日本のものづくりを応援
富士山を間近に望む静岡県富士市にある駿河エンジニアリング様は、樹脂成形のあらゆる種類の金型において最新の技術力を備えています。さらに、提案した新技術にお客さまと一緒に取り組むことで、日本のものづくりを支え続けています。近年は、炭素繊維のシート材と射出樹脂の一体成形を行うハイブリッド成形用金型に注力するなど、お客さまのハイレベルな要求に応えています。こうした樹脂成形用金型の開発・設計を支えるツールとして、「Space-E」を活用しています。
グループの強みを生かして
お客さまの要望に対応する
マルスン駿河グループは、静岡県富士市を中心に事業展開する日本を代表する総合金型メーカーです。自動車ボディなど大物板金プレス金型を製作するマルスン株式会社様、超ハイテンなど特殊な板金プレス金型や熱成形用金型などを製作する駿河ダイテック株式会社様、各種機械加工を行う駿河マシンサービス株式会社様、そして、グループ内で唯一の樹脂関連金型を製作する株式会社駿河エンジニアリング様がマルスン駿河グループです。
今回訪問させていただいた駿河エンジニアリング様は、樹脂金型専門工場として1966年9月に設立され、各種金型や関連治工具などを設計・製作しています。
駿河エンジニアリング様の特長の一つに、マルスン駿河グループの総合力を生かせることが挙げられます。例えば自動車部品では、燃費や環境対策などの観点から部品の軽量化が進んでいます。こうしたトレンドへの対応について、開発技術グループ 課長代理の大芝一也様は次のように話します。「マルスン駿河グループでは板金プレス金型と樹脂成形用金型の両方の製作技術とノウハウがあります。お客さまへさまざまな選択肢をご提案できることも当社の強みです。また、グループ各社であふれた加工を駿河マシンサービスで補うなど、グループの総合力で対応しています」。
100台以上のNC工作機械をグループで保有し、自動車が1台分測定できる3次元測定機の設備なども共用するなど、グループのメリットを最大限生かしています。
社員としては、働きやすさが一番の売りだと設計技術グループ 課長代理の古屋英一様は胸を張ります。「富士市は、交通の便が良く温暖で一年中過ごしやすい場所です。一番のぜいたくは会社から間近に富士山が見えることです。朝、出勤して美しい富士山を見るとすがすがしく仕事を始められます。また休日には、箱根や伊豆にも気軽に出かけられます。富士市を中心に事業展開している当社は、転勤の心配がないこともあり地元出身の社員がほとんどです。社員の平均年齢は38歳と若く、働きやすい環境ですので、これからの企業発展に力を発揮できます」。
インジェクションからハイブリッドまで
多種多様な金型に取り組む
駿河エンジニアリング様の強みは、多種多様な樹脂成形用金型に取り組んでいることです。自動車部品や家電部品など広範囲に使用されている射出成形用金型をはじめ、プレス圧縮成形のSMC金型やSPM金型、CFRP(熱硬化性樹脂)、CFRTP(熱可塑性樹脂)などのヒート&クール金型やアルミ金型にも対応しています。
これらの金型は自動車部品のほか、鉄道(新幹線の窓枠、座席のテーブル)、航空機(SMC・炭素繊維の各種部品)、住宅建材(フレーム・外装パネル)、土木(雨水の地下貯留部材、マンホールの蓋)などさまざまな分野で利用されています。
「SPM成形では、自動車室内ドアの表皮同時成形が可能です。室内ドアの表面に用いるシートの表皮を金型の上に置き、その裏から熱可塑性樹脂を射出して成形します。低圧なのでシートを傷めずに成形でき、SPM成形の特長を生かせます。以前は表皮とインジェクション成形したドアを後工程で張り合わせていましたが、同時成形により、その手間も不要です」(古屋様)
「近年、力を入れているのはハイブリッド成形用金型です。強度のある炭素繊維やガラス繊維のシート材と各種繊維を混合した熱可塑性樹脂を同時に成形します。この複合材成形品は、鉄に比べてコストは上がるものの、同時成形による工程削減によりトータルコストを下げることができます。将来的に電気自動車が伸びていくと、軽量化による燃費向上で高い環境性能が求められます。そうすると鉄の部品は樹脂ヘの置き換えがさらに加速し、当社が得意とするハイブリッド成形用金型でご要望にお応えできます」(大芝様)
駿河エンジニアリング様は、樹脂成形用金型の設計・製造をするだけでなく、その金型で製品を成形して試作ができる設備や付帯設備も多数そろえています。「850t、1600t、3500tの射出成形機や、1000t、1500tのSMC/SPM成形機を保有しているので、お客さまと一緒に試作検討しながら最適な金型を提案しています」(大芝様)。
金型の提案から設計まで
Space-Eをフルに活用
