人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.82 | お客様事例
こだわりの焼き型で
多彩な焼き菓子のデザインを支える

北村製作所様は、1923年創業で90年以上の長い歴史を持ち、製菓業界を最新技術で支える自動製菓食品機械のトップメーカーです。同社の強みは、お客さまの要望に細かく対応したせんべいやもなかの皮、クッキーなどの焼き型を搭載した焼成機を提供できることです。今回は、その焼き型の製作におけるManufacturing-Spaceの3次元CAD/CAMシステム「Space-E」の活用について伺いました。

自社製作による焼き型で
多彩な焼き菓子に対応

株式会社 北村製作所 代表取締役 北村 修二 様
株式会社 北村製作所
代表取締役 北村 修二 様

北村製作所様は、大阪市天王寺区に本社、八尾市と東大阪市に工場を置き、せんべいやクッキー、もなかの皮などを焼成する製菓焼成機を開発・製造しています。1923年に北村商店として、せんべい、まんじゅう、もなかの皮の手焼き型および彫刻金型の製造・販売を始めました。それから、1947年に開発した固定電気式のせんべい焼き機、続いて1950年に開発したロングセラーとなる半自動もなか皮焼成機は、共に全国での販売が1000台以上になり、現在でも使い続けられています。

その後、製造部門の拡張のために東大阪市に工場を移転し、手焼きから自動焼成機の製造へと乗り出しました。そして、薄物せんべいや炭酸せんべいの大量生産を可能にしたコンベヤー式の全自動せんべい焼成機を開発しています。それからは、次々に焼成機を開発し、厚物せんべいや瓦せんべいを量産する自動焼成機、さらに、もみじまんじゅうの半自動焼成機では、生地種と餡(あん)の自動充填装置を完成させました。

1970年代から1990年代にかけては、幅広い分野で自動焼成機の開発に取り組み、もなかの皮、クリームサンドせんべい(ゴーフレット)、巻せんべいなどの自動焼成機を生み出しました。また、フォーチュンクッキーや洋風クッキー生地を挟み焼きするクッキーせんべい、エビせんべい、南部せんべい、アイスクリームサンド用ウエハーなどの多彩なせんべいやクッキーの自動焼成機を開発して、大量生産を可能としています。

海外からの注文も多く、年間に製造する焼成機の半分ほどは海外になり、米国、中国、東南アジアが主な出荷先です。また、全ての焼成機は受注生産になるため、部品加工も含めると1台完成させるのに4カ月ほどはかかります。

北村製作所様の躍進について、代表取締役の北村修二様は次のように語ります。

「創業者である北村常雄の代は手焼き型の専門でしたが、私の代になって機械の自動化を図りました。焼成機メーカーさんの中には、型を外注されるところはたくさんありますが、当社は型から始まった会社ですから、自社で型を作っていることが一番の強みです。そのため、生地を挟んで焼くという難しい挟み焼を得意とし、特にクッキーの中に紙のメッセージを入れて成形するフォーチュンクッキーの焼成機は当社がトップのシェアを持っています。このように、あえて難しい部分に特化して開発を行ってきたので、今の当社があるのだと思います。また、日本のお菓子は海外でも人気があるため、そのお菓子を製造する焼成機は海外でも高い需要があります」。

アイスモナカの皮
アイスモナカの皮
アイスモナカの皮の焼き型
アイスモナカの皮の焼き型
フォーチュンクッキー
フォーチュンクッキー
自動辻占せんべい焼成機(フォーチュンクッキーの専用機)
自動辻占せんべい焼成機(フォーチュンクッキーの専用機)

焼き型のデザインは
菓子のイメージを決める重要な要素

株式会社 北村製作所 常務取締役 北村 和大 様
株式会社 北村製作所
常務取締役 北村 和大 様

焼き型のデザインには、お客さまのロゴが使われることが多く、焼き菓子のイメージを決める重要な要素になります。そのため、デザインの出来栄えを左右する焼き型は、焼成機全体の価格の半分ほどを占める場合もあります。

このロゴや絵柄が、お菓子の材料の配合によってはうまく出ない場合がありますが、北村製作所様では長年培ってきたノウハウを生かして、お客さまの要望に応じた焼成機を製造しています。

さらに、工場に小さな焼成機を置いて、お客さまから依頼された仕様で試作のお菓子を焼きます。そして、実際に食べて味を確かめながら焼成データを収集し、要望通りになっていることを確認してから、実際の焼成機の製造に入ります。

この焼き型を製作している強みについて、常務取締役の北村和大様は次のように話します。「お菓子の材料に砂糖が入っていると焼き上がりの熱い間は成形しやすく、反対に砂糖が入っていないと火の抜けが悪く、焼き上がりから硬くなるため成形が難しくなります。また、生地は水種で、それを焼き型に入れて焼くので、型によって蒸気の抜け具合が変わってきます。うまく蒸気を抜きながら成形することは大変難しく、そこにも型を内製化している当社のノウハウと経験の蓄積が生きています。簡単には他の焼成機メーカーがまねすることはできません」。

焼き型の製作用に
CADシステムを早期に導入

株式会社 北村製作所 工作部リーダー 佐藤 等 様
株式会社 北村製作所
工作部リーダー 佐藤 等 様

せんべいやクッキーは熱をかけて焼くので、型には耐久性が求められ、鋳物が適しています。以前は粘土でひな形を作り、鋳物屋で石こうを流して鋳型を作って、鋳型に溶けた真ちゅうを流し込んで焼き型を量産していました。ところが、ほとんどの鋳物屋が廃業になり、焼き型を作ることが難しくなったことから、北村製作所様では、1988年にいち早くCADシステムの導入に踏み切りました。その後、1996年にNDESのCAD/CAMシステム「GRADE」を導入して、本格的に焼き型の彫刻を工作機で開始しています。

