環境政策による自動車の燃費規制が、ますます強化される傾向にあり、そうなると、ホイールの軽量化技術が一段と重要になります。
そこで、ポイントとなるのは、新しい技術に取り組み軽量化に挑戦しながら、軽さだけでなく剛性との最適なバランスを図ったホイールを設計することです。
ホイールは、細かい部分を少しでも変更すると剛性と応力のバランスが難しくなるため、どういう形状にすれば剛性を上げて応力を下げられるのかという長年の解析経験で培ってきたノウハウがあります。そのノウハウを元にして解析シミュレーションを使いながら、お客さまからの要求仕様を満足させるような断面形状や板厚を設計していきます。これが、各社ホイールメーカーのノウハウとして、勝負するところでもあります。
お客さまは、軽くて、剛性の高いものを求められますので、そのご要望にお応えできるようなご提案をしていきます。
ものづくりの金型技術
ご提案した図面上の仕様が各社ホイールメーカーで対等であったとしても、ものづくり技術で差が出ることはあります。ある板を絞り込んでいくと板方向に増肉したり、また、ある部分は減肉したりしています。その増減肉の加減を金型技術で抑え込んで作るため、ものづくりの技術でもノウハウが必要です。いかに早く高い精度で仕様通りの金型に仕上げていくかという技術でも、一番でありたいと思っています。
ホイールの解析について
35年前から解析に取り組む
当社は今から35年ほど前に、業界に先駆けて解析への取り組みを開始しました。大型トラックのチューブレスホイールや超軽量アルミホイールをタイヤメーカーと共同開発することになったのが契機で、大型コンピューターによるFORTRAN言語を使った有限要素法(FEM)で強度解析を始めたのです。
その後、パソコンが普及し始めた頃には、すでに解析を使いこなして設計することが業務の一部になっていたので、CADを導入して解析との連携に取り組みました。その最初に導入したCADがNDESのGRADEシリーズであり、1988年の導入を皮切りにSpace-Eへとアップグレードを重ねながら現在のSpace-Eクラウド版のManufacturing-Spaceに至っています。
Space-Eの役割について
解析を行う際には3D CADによるモデリングが必須であり、Space-Eは当社にとってなくてはならないツールとなっています。
さまざまな自動車メーカー様とお取引している関係もあり、CATIAなどのいろいろな3D CADを使っていますが、Space-Eは日本人のものづくりの感性に最もマッチしたツールであると感じています。例えて言うならば、「あたかもコンピューターの中に入り込んで現物を削り出すような感覚」で、かゆいところに手が届くモデリングができます。また、Space-Eは、モデリング自体が早くでき、最初のSpace-Eのコンセプトが中小企業でも使い勝手が良いCADということで開発されていたと思います。
それから、ホイールの金型設計、解析前の簡単な図面の作成には、Space-E/Drawを利用しています。
主にSpace-Eは解析用モデルを作成していますが、金型設計で使うときは、回転体では表現できないような形状の場合です。スチールのデザインホイールで3次元形状の飾り窓があるときにSpace-Eでモデリングします。
親会社の支援で解析力を強化
解析に関する技術力をさらに高めてノウハウを蓄積するために、若手エンジニアを開発部に配属して解析の専門家として養成するなど、体制の強化を図りました。こうした人材育成で非常にありがたかったのは、親会社である新日鐵住金の手厚い支援を受けられたことです。若手エンジニアを「企業留学」の形で出向させ、強度解析、振動解析、評価技術、シミュレーション技術など、業界最先端の解析技術を学ばせていただきました。
この企業留学で特に目指していたことは、加工モデルの問題点を把握しながら解析精度を向上させる意味もあり、その過程を理解しながら加工シミュレーションのデータを作成するという取り組みでした。このように、トップレベルの技術を直接学べたことが、当社の開発力の強化につながっています。
チームワークで競争力を生む
お客さまの要求は、基本的にメーカー担当のエンジニアがお伺いします。その要求をもとに、解析チームで形状を決定するのですが、メーカー担当のエンジニアが条件をしぼった要求を出すことで、ベストな回答を解析チームより引き出すことができます。
しかも限られた時間で提案するには、メーカー担当が先に板厚や材質などの仕様をある程度決めながら、解析チームでは解析して形状を決めていくという、見積作業と解析作業を並行して行うことがあります。これができるのは、社員一人ひとりがものづくりの技術を幅広く経験しているので、お互いの担当以外のことも予測できるからです。これこそが、チームワークによる競争力のある提案といえます。
我々の開発部では解析、設計、試作まで行うのですが、その試作の段階から工場の生産技術メンバーも一緒になって取り組みます。ですから、工程ごとにバトンタッチするのではなく、量産に向けてのものづくりに試作から一緒に携わることで、チームワークによる研究開発力、生産技術力、品質管理力を発揮できます。
今後の展開について
コスト削減の新しい取り組み
現在、従来とは異なるまったく新しい作り方を模索しています。この新技術が確立できれば、さらなるコスト削減につながります。
また、お客さまが望まれている内容で細かな課題がたくさんありますので、その解決策を見いだしてご提案したいと考えています。それには、やはり解析が必要になります。
PDMサービスでコミュニケーションを活性化
Manufacturing-SpaceのPDMサービスで特に気に入っているのは、コメント機能を備えている点です。営業から製品設計、解析、製造現場まで、複数の担当者が一つのチームとなって活動する際のコミュニケーションを活性化させることができます。
また、今後はCADがなくてもモデルを見ることができるビューワーも活用していきます。
NDESについて
今日まで30年近い長期にわたってNDESと付き合ってきたのは、やはり人間的な信頼関係を築いてきたことが大きな背景となっています。
NDESには、当社の課題や要望を直接お話しできるのでとても心強いことです。実際、我々が難題にぶつかっていたときに、NDESの皆さんがいろいろ走り回って解決策を探してくれたこともありました。
また、CADの維持費やイニシャルコストは、大きな負担になります。現在のSpace-Eクラウド版をはじめ、それぞれの時代に合ったコスト削減につながるソリューションを提案してくれたことにも感謝しています。今後も、さまざまな提案を期待しています。
おわりに
見学させていただいた岡山工場で、まず目を引かれたのが3,400トンのトランスファープレスです。自動化された複数工程の成形を連続加工する様子は、まさに圧巻でした。
大変お忙しいところ、貴重な時間を割いてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
会社プロフィール
リンテックス株式会社
URL http://www.ring-techs.co.jp/(外部サイトへ移動します)
本社・岡山工場 | 〒712-8006 岡山県倉敷市連島町鶴新田2670番地 |
---|---|
創業 | 1952年5月19日 |
資本金 | 5億円 |
従業員 | 193名(2015年8月末) |
営業品目 | 自動車用車輪・農業用車輪・産業車輌用車輪 |
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