駿河エンジニアリング様はNC加工にもいち早く取り組んできた歴史があります。初めてNC工作機械を導入したのは1976年のことです。そして、1986年に3次元CAD/CAMシステム「GRADE」を導入しています。現在、NTTデータエンジニアリングシステムズの3次元CAD/CAMシステム「Space-E」シリーズのうち、「Space-E/Modeler」「Space-E/Mold」「Space-E/Draw」を30セット以上導入しています。最初の「GRADE」を含めると30年以上、活用していることになります。このSpace-Eは、部署ごとに必要なパッケージを組み合わせて配置していますが、特殊な案件については部署にこだわらず、チームで対応することもあり、全員が複数のシステムを有効利用しています。
Space-Eについて、古屋様は次のように話します。「Space-Eは当社の基幹CADシステムとして、金型の提案から設計までフルに活用しています。金型設計の途中では2次元または2次元半で検討することもありますが、最終的には3次元データにしてCAMで加工データを作成しています。Space-Eは、金型設計・製作のさまざまな取り組みの過程で使い込んできたシステムですから、どんな使い方でも柔軟に対応できていて、設計をする上で非常に使いやすい良きツールとなっています」。
また、営業担当者がお客さま先で打ち合わせする場合は、3次元コミュニケーションツール「Darwin Vue」を活用しています。「高性能のノートパソコンでも、容量が数百メガバイトにも及ぶ膨大なアイテム数の金型モデルを操作することは難しいため、Darwin Vueを利用しています。軽いビューワデータを表示できるので、お客さまとの打ち合わせがスムーズに行えます」と大芝様は活用法の一端を話します。
その他にも「Darwin Vue」は、営業担当者が見積もりを作成するときに、アンダーカットなどの製品検討まで行うので、お客さまの3次元形状の細かい部分まで確認したりと、便利に活用しています。
材料メーカーや大学と連携し
次世代の技術を研究
年々、技術の進化とともに自動車や航空機などの部品で使われる材料も変わってきています。駿河エンジニアリング様は、常に新しい技術・材料の話題があれば、その研究会の会員となり、情報収集はもとよりその会合で知り合った企業様とタッグを組んで実用化を目指しています。
「当社は、最先端の技術、材料に対して積極的に取り組みたいと考えています。先ほどご説明した炭素繊維は、比較的早くから材料メーカー様と一緒に取り組み実用化を進めてきました。その成果を当社だけでなく材料メーカー様からも提案していただけるので、採用の幅は広がっています。これからも、異業種メーカー様とのコラボレーションを大切にしたいと考えています」(大芝様)。
さらに新素材として注目されているセルロースナノファイバーの実用化に向けた産学官の取り組みが始まっています。これは、日本の自然資源である木を生かした新素材の研究・開発です。静岡県富士市は製紙関連企業が多い地域でもあり、駿河エンジニアリング様もセルロースナノファイバーに着目し、取り組みを始めています。
今後の金型設計における
CAEの取り組みについて
さまざまな種類の樹脂成形用金型を手掛ける駿河エンジニアリング様におけるCAEの取り組みを古屋様は次のように語ります。「最先端の多種多様な金型をCAEで解析して設計に反映させるためには、高額な投資と高度な専門知識、そしてノウハウの蓄積が必要になります。しかし、今後は金型の構造解析、冷却解析ができる環境は必要だと感じています。その他にも、炭素繊維で新しい部品の金型設計で難しいところが繊維の配向です。現在、繊維配向のCAEはありますが、満足できる結果ではありませんので今後に期待しています」。
NDESでは、今後とも駿河エンジニアリング様のビジネスに貢献するソリューションをご提案いたします。
会社プロフィール
(テクニカルセンター屋上から撮影)
株式会社駿河エンジニアリング
(マルスン駿河グループ)
URL http://www.marusun-g.co.jp/(外部サイトへ移動します)
本社 | 静岡県富士市今泉花の木652-1 |
---|---|
設立 | 1966年9月 |
資本金 | 6914万6700円 |
従業員 | 100人 |
売上高 | 約23億円(2016年実績) |
事業内容 | インジェクション金型、SMC金型、BMC金型、SPM金型、ハイブリッド金型、ヒート&クール金型、アルミ金型、RIM金型、RTM金型、LFT-D |
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