北村製作所様がCAD/CAMシステムで目指したものは、どうすれば焼き型に文字をうまく彫刻できるか、ということでした。

その当時のCAD/CAMシステムの導入について、工作部リーダーの佐藤等様はこう振り返ります。「従来は職人が手で彫っていた部分を、工作機で彫るためにCAD/CAMシステムを導入しました。その際、絶対に外せなかったのが、2次元の文字や葉っぱなどの絵を筆で書いたようなラインで深さを持たせて3次元的に彫刻をすることでした。そのことを我々は、切り上げと呼んでいます。工作機でも、この切り上げをいかに自然な感じで彫刻するか、これにこだわっていました。さらに、せんべいは真っ直ぐなプレートに字を彫って焼くのではなくて、伸び代といって球面に字を彫り、なおかつそれを切り上げることが重要になります。GRADEでは、NDESが開発したカスタマイズコマンドのおかげで、簡単な操作で球面を作成し、それに文字を投影させて、切り上げの彫刻ができるようになりました」。

焼成機の製作にSpace-Eをフル活用

2001年にGRADEから「Space-E」にリプレースし、Space-Eの標準コマンドだけで切り上げを自由に描けるようになりました。まず、球体の面を作り、そこに文字を描いて、その文字を部分的にカットします。そして、等分割した位置にポイントを作り、最適な高さに持ち上げることで、せんべいに文字を作成できます。

このような文字作成の操作が、北村製作所様のノウハウになっていると北村修二様は胸を張ります。「焼き型の中で、一番特徴があるのが南部せんべいです。文字を彫るのも焼くのも難しいせんべいで、文字を球体に沿って彫るのは、生地が伸びないからです。さらに均等に焼けるように真ん中の厚みを若干薄くしています。また、せんべいの一つひとつの焼き上がりが異なるので、上型を個々に設けて蒸気が抜けるように工夫することで、均一に型から抜けるようにしています」。

また、焼き型以外にも機械部品の製作でSpace-Eを利用します。受注生産のため、駆動部品も焼成機によって一つひとつ違うため、Space-Eによる設計が欠かせません。

「Space-Eをフル活用することで、焼き型も部品も苦労せずに設計できるようになりました。その上、設計時間が短くなり、効率的に仕事ができるので本当に満足しています。以前は、冷房の効いた涼しいCAD室で設計のため長い時間座っていることができましたが、今では、すぐに暑い作業現場に戻らないといけないと、冗談を言っているくらいです」(佐藤様)。

Space-Eで設計した焼き型の画面と実際の焼き型、そのせんべいの写真
Space-Eで設計した焼き型の画面と実際の焼き型、そのせんべいの写真

100分台の精度にこだわる焼き型とは

工場内の立形マシニングセンター
工場内の立形マシニングセンター
工場内の立形マシニングセンター

お客さまのさまざまな要望が、北村製作所様の焼き型のこだわりにつながっています。

「一般的にものを食べるときの意識は、食べておいしいかどうかが圧倒的に多く、食べ物の絵柄を注意深く見ながら食べる人は少ない、ということを我々は常々笑い話にしています。しかし、我々が目指しているのは、柄がきれいに抜けやすくなるような彫り方であり、焼き型の精度には0.1ミリを追求しています。さらに高精度を求めるお菓子もあり、彫った後にクリアランスを100分台で微調整して、お菓子の切り口や縦バリといった薄皮の出方にもこだわりを持った焼き型もあります。当然のことながら、エンドミルを何回も走らせて仕上げの品質を向上させることもあります」と、そのこだわりについて、佐藤様は熱く語ります。

今後の方向性と取り組む課題について

工場内の立形マシニングセンター
もなかの皮

お客さまからの要望の中には、実現が難しいものもありましたが、北村製作所様では焼き型を自社で設計、製造している強みを生かして、要望に応えてきました。

最近の取り組みとしては、もなかです。表と裏に文字があるもなかは、単純にオフセットでは形状を求めることが難しく、文字の厚みの部分を計算して形状を作成します。また、もなかには図面化が難しい自然な形が多く使われます。このような課題に対して、新たな手法を見つけ、効率化を図ることになります。

今後の取り組みについて北村和大様は、「これからも、お客さまの要望を実現する焼成機を設計、提供していきます。それには、技術的にもSpace-Eを120%使いこなすようなノウハウを蓄積して、お客さまの要望に100%対応していきたいと考えています。この焼き型は奥が深く、文字の深さから逃げの角度、焼き加減の関係まで知識と経験がないとうまく作ることができません。今後も試行錯誤を繰り返しながら、難しい焼き型に挑戦していきます」と意欲を語ります。

北村製作所様の今後の取り組みに、私たちNDESは、さまざまなソリューションのご提案とサポートを通じて、お役に立てれば幸いです。

会社プロフィール

小阪工場
小阪工場

株式会社 北村製作所

URL http://www.kitamura-fcm.co.jp/(株式会社キタムラ)(外部サイトへ移動します)

本社 大阪市天王寺区東高津町12-14
創業 1923年4月
資本金 1000万円
業種 自動製菓食品機械の製造
工場 八尾工場:八尾市美園町2丁目32-2
小阪工場:東大阪市小阪2丁目10-27